調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo

調剤薬局業務をExcelで効率化しよう

居宅療養管理指導における「単一建物居住者」 処方元が複数の医療機関の場合…

 

sponsored Link

グループ店舗の薬局長の間で話題になったことを、書いてみますね。

 

在宅業務に積極的な当社は各店舗がそれぞれ個人在宅はもちろん、介護施設居住者の調剤を担当させてもらっています。

 

会社から売上げを上げろ、単価を上げろ、GEの率は下げるな、と言われたある薬局長がGE率を下げずに単価を上げる方法として目を付けたのが、単一建物居住者の解釈の見直しでした。

 

介護報酬では、同じ建物に居住する患者に対して居宅療養管理指導を実施した場合の報酬については、その人数に応じて減算する規定となっていました。

平成30年の改定から居宅療養管理指導の算定要件が変更となり、「同一建物居住者」という概念から「単一建物居住者」という概念に基づいて当該指導費を算定することとなりました。

つまり、同じ日に指導を行った同じ建物に居住する患者の人数、から、同じ月に指導を行った同じ建物に居住する患者の人数で算定する点数を判定することになっています。

現在は、
単一建物居住者が1人⇒507単位
単一建物居住者が2~9人⇒376単位
単一建物居住者が10人以上⇒344単位 となっています。

 

その薬局長は知り合いなどから、とある県では単一建物居住者を「処方元医療機関ごとに数える」ことになっているという情報を得たようです。

 

例えば、同じ施設に居住する12人の患者に対して、月2回居宅療養管理指導を実施していて、処方元の医療機関は3つあるとします。

A医療機関の患者は1人、B医療機関の患者は6人、C医療機関の患者は5人とすると、この数え方を変更することでどれだけ算定点数に差が出るでしょうか。

 

現行 12人 x 344単位 x 各2回 = 8,256単位

解釈を変更すると、

 ( 1人 x 507単位(A) + 6人 x 376単位(B) + 5人 x 376単位(C) )x 各2回

 =  1,014単位+4,512単位+3,760単位 = 9,286単位

差は1,030単位(=10,300円)です。解釈の変更だけで毎月1万の増収となります。

 

もしこの解釈が問題ないとしたら、いいところに目を付けた!となりますが、果たして本当にいいのでしょうか。

 

厚生局に聞いてみる?

薬局長は自分の役割を果たそうと、知り得た情報を会社にぶつけて可否の判断を仰ぎました。それに対して会社は、確かにそういう県があるようだ、という回答を薬局長会議で披露しただけでした。

ご存知の通り、算定要件の解釈・運用については都道府県ごとに違いがあり、他の県ではそれでいいらしいので本県でもOK、は通用しないことも多々あります。

会社の担当者に、本県での解釈・運用はどうなっているのかを確認すべきと進言したところ、オフィシャルには確認できず、市薬剤師会理事、国保審査担当者の私的な見解としての回答を得たということでした。

 

【回答要旨】

とある県での事例は、指導担当者の解釈の違いによるグレーゾーンではないか

 

他県の指導担当者を安易に否定するわけにはいかない、という内情がビンビン伝わる内容ですね。

さらに、市薬剤師会理事においては、現時点では行政(厚生局や市役所介護課など)への問い合わせは見合わせてほしい(するな)というおまけ付きでの回答だったようです。

 

どの部分の解釈が???

ここまで、解釈の変更だの、解釈の違い、などと続けてきましたが、いったいどの通知のどの部分をどのように解釈しているのか、気になりますよね。

厚生労働省の改定説明文書のうち下記の部分の話のようです。

f:id:ashomopapa:20190327182805p:plain

上図で「医師が行う場合」を引き合いに、医師(医療機関)ごとに単一建物居住者数をカウントする、という解釈する指導担当者がいるようなのです。

 

そんな、アホな⁉

そんなアホな…と思ったあなたはいたって常識人です。

介護報酬改定のQ&Aその1の問4②で

② 同じマンションに、同一月に同じ居宅療養管理指導事業所の別の医師がそれぞれ別の利用者に居宅療養管理指導を行った場合

(答)いずれの利用者に対しても「単一建物居住」複数人に対して行う場合の宅療養管理指導を算定する。

となっています。

医師が行う場合に、同じ居宅療養管理事業所(=同一医療機関)の別の医師がそれぞれ別の患者に対して実施したとしても人数のカウントは合算することになっています。

薬局薬剤師が居宅療養管理指導を実施する場合ににおいて、医師の所属によってカウントを分けていいとするには無理があり過ぎます。

 

算定したもん勝ち(やったもん勝ち)の現実

今回の件に関わらず、調剤報酬や介護報酬に関しては、ある一定のルールはあるものの、そこから逸脱した場合に矯正する手段は、レセプト審査と個別指導しかないのが現実です。

レセプト審査で対応できるのは、レセプト(診療報酬請求明細書)に記載された情報だけで判定できる内容に限定されますし、個別指導は開局1年経過時の新規個別指導が終われば、二度と指導に当たらないことだってあります。

つまり、明らかに不可とされていない解釈に基づいて算定していたとしても、咎められたり、矯正してもらったりする機会はなく、不適正な算定を続けているということは十分にあり得ることです。

 

行政当局は十分認識しているでしょうが、手が足りないというのが正直なところ。本来なら薬剤師会などがその代替として機能すべきなのでしょうが、体たらく。

 

「これはちょっとやりすぎかも」ということでも、だいたいはやったもん勝ちになってしまうのが現在の制度なのです。

 

だからこそ、私たち医療者は自ら襟を正すことを常に肝に銘じておきたいものですね。