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薬局のインボイス制度を考えた①

 

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2023年10月1日よりインボイス制度が始まりました。

 

薬局界隈では、医薬品の流通困難が続いている中、他薬局からの小分け譲渡に対して、相手先が「インボイス事業者」かどうかを気にするとか、しないとか、、という話題が持ち上がっているようです。

 

という訳で、薬局のインボイス制度について考えてみようと思います。

 

仕入税額控除

消費税は「最終消費者」が納める税金なんですが、誰が「最終」になるかは途中の段階では確定できないので、生産、加工、流通、販売、などの各時点で消費税を払うことになっています。

そして、各段階の事業者は顧客から「預かった」消費税を確定申告をして国に納税することになります。(払った人と納める人が違うので間接税と言います)

ただし、各段階の事業者もそれぞれが仕入れなどの際に消費税を支払っていますので、国に納める消費税は「預かった消費税」から「仕入れなどで支払った消費税」を差し引いた額を納めることになります。

これを仕入税額控除といいます。

 

免税事業者と課税事業者

一方で、これまで預かった消費税の納税を免除される制度がありました。

年間の課税売上げが1,000万円以下の個人事業者、法人などは原則として預かった消費税を納めることを免除されていました。

これは恐らく1989年の3%の消費税導入時に、個人商店などの事業者らの負担を考慮し、1000万円以下(月商83万円以下)なら消費税はもらっても、もらわなくても、国には納めなくていいですよ、ということで始まったように思います。

しかし、30年もその制度がそのままにされた結果、消費者が「税」として払ったお金がその事業者の懐に収まっている「益税」という問題がありました。その益税をなくそう、というのがインボイス制度の目的のようです。

 

免税事業者以外は課税事業者として消費税の納税義務を負っています。

前述の通り、顧客(消費者)から預かった消費税から、仕入れなどの関わって支払った消費税を差し引いて、納税する必要があります。

 

課税事業者とインボイス(適格請求書)

インボイス(適格請求書)とは、課税事業者が仕入れに関わって支払った消費税を仕入税額控除で差し引く際の根拠を明確にするために、仕入れ元が取引先に発行する税率などを明記した請求書のことです。

そして、このインボイス(適格請求書)を発行することができるのは、インボイス発行事業者になりたいですと税務署に申請した「課税事業者」のみです。

そうです、課税売上げ1,000万円以下の免税事業者のままではインボイスは発行できないことになります。免税事業者がインボイスを発行できるようになるには、課税事業者への転換が必要になり、その場合は預かった消費税を納税する義務を負うことになるのです。

 

あなたの薬局は免税事業者?

さて、薬局の話に戻りましょう。

SNSなどでは、10月1日以降はインボイス事業者の薬局からしか、小分けを頼まないようにと本部からお達しがあったという話題がありますが、インボイスを必要とするのは課税事業者のみです。あなたの薬局が免税事業者ならそもそも納税しないのでインボイスの受け取りは不必要です。

法人の課税売上げ(税抜き)が年間1,000万円以下、月間だと約83万円以下なら免税事業者です。仮に10店舗の薬局だとして、1店舗当たりの課税売上げが月8.3万円以下、25日営業として1日当たり3,320円以下なら免税事業者ということです。

 

薬局の非課税売上

薬局の売り上げの大半は保険調剤に基づくもので、非課税取引です。

医療保険や公費負担医療に係る調剤、自賠責、労災に係る調剤、保険証忘れなどによる見かけの自費調剤も(最終的に医療保険で還付されるため)非課税です。

また、一部の介護福祉用品は非課税の商品もあります。

 

非課税売上で仕入税額控除はできる?

私たち薬局は主に保険調剤に供する目的で日々医薬品卸から医薬品を購入しています。

当然仕入れの際には卸に消費税を支払っています。しかし、患者からは消費税を受け取らないため、それを納める際の仕入税額控除もできない仕組みになっています。

ただし、仕入税額控除を個別対応方式とした場合には課税売上割合に応じて控除することができます。

pharmalabo.hatenablog.com

薬局の課税売上と課税売上げ割合

OTCや食品、医療機器などの販売はもちろん、AGA治療薬、ED治療薬、低用量ピルなど薬価収載されていない医薬品の調剤や、薬剤の紛失に伴う処方箋再交付や再調剤、などは課税取引に該当しますし、他薬局や医療機関への医薬品の小分け販売や、自賠責に係る明細書の文書料なども課税取引ですね。

これらの取引の相手先が問題なんです。

調剤など個人消費者が相手なら、その人がインボイスを使って仕入税額控除をする必要はありません。

血圧計を販売し近所の事業所宛てで領収書を発行するとか、保険会社に自賠責の明細書文書料を請求する場合などはインボイスを要求されることはあります。

自社がこれまで免税事業者だった場合は、インボイス発行事業者に転換するか、免税事業者のままで、売上(取引)減を覚悟するか、値下げをして売上げ(取引)維持を図るか、という選択をする必要があります。

 

一方、医薬品の小分け販売の際にも消費税を請求しますが、小分けしてもらった薬局(A)はこれを仕入税額控除するとしても、その金額はA薬局の課税売上げ割合を乗じた分だけとなります。

つまり、A薬局の課税売上げ割合が5%の場合に、5000円+500円(税)の医薬品小分け購入があった場合に控除される金額は、500円x5%=25円となります。

この場合、小分けをお願いされた薬局がインボイス発行事業者でなければ、A薬局が25円を負担することになります。(今すぐ欲しいという時に25円が高いかどうか??)

 

また、課税売上げ割合5%というのは、課税売上50万円、非課税売上950万円という割合です。課税売上げがもっと少ない、あるいは非課税売上げがもっと多ければ課税売上げ割合はもっと低くなります。

 

自分の薬局が課税事業者だとしても、課税売上げ割合がどの程度なのかが重要なことが分かっていただけましたか?

小分けの際に支払った消費税 x 課税売上げ割合 = 仕入税額控除できる金額

ということを踏まえた上で、小分けをお願いする薬局をインボイス発行事業者に限定するかどうかを検討する必要があるでしょう。

※現場であーでもないこーでもない、とやることを想定するとその時間の人件費も考慮する必要があります。

 

次回の記事では今回の内容をフローチャートとかでまとめてみます。