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薬局長目線でポイント解説①:令和2年度(2020年)診療報酬改定

 

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2月7日(金)に、皆様お待ちかねの診療報酬改定の答申内容が公表されました。

 

1月29日に公表されていた個別改定項目に具体的な数字が加わった形で厚労省のホームページにアップされています。

令和2年度診療報酬改定について

 

その中から薬局に関連すると思われる部分を抜粋し、3回に分けて解説します。

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その①の内容…

 

 

【Ⅰ-4 業務の効率化に資するICTの利活用の推進 】

②情報通信機器を用いたカンファレンス等の推進

概要:情報通信機器を用いたカンファレンス等について、やむを得ない事情により対面で参加できない場合でなくても実施可能となるよう、要件を見直す。また、情報通信機器を用いた退院時共同指導について、医療資源の少ない地域でなくても実施可能となるよう、要件を見直す。

点数: 退院時共同指導料 600点

要件など:

  • 退院時共同指導料1の「注1」及び退院時共同指導料2の「注1」の共同指導は対面で行うことが原則であるが、リアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(以下この区分において「ビデオ通話」という。)が可能な機器を用いて共同指導した場合でも算定可能である。

解説:<薬局薬剤師が退院時カンファレンスに参加するチャンスが増える!>

今回は医科における退院時共同指導料に関する内容ですが、退院時共同指導を行うにあたって、へき地等でなくてもビデオ通話などでの参加が認められることになりました。現状は退院時共同指導には在宅診療を担当する医療機関からは保険医ではなく看護師が参加していることが多いですが、これによって短時間でも在宅担当医が参加することも可能になりそうです。(スマホ好きなドクターほど参加率が上がりそう…)

今のところ調剤報酬の退院時共同指導料についての言及がないのですが、医師が良くて薬剤師はダメ、ということもないでしょう、、、ということでQ&Aなどで薬局薬剤師もビデオ通話での参加OKとなる準備をしておいた方がいいでしょう。

ビデオ通話でOKとなると、外来時間中に1~2時間店を抜けなくても、スマホかタブレットをスタンバイしておいて、共同指導(カンファ)が始まる頃に休憩室とかで対応すれば30分ほどで済みますね。(指導書は後日患家へ郵送などでいいでしょう)

病院の地域連携室とかと予め打ち合わせておくとスムーズにいきそうです。

 

【Ⅱ-1 かかりつけ機能の評価 】

③ 外来患者への重複投薬解消に対する取組の評価

概要:服用薬剤調整支援料について、6種類以上の内服薬が処方されている患者からの求めに基づき、患者が服用中の薬剤について、重複投薬等の状況を含めた一元的把握を行い、処方医に重複投薬の解消に係る提案を行った場合の評価を新設する

点数:(新) 服用薬剤調整支援料2 100点(3月に1回まで)

要件など:

  • 複数の保険医療機関より6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く。)が処方されていたものについて

  • 患者若しくはその家族等の求めに応じて

  • 当該患者の服用中の薬剤について一元的把握を行った結果、重複投薬が確認された場合であって

  • 処方医に対して、当該重複投薬の状況が記載された文書を用いてその解消等に係る提案を行ったとき

  • 3月に1回に限り所定点数を算定

解説:<ポリファーマシー解消に向けて薬局薬剤師の頑張りに期待>

「服用薬剤調整支援料 125点」が前回の改定で新設されましたが、要件がそこそこ厳しく、提案はするもののなかなか減薬に至らず、、といったケースがありました。(私も数件、”肩透かし”がありました)

今回の改定では、いきなり結果だけを求めるのではなく、その過程を評価してあげることで、ポリファーマシー解消のモチベーションを持たせたいということでしょう。

しかも、薬剤の重複投与に限らないことが重複投薬というところから読み取れますね。どんなケースがあるのか、3月の厚労省の説明会が待たれますね。

また、「複数の医療機関より」「6種類以上の内服薬」が処方されていることが要件となっています。これを、ハードルが高いと見るか、割と行けそうと見るか、、、

しかし、現行でも「重複・相互作用等防止加算1」において重複投薬等に係る疑義照会などの評価がされています。今回の新設の支援料とのすみわけについては3月以降にわかるでしょう。

 

④ かかりつけ薬剤師指導料等の評価

概要:かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料について、以下の見直しを行う。
  1. 患者のプライバシーに配慮することを要件として追加する。
  2. 対物業務から対人業務への転換を進める観点から評価を見直す。
  3. 医療機関と薬局の連携による残薬への対応を推進する観点から、お薬手帳による医療機関への情報提供を推進する規定を要件に追加する。※ かかりつけ薬剤師指導料が要件を引用する薬剤服用歴管理指導料の要件として追加。

点数:

【かかりつけ薬剤師指導料】 73点 ⇒ 76

【かかりつけ薬剤師包括管理料】 281点 ⇒ 291

要件など:

  • 【かかりつけ薬剤師指導料の要件追加】患者との会話のやりとりが他の患者に聞こえないようパーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮していること。

  • 【薬剤服用歴管理指導料の要件追加】患者に残薬が一定程度認められると判断される場合には、患者の意向を確認した上で、患者の残薬の状況及びその理由を患者の手帳に簡潔に記載し、処方医に対して情報提供するよう努めること

解説:<要件を増やして点数アップ>

患者のプライバシーへの配慮についてはおよそ10年ほど前からよく言われるようになりましたね。まだ、投薬台にパーテーションがないような薬局はダメですよということなのでしょう。

【薬剤服用歴管理指導料への要件追加】=全ての薬局に係ります
お薬手帳への残薬の記入については、今まで患者自身に残薬数を記入して次回医師に見せるようなフォーマットを採用している薬局も増えてきましたが、私は患者自身で残薬数を記入しているお薬手帳を見たことはほとんどありません。薬剤師が大して説明していないんだろうなと推測しています。大手のドラッグストアなどは本部で帳票類のフォーマットを管理しているので、現場の薬剤師が「残薬数を記入するようなフォーマットにしたんだからちゃんと患者さんに説明しなきゃ」と思うことはほとんどないのでしょう。(勝手な推測ですが…)

今後は薬剤師が患者のお薬手帳に、残薬状況(数、理由)を簡潔に記入して処方医に情報提供することが努力義務となります。当然、記入しただけで患者が処方医に見せなければ伝わりませんから、「次回先生に見てもらってくださいね」という指導が必須ですよね。

 

⑤ 同一薬局の利用推進

概要:患者が同一の薬局を繰り返し利用することを推進する観点から、以下の見直しを行う。

  1. 薬剤服用歴管理指導料の点数が低くなる規定について、再度の来局の期間を「原則6月以内」から「原則3月以内」に短縮するとともに、対象を調剤基本料1以外にも拡大する。
  2. 調剤基本料について、同一患者から異なる医療機関の処方箋を同時にまとめて複数枚受け付けた場合、2回目以上の受付分については所定点数の100分の80に相当する点数を算定する。
  3. 薬剤服用歴管理指導料について、医療機関等から薬局への連絡を円滑に行うため、患者が普段利用する薬局の名称をお薬手帳に記載するよう患者に促す規定を追加する。

点数:

【薬剤服用歴管理指導料】

1 原則月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 41点⇒43
2 1の患者以外の患者に対して行った場合 53点⇒57
3 特別養護老人ホームに入所している患者に訪問して行った場合 41点⇒43

 ※1及び2については、手帳を持参していない患者に対しては、本文の規定にかかわらず、処方箋受付1回につき、57点を算定する。

 ※6月以内にお薬手帳持参で再来局した場合 調剤基本料1のみ薬剤服用歴管理指導料1を算定⇒3月以内にお薬手帳持参で再来局した場合 全ての薬局で薬剤服用歴管理指導料1を算定

【調剤基本料】

複数医療機関(例:2か所)の処方せんを同時に受け付けた場合:現行所定点数2回分⇒所定点数1回分+100分の80の点数1回

要件など:

  • 【薬剤服用歴管理指導料の要件として】保険薬局や保険医療機関等の間で円滑に連携が行えるよう、患者が日常的に利用する薬局があれば、その名称を手帳に記載するよう患者に促すこと。

解説:<患者へのインセンティブにより薬局選択が進む!>

今まで複数の医療機関を受診して、複数の薬局で調剤を受けていた患者にとって「かかりつけ薬局を決めて薬局をまとめると負担金が減りますよ」ということです。

薬局にとっては、すでにかかりつけとして複数医療機関を受診している患者から全ての処方せんを応需している場合はやや減収となるかもしれません。しかし、私の感覚では複数薬局を利用している患者の方が断然多いように思います。

つまり、薬剤師、事務スタッフ全員で患者さんのお薬手帳を確認して他薬局での調剤を見かけたら、「薬局をまとめて同時に処方箋持ってくると負担金が減りますよ」「次回分の薬を備蓄しておきますよ」などと声かけを徹底して、持ち込まれる処方箋が1枚でも2枚でも増えたら必ず増収となりますよ

気になるのはどこまでが「同時」っていうの?てことですよね。例えば内科を受診して処方せんを薬局に持ってきて、「整形に行って来るから薬用意しといて」と1時間後くらいに整形の処方せんを持って薬局に来られた場合はどうするの?とか生々しい問題です。3月の説明会でちゃんと説明してくれるのかな???

 

 

【Ⅱ-7-1 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価】

④ 質の高い外来がん化学療法の評価<医科>

概要:外来での抗がん剤治療の質を向上させる観点から、患者にレジメン(治療内容)を提供し、患者の状態を踏まえた必要な指導を行うとともに、地域の薬局に勤務する薬剤師等を対象とした研修会の実施等の連携体制を整備している場合について、新たな評価を行う。

点数:(新設) 連携充実加算  150点(月1回)

要件など(主なもの):

  • 外来化学療法加算1のAを算定する患者に対して、当該保険医療機関の医師の指示に基づき薬剤師が、治療の目的及び治療の進捗等を文書により提供した上で、患者の状態を踏まえて必要な指導を行った場合

  •  治療の状況等を共有することを目的に、提供した治療の目的及び治療の進捗に関する文書を他の保険医療機関又は保険薬局に提示するよう患者に指導を行うこと。

  • 他の保険医療機関又は保険薬局から服薬状況、抗悪性腫瘍剤の副作用等に関する情報が報告された場合には、必要な分析・評価等を行うこと。

    [施設基準](抜粋)

    地域の保険医療機関及び保険薬局との連携体制として、以下に掲げる体制が整備されていること。

    ア 当該保険医療機関で実施される化学療法のレジメン(治療内容)を当該保険医療機関のホームページ等で閲覧できるようにしておくこと。

    イ 当該保険医療機関において外来化学療法に関わる職員及び地域の薬局に勤務する薬剤師等を対象とした研修会等を少なくとも年1回実施すること。※経過措置期間あり

    ウ 他の保険医療機関及び保険薬局からの患者のレジメン(治療内容)や患者の状況に関する相談及び情報提供等に応じる体制を整備すること。また、当該体制について、ホームページや研修会等で周知すること。

解説:<病薬連携が自分の薬局にもやってくる!>

総合病院などの外来で抗がん剤治療を行っている患者さんは少なくありません。この加算はいわゆる病薬連携を促進させるための病院側のインセンティブです。毎月150点ですから病院にとっては大きな収入源となるでしょう。病院側も一生懸命取り組むことが予想されますね。

加算の算定には化学療法のレジメンをホームページに公開し、少なくとも年1回の研修会を実施し、相談及び情報提供の体制を整備することとされています。(経過措置期間は半年となりましたので、9月までに必ず1回は研修会が開催されそうです)

つまり薬局としては、各病院のホームページにレジメンを確認し、レジメン研修会に薬剤師を参加させる準備を始めておくといいでしょう。また、次の薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2とも密接に連携していることも理解しておきましょう。

 

⑥ がん患者に対する薬局での薬学的管理等の評価

概要:患者のレジメン(治療内容)の情報を活用し、患者への副作用対策の説明や支持療法に係る薬剤の服薬指導等を実施するとともに、調剤後に電話等により服薬状況、抗悪性腫瘍剤の副作用の有無を確認し、その内容を文書等により医療機関に情報提供した場合の評価を新設する

点数:(新) 薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2 100点(月1回まで)

要件など:

  1. 保険医療機関で、抗悪性腫瘍剤を注射された患者について、当該患者の治療内容等を文書により確認し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合であって、当該患者の同意を得た上で、調剤後の抗悪性腫瘍剤の服用に関し、電話等により服用状況、副作用の有無等について患者に確認し、当該保険医療機関に必要な情報を文書等により提供した場合には、特定薬剤管理指導加算2として、月1回に限り100点を所定点数に加算する。

  2.  当該加算における薬学的管理及び指導を行おうとする保険薬剤師は、原則として、保険医療機関のホームページ等でレジメン(治療内容)を閲覧し、あらかじめ薬学的管理等に必要な情報を把握すること。

施設基準:

(1)保険薬剤師としての勤務経験を5年以上有する薬剤師が勤務していること。

(2)患者との会話のやりとりが他の患者に聞こえないようパーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮していること。

(3)麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第3条の規定による麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができる体制が整備されていること。

(4)保険医療機関が実施する抗悪性腫瘍剤の化学療法に係る研修会に当該保険薬局に勤務する薬剤師の少なくとも1名が年1回以上参加していること。※[経過措置]

 

解説:<病薬連携が始まるとともに、がん化学療法に強くならないといけない!>

薬機法改定で新たに定義される専門医療機関連携薬局の前段階としての薬局の機能・役割整備だろうという見方もあるようですね。

施設要件としては、 キャリア5年以上の薬剤師が在籍、パーテーションがある、麻薬小売業の免許があるなど(1)~(3)は地域支援体制加算を算定している薬局の要件でもあるので概ね問題ないでしょう。(4)は在籍する薬剤師の誰かが(普通は薬局長でしょうけど)最低1年に1回、化学療法に関する研修会に参加すればOKです。ただし、患者を担当する薬剤師は別途、当該医療機関のホームページでレジメンを確認し薬学的管理等に必要な情報を把握しておく必要があります。

複数の医療機関の患者の処方せんを応需するためには、それぞれの医療機関が実施する研修会に参加しなければならないのか?は3月の説明会で説明されるのでしょう。

算定要件としては、まず「抗悪性腫瘍剤を注射」された患者が対象になるということに注意ですね。これは病院薬剤師から患者経由で届く当該患者に係る治療内容と進捗に関する書類で確認することになりそうです、(あるいはお薬手帳に病院薬剤師が記入)さらに、後日電話などで薬局から連絡することを説明し同意をもらい、聴取した内容をまとめて医療機関に報告するという、なかなかの煩雑さです。しかし、「面倒だからウチはやらなくていいよ」という薬局は そのうち淘汰されるでしょう。

この加算の算定実績がその薬局(会社)の生き残ろうとする本気度そのものになるかもしれませんね。

 

その②、その③に続く…

 

薬局長目線でポイント解説②

その②の内容・・・・

【Ⅱ-10 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた評価、薬局の対物業務から対人業務への構造的な転換を推進するための所要の評価の重点化と適正化、院内薬剤師業務の評価 】

① 地域医療に貢献する薬局の評価 

② 薬局における対人業務の評価の充実(目玉!)

③ 調剤基本料の見直し

 

薬局長目線でポイント解説③

その③の内容・・・・

【Ⅱ-11 医療におけるICTの利活用】

⑤情報通信機器を用いた服薬指導の評価

【Ⅲ-3 質の高い在宅医療・訪問看護の確保 】

⑯ 患者の状態に応じた在宅薬学管理業務の評価

【Ⅳ-1後発医薬品やバイオ後続品の使用促進】

①薬局における後発医薬品の使用促進

【Ⅳ-6 医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用の推進】

② 入院時のポリファーマシー解消の推進<医科>