前回は消費増税と薬価改定について述べました。
今回は薬局の在庫について考えてみましょう。
通常の4月1日実施の薬価引下げ改定なら、改定前になるべく在庫を使い切るようにすべきです。
また、薬価改定なしで消費増税だけを考えた場合は、一般消費者と同様増税前にまとめ買いが必要です。
それでは、薬価改定(引下げ)と消費増税が同時ならどうなるでしょう。
薬価=X、9月末の在庫数=Y、9月までの仕入れ率(原価率)=Ra、10月以降の仕入れ率(原価率)=Rb、薬価改定率=Aとします。
9月末の在庫を10月以降に調剤した場合の薬価差益:
X x Y x A - X × Y x Ra x 1.08 …①
10月以降に数量Yを仕入れて調剤した場合の薬価差益:
X xY x A - X x A × Y x Rb x 1.10 …②
と表されます。
式① ≦ 式② となるように整理すると、
薬価引き下げ率でまとめると、
この式から、増税前後で仕入率(Ra,Rb)が同じなら改定率Aは、
A ≦ 1.08÷1.1 = 0.9818
つまり、仕入率が変わらない場合、改定率が98.18%以下=1.82%以上の薬価引下げがあれば、増税後に仕入れる式②の方が薬価差益が大きい、ということが分かります。
通常、仕入れ率は改定後に契約交渉が始まるので9月の段階では分かりません。
なので、増税前後で仕入率が変わらない、と仮定して行動するのが賢明でしょう。
結論:2019年9月末の薬価引下げが1.82%以上の薬品は、9月に在庫を絞るべき(逆に1.82%未満または薬価引上げの場合は9月に買い溜めすべき)
単品ごと正確に判定するには、薬価改定率A と改定前仕入率Ra 、改定後仕入率Rb を上式に代入し、式が成り立てば9月は在庫を控える、式が成り立たなければ9月に買い溜めするということになります。
今までは、ほとんどの医療機関、薬局で「加重平均」などと呼ばれる契約によって、個々の品目の価格(仕入れ値)は一応あるけれど、きちんと計算するのも面倒だから、最終的に仕入れ総薬価に対して仕入率を乗じて卸への支払額を決められるように、適宜値下げ伝票などを起伝して対処しましょう。となっていました。
しかし、2018年の診療報酬改定から「単品単価契約」について制度に組み込まれました。つまりこれからは、単品の価格交渉に基づく仕入れになってくるでしょう。
つまり、今までのようなざっくりとした仕入れ交渉しかできないと、知らない間に大損することになる可能性があります。(これが本来の価格交渉なんですよね~)
そして、交渉を有利に進めるには、データの分析が必須です。もちろんそのデータ分析もExcel テクニックがあれば余裕です。
まだ10か月先の話ですが、心の準備をしていた方がいいでしょう。