3月の新薬価告示からの在庫削減、4月の診療報酬改定対策と同時進行で新型コロナウイルス対応に追われて、なかなか大変な日々を過ごされているのではないでしょうか。
私の薬局でも最低限の改定対応をしながら、専らコロナ対策で防護具の調達や、感染防止の手順書を作成したりとなかなか大変でした。
この間に、いわゆる「0410通知」と呼ばれる電話診療及び服薬指導に係る通知が出ています。更に4月30日の補正予算成立を受けて、「薬剤交付支援事業」が開始されました。
今回は、やっと感染防止の手順作成を終えたところですし、ネット上に具体的な薬局の感染防止対策がまだそれほど見当たらないので、私の薬局の感染防止策について少し紹介しようと思います。
店舗の対応
まず、誰もが新型コロナウイルス保有の可能性があることを考慮し、標準予防策(サージカルマスクの着用と手指消毒の徹底)を最低限のお約束とするとともに、下記項目を実施することとしました。。
マスクの着用
就業時間内は、必ずサージカルマスク(フィルター機能付き不織布マスク)を着用
※着脱の際には手指消毒を実施し、マスクによる汚染がないように注意が必要です
※日本環境感染学会のホームページでも医療従事者はサージカルマスクを着用すべき旨の記載があります。サージカルマスクでないマスクでは、その後濃厚接触者(中リスク・高リスク)と判定されてしまいます。
手指消毒の徹底
石鹸での手洗い、もしくは消毒用エタノールでの手指消毒をこまめに実施することとしました。手洗いはそんなにしょっちゅうできないので基本は消エタですね。
具体的な実施タイミングも決めました。
《スタッフ》
- 投薬前後
- 金銭授受時
- レセコン入力後
- 分包作業前
- 他、お薬手帳やOTC等などの物品授受時
- 特に感染性疾患の患者対応後は、必ず実施する。
- 在宅業務ほかで社用車使用時、乗車前、降車時
- 個人宅到着後屋内玄関に入った時、および屋外退出後
- 施設訪問時は施設の方針に従う
- 帰宅時玄関内で靴を脱ぐ前
《患者》
- 薬局入り口に手指消毒用アルコールなどを設置し、使用の呼びかけを表示
※マスクの着脱や手洗い・手指消毒についてはイラストで手順を示し、全員が正しい手順・方法で実施できるようにしました。
清掃
消毒用エタノールや0.05%の次亜塩素酸ナトリウム含有のペーパータオルなどで、不特定多数の者が触る以下のような場所を、定期的に最低でも1日3回以上(できるだけ1時間ごとに)は清拭消毒・水拭きを行う。
- 自動ドアのドアボタン
- 初回アンケート用のクリップボードとボールペン(患者が使用の都度)
- 釣銭皿
- クレジットカード端末
- トイレなどのドアノブ、便座、温水洗浄リモコン、トイレット紙ホルダーなど
- ソファ
- 投薬カウンター、受付カウンター
- 洗面所の蛇口、ハンドソープ周り、ゴミ箱付近など
- 飛沫防止シート
- レジ周辺(タッチパネル、キーボード、クレジット端末、電卓など)
- PC周辺(レセコン、業務用PC、電子薬歴PCなどのマウス、キーボードなど)
- iPad及び周辺機器、店舗携帯電話
- 調剤備品(ホチキス、テープのり、定規、各種スタンプ、裁断台、調剤トレイ・カゴなど)
- 患者向けの血圧計や雑誌・リーフレット、血圧手帳などは片づけて、患者同士が物を共有(一度触ったものを元の場所に戻す)しないように留意する
※機器類の消毒の際には直接スプレーしないように注意しましょう!
※次亜塩素酸ナトリウム使用時はゴム手袋をして換気にも注意すること。また噴霧はしない。金属には使用しない。
※0.05%=500mLのペットボトルの水に、原液(5%の場合)を5mL(ペットボトルキャップ1杯分)を薄める(希釈した消毒液は当日中に使用する)
ペーパータオルに消毒液をスプレーして、そのペーパータオルで清拭するときには、タオルの全面にスプレーしないと意味がないことも現場に周知しておくといいと思います。ニュースなどで飲食店などの店員さんたちがテーブルや椅子を清拭している映像が映るのですが、タオルの中心部にだけスプレーしてタオル全面を使って清拭しても不十分ですよね。。。
換気(密閉回避)
店内(休憩室含む)の開放可能な窓を1回数分程度全開にする。
換気回数は最低でも30分に1回以上実施。
※風が吹き抜けるように複数方向の窓を開けることが有効。ただし、風が強く吹き込む場合は適宜窓を閉める。
※外から投薬カウンター又は調剤室に風が強く吹き込まないように、窓の開放具合を調整する⇒調剤室内はどうしても「密」になってしまうので、換気をしながらも外部から空気が流れ込まないような工夫が必要かと。。
待合室(密集・密接回避)
- 椅子の間隔を1m以上離す。(長椅子などの場合は座る位置を明示する)
- 待合では大きな声での会話を控えるように、掲示をしておく
- 待合室が混雑しそうなら、処方箋をお預かりしたら駐車場の車内で待ってもらう
- その場合は呼び出しのため携帯電話番号を伺う
- 待合室の密集・密接防止対応の周知のため、薬局入り口に掲示を行う
《発熱や呼吸器症状がある患者に対して》
- すぐに薬局の店内に入るのではなく、まず電話連絡をするように掲示しておく
- その他の患者が店内にいなくなったタイミングで薬局から電話をして呼び出す
- 待合での待機場所を指定するなど、その他の患者と一定の距離を保てるように配慮
※患者からの申告がなく、受付の際に初めて熱等患者であることが判明することも想定されるため、当該患者に穏やかに車内待機を促すなど毅然と冷静に対処することも大切ですね。
休憩室など(密集・密接回避)
- 就業中・休憩中を問わず、従業員同士できるだけ離れて密接を避ける
- 休憩室利用時は窓を開け換気を図る
- 可能な限り時間をずらして休憩室を利用する
- 同時に休憩する場合は、対面(正面)の位置ではなく斜めの位置で座る
- POPスタンドとクリアファイルを利用してテーブルの中央にパーテーションを設ける(特に複数人で食事をとる際)
※マスクを外す際にはマスク表面が汚染されているとして、周りが汚染しないように注意して扱い、再着用までの間の保管の仕方に注意が必要ですね。また着脱の際には手指消毒を徹底することを忘れないようにしましょう。
患者服薬指導における対応
来局した患者が、後に新型コロナウイルス感染症患者であることが判明した場合であっても、原則として以下に示す対応を適切に実施できていれば濃厚接触者には該当しないこととされているため、各従業員とその家族の健康を守るためにも、薬局が薬剤供給という社会的使命を果たすため営業を継続するためにも、以下の対応を遵守することとしました。
発熱や呼吸器症状などを呈している感染症が疑われる患者さん(感染症疑い患者)
- 直接応対するスタッフは、標準予防策に加えて、飛沫予防策および接触予防策※を実施すること ※長袖ガウン(なければビニールエプロン+アームカバー)、手袋、フェイスシールド(なければゴーグルまたはメガネ)などの個人防護具を装着する
- 個人防護具を着用中または脱衣時に目・鼻・口の粘膜に触れないように注意し、着脱の前後で手指消毒を実施すること
- 原則駐車場車内での投薬対応として、直接応対するのは薬剤師1名とする(雨天などで1名での対応が困難な場合は、薬剤師または事務スタッフが応対に加わることとする)
- 直接応対する可能性のあるスタッフを予め決めておき、個人防護具の正しい着脱方法についてあらかじめ習熟しておく(社員である薬剤師、事務スタッフを原則とする)
- 対応に携わった薬局の薬剤師等の状況について、職員名、個人防護具の状況、応対時間などを薬歴に記録しておく(後に、濃厚接触者かどうかの判定材料となる)
- 感染症疑い患者であることのみをもって調剤の求めを拒否することはできない
現時点では感染症の疑いがない患者さん(一般患者)
- 標準予防策(サージカルマスクの着用、手指衛生の徹底)を実施する
- 手指消毒をしていない手で目・鼻・口の粘膜に触れないように注意する
《手指消毒の実施タイミング》
- マスク着脱の前後
- 投薬後または金銭授受を終えた後
- レセコン入力、患者手帳確認、保険証確認などの作業後(患者ごとに実施することが望ましい)
あとは、マスクをしていない患者さんにマスク着用を促すか、スタッフ用のマスクを1枚販売する形で提供するなども必要かもしれませんね。
従業員の健康管理及び就労に関する対応
全ての従業員に、体調不良による就業制限の可能性があることを踏まえ、管理薬剤師は、各従業員が主となって担当している業務(施設調剤、個人在宅、往診同行、発注(医薬品・OTCほか)、レセプト処理など)について副担当者を選定し、できる限り速やかに業務内容を共有しておくことが必要です。
朝の検温記録の実施
全職員が出勤前に検温し、店舗の記録用紙に記録する。
従業員に、以下の症状が出た場合の対応
ⅰ.発熱の他比較的軽い風邪様の症状(熱、咳、痰、咽頭痛など)
ⅱ.倦怠感
ⅲ.味覚または嗅覚の異常
ⅳ.その他の症状での不調
(5月に入り受診の目安となる症状が変更されたので、それに合わせました)
出勤について
ⅰ~ⅲの場合:出勤せず、管理薬剤師へ報告し、管理薬剤師より本部へ報告する。
ⅰの状態が4日以上続く場合は必ず、また数日続く場合でも帰国者・接触者相談センターに連絡すること。
ⅱ~ⅲの症状がひどい場合は速やかに帰国者・接触者相談センターに連絡すること
ⅳの場合:管理薬剤師へ報告し、出勤について相談する。管理薬剤師は出勤可否にかかわらず本部長へ報告する。判断が困難な場合は本部長の指示を仰ぐこととしました。
復職時期について
ⅰ~ⅲの場合:解熱剤や対症療法の薬剤を終了して、解熱及びその他症状の消失後、概ね3日(72時間)が経過していること。
ⅳの場合:管理薬剤師は当該従業員から状況を確認し、出勤の可否を検討し、本部長へ報告・了承を得る。また、判断が困難な場合には本部長の指示を仰ぐ。
※PCR検査の対象とならなかった人の復職のタイミングについて目安を定めているような記事は見つかりませんでした。なので、おおよそ3日としてみただけなんです。。。
従業員の同居家族に、上記のⅰ~ⅳの症状が出た場合の対応
当該家族とは家庭内でできる限り密接回避するとともに、接触感染防止にも最大限配慮してください
当該家族を含め、家族全員が手指衛生励行を徹底する(家庭用の消毒用エタノールが十分にない場合は管理薬剤師と相談の上、店舗用の利用を認める)
- 当該家族と他の同居者の部屋を可能な限り分ける
- 当該家族の世話をする人は、できるだけ限られた方(一人が望ましい)にする
- できるだけ全員がマスクを使用する
- 全員が小まめにうがい・手洗いをする
- 日中はできるだけ換気をする。
- ドアの取っ手、ノブなどの共用する部分を消毒する
- 汚れたリネン、衣服を他の同居者とは分けて洗濯する(体液で汚れた衣服、リネンを取り扱う場合は、手袋、マスクを使用し、一般的な家庭用洗剤を使用した洗濯機を使用して、洗濯し完全に乾かします)
- ゴミは密閉して捨てる(鼻をかんだティッシュなどにもウイルスがついています。同居者が触ると感染する可能性があるので、すぐにビニール袋に入れ、室外に出すときは密閉して捨てましょう)
県外移動等する場合の対応
原則、不要不急の外出は厳禁とする。
(従業員)医療従事者の自覚をもって行動する
- 県外へやむを得ず行く場合は、事前に、管理薬剤師を経由して本部長の承認を得ることとする。また三密(密閉・密集・密接)回避に十分配慮するとともに、標準予防策(マスク着用・手指衛生の励行)を徹底の上行動する旨の誓約書を提出する。
なお、県外移動から帰省後出勤可能となる日までを自己都合による休日とみなします。
帰省後は速やかに県外での主な行動履歴と健康状態を管理薬剤師と本部長に報告し、出勤可否の指示を仰ぐ。
管理薬剤師は当事者と本部長と十分に連携し、他の店舗スタッフの不安を払拭するように努める。本部長はこれを支援する。
- 県内で外出する場合は、三密(密閉・密集・密接)回避に注意し行動する。アルコールスプレーを携帯し、手指衛生を徹底する。 ←全スタッフに小さめの携帯スプレーを配布しています
(従業員の同居家族)
県外への出張や県外から家族が帰省してくるなどの場合には、管理薬剤師に事前に報告し、管理薬剤師は本部長へ報告する。
当該家族が特定警戒地域から帰省する場合には、帰省してから14日間は、「Ⅲ、3.従業員の同居家族に上記のⅰ~ⅳの症状が出た場合の対応」に準じて家庭内で行動してください。
各種手順のイラスト
指示が周知徹底されるために、手順などをイラスト化したいと考え、ネットから無料のものを引用して、以下の手順を周知しましたよ。
- 手指消毒の手順
- 手洗いの手順
- マスクの着用手順
- 手袋の脱着手順
- 個人防護具の装着・脱衣の順序
- 「距離を開けてお座りください」POP
- 感染症疑い患者への対応フロー図
いかがでしょうか。皆さんの薬局でも何かしらの対応はされているとは思いますが、スタッフを濃厚接触者にしないためにも、スタッフの安心のためにもしっかり対応していきたいですね。全国の同業者の皆さん、頑張りましょう!!