3月14日の社会保障審議会医療保険部会で、後発医薬品の使用についての目標を従来の目標に加えて、副次的に「金額シェアで65%以上」とすることで合意した、というニュースが各ニュースサイトで報じられています。
いくつかのサイトをチェックしたところ、m3.comの記事が一番的確なようでした。
後発医薬品「金額シェアで65%以上」も新たな目標に | m3.com
現場の人間としては、『自分の店が金額ベースだと今何%なのか?』ということではないでしょうか???
更には、2029年度末に65%なら、当面の目標はどうなる?ということでしょう。
記事ではジェネリックの新たな目標設定について以下のようにまとめてくれています。
主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上(継続)
副次目標(1):2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上
副次目標(2):後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上
現行の「数量目標」は維持
まず押さえておきたいのが、数量シェアから金額シェアへの切り替えではないということでしょう。これまでの議論では、「切り替え」が前提になっていたようですが昨今の医薬品流通問題の解消が見通せない中では軟着陸せざるを得なかったのでしょう。
副次目標(1)は処方側の課題
現行のジェネリックの変更調剤のルールでは、バイオシミラーは対象外のため、薬局ではどうしようもないです。
処方そのものをバイオシミラーで処方してもらう必要があるためです。
副次目標(2)が本丸
2023年の厚労省の調査で金額シェアは56.7%となっており、2017年の40%から6年間で16.7ポイント上昇しています。次の6年間で65%まで上げることを目標に据えたわけです。
一方、数量シェアの上昇に関して言えば、17年の65.8%から23年の80.2%まで6年間で14.4ポイントの上昇です。
金額シェアの上昇は、概ね数量シェアの上昇に相関しているようですが、数量シェアの上昇は80%を超えてほぼ頭打ちとなってきているため、これまでのペースでは自然増とはいかなそうです。
つまり、薬局では2026年5月までは「数量シェア」の目標を負いつつ、2026年6月の診療報酬改定に向けて、「金額シェア」の目標設定を予測し、数字を追うことが必要になります。
となると、自分の薬局が金額シェアでは何%なのかを把握することが第1歩となりますが、まず算出方法を知る必要があります。
記事では
金額シェアの計算式は
後発医薬品の金額(薬価ベース)/「後発医薬品の金額(薬価ベース)+後発医薬品のある先発品の金額(薬価ベース)」
となっています。大事なのは「薬価ベース」となっていること。これが薬剤料ベースとなっていたら、相当面倒な計算をしないと算出できません。薬価ベースということは「薬価x数量」ということで良さそうなので、これならシュミレーションも簡単にできます。
品目については数量シェアの算出と同様に、
後発医薬品(先発医薬品と同額以上のものを除く)と
後発医薬品のある先発医薬品(後発医薬品と同額以下のものを除く)
でよさそうなので、先日このブログで紹介した新薬価リストを活用すれば算出できます。
金額シェアを算出する方法
ここからはExcelの話です。先日公開したリストを活用して、金額シェアを算出する方法を紹介していきましょう。
各薬局で使用している在庫管理システムまたは、レセコンから
- YJコード
- レセプト電算コード
のいずれかと、「処方数量」が含まれるデータを抽出します。「薬価」もあればbetter。
コード類は後発医薬品情報を紐付けるためのキーになるのでユニーク(1:1で対応できるという意味)なものがいいのですが、システム上抽出されない場合は
- 薬価基準収載医薬品コード
- レセプト医薬品名称
- 告示名称
で代替します。ただし正確性に欠ける可能性があることを理解しておきましょう。
また、薬価ベースの「処方金額」が含まれていれば計算の手間が一つ省けます。
処方数量が分かるデータを抽出して、新薬価リストとの紐付け方法が分からない場合はコメント欄にてご相談ください。
実際にやってみる。
抽出したデータに「YJコード」、「処方数量」があるとして、新薬価リストからYJコードをキーにして算出に必要な項目を紐付けていきます。
1)必要なデータ、ファイルを準備する
当ブログから『新薬価リスト』をダウンロードしてファイル(ブック)を開き、シートを追加しシート名を「YJ数量」としておく。
抽出したデータから「YJコード」「処方数量」の列を「YJ数量」シートのA:B列にコピペしておく。
2)必要な列を追加する
「YJコード」「処方数量」の隣に、「医薬品名」「薬価」「後発医薬品情報」「薬価金額」の項目を入力し列を増やす。表示タブからウインドウ枠の固定>先頭行の固定をしておくと作業が楽になります。
3)YJコードをキーにして各項目を紐付ける関数を入力
紐付けに利用する関数はVLOOKUP関数です。
C2セル:「=VLOOKUP(A2,'202404'!$C:$L,3,0)」
D2セル:「=VLOOKUP(A2,'202404'!$C:$L,5,0)」(新薬価を紐付けます)
E2セル:「=VLOOKUP(A2,'202404'!$C:$L,10,0)」
F2セル:「=B2*D2」
C2:F2セルを選択し、フィルハンドルをダブルクリックする。ざっとスクロールして関数が正しく反映されているのを確認したら、C:F列をコピー>値の貼付けをする。
4)新しいシートなどで金額シェアを算出する
シートを追加して、下図のような表を作成します。
B2セル:「=SUMIFS(YJ数量!B:B,YJ数量!E:E,3)」
B3セル:「=SUMIFS(YJ数量!B:B,YJ数量!E:E,2)」
B4セル:「=B2/(B2+B3)」
C2セル:「=SUMIFS(YJ数量!F:F,YJ数量!E:E,3)」
C3セル:「=SUMIFS(YJ数量!F:F,YJ数量!E:E,2)」
C4セル:「=C2/(C2+C3)」
という式を入力すればC4セルで数量シェアのGE調剤率が算出できます。
(ホームタブ>「数値」のリボンから適宜書式の設定をしてください。)
金額シェアを高めるためにはどうすればいい?
数値が判明すれば、データを利用して効率的な対策を行いましょう。
先ほどの「YJ数量」シートに戻り、
- オートフィルタを設定し
- 「金額」列を降順に並べ替えし
- 「後発品情報」を「2」でフィルタする
ことで、後発品のある先発品の調剤で金額が多いもの順にリスト化できます。
今回のサンプルデータは総合病院門前タイプの2年ほど前のものなので上図のような結果です。ヒュミラ皮下注が150万円占めていますが、これは薬局では変更できないためそれ以外のものを変更していくことになりますね。
金額シェアの目標はどうなるの?
2024年の診療報酬改定では、後発医薬品調剤(使用)体制加算の割合についての変更がありませんでした。支払い側としては大変不満足だったことでしょう。
仮に今後2年間で、後発医薬品を中心とした流通不安が解消に向かい、数量シェアが全都道府県で80%以上を達成している場合、2026年の改定で要件変更となり、
数量シェアで80%以上かつ、金額シェアが
- 60%以上65%未満
- 65%以上70%未満
- 70%以上
の3段階くらいになるような気がします。(予言!)
2024年10月からは長期収載品の選定療養費制度が始まり、制度的に後発品使用の後押しがある中で、支払い側からするといつまでも算定要件が甘いままという訳にもいかないでしょうし、これくらいの想定はしておいた方がいいでしょう。
てっとりばやく金額シェアを算出するためのファイルが欲しい、という方はこちらからご購入いただけます。
『YJ数量』シートに在庫管理システムやレセコンから抽出した「YJコード」「処方数量」を貼り付けて、数式をコピーすれば『算出』シートに金額シェアが自動で計算されます。
Excelの処理に自信がない方は是非ご購入下さい。