先日公開された選定療養費対象の長期収載品リストを利用して、患者がそのまま長期収載品を希望した場合、年間の課税売上がどれくらいになるのか、気になってませんか?
今回は過去の処方実績を基に、年間の選定療養費をシュミレーションしてみましょう。
年間選定療養費のシュミレーション
みなさんの薬局の選定療養費に係る売上げがどの程度になるのか、まずは現状の把握が大切になります。
このシュミレーションに必要なデータは、
- YJコード(または薬価基準コード)
- 年間の薬品使用量
- 選定療養費対象長期収載品一覧
の3点があればシュミレーションができます。
1および2は薬局の在庫管理システムまたはレセコンから抽出します。
3についてはこちら→後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)からExcelファイルを入手します。
前提条件としては、
- 対象となる長期収載品の使用は全て患者希望
- 2024年10月以降もジェネリックは希望せず、そのまま長期収載品を調剤
- 1剤、1薬品、1日用量(または処方全量)が「1」
とした上で選定療養費を算出するシュミレーションです。
上記3の選定療養対象の長期収載品リストをExcelで開き、H2セルに選定療養分の薬価差を求めます。
「=(F2-G2)/4」を入力します。(→薬価差の1/4を求める式です)
I列に選定療養品目が1剤1薬品、1日用量を「1」とした時の1日あたり(1錠あたり)の選定療養費を求めます
「=IF(H2<15,10,ROUND(H2-0.01,-1))」を入力します。(→薬価差1/4が15円以下なら10円(1点)、15円超なら五捨五超入する)
H2:I2セルを選択し最下行までフィルダウンして、仮に「BookA」という名前で保存しておきます。
処方実績ファイルの加工
とある在庫システムではグループ薬局の年間・月別の薬品ごとの処方量が一括でCSV出力できて、なおかつYJコードもあります。このデータを参考にしてシュミレーションしてみましょう。
抽出される項目のうち、「店舗」「(必要なら)エリア」「薬品名」「YJコード」「期間使用量(ここでは1年間)」の項目を利用します。それ以外の列は非表示としておきます。
図でY2セルに「=IFERROR(VLOOKUP(E2,[BookA]Sheet1!$A:$I,9,0),0)」、
Z2セルに「=K2*Y2」を入力し、Y2:Z2セルをフィルダウンします。
数式がコピーされたら、表中のセルを1か所選択し、ピボットテーブルを挿入します。
ピボットテーブルのフィールドを下図のように設定します。
そうするとエリア別小計の表示もある、集計が完成です。(太字がエリア計)
当社では、昨年実績がそのまま処方され、全て患者都合で、全てそのまま長期収載品で調剤した場合、選定療養費(課税対象)の売上げ(税抜き)が1600万円超となることが分かりました。
免税事業者のままでいるためには、この想定売上げを税込みにしたものを1000万円以下に抑える必要があります。
1000万円 ÷ (1600万円x1.1) = 56.8%
現在長期収載品を調剤しているうち、金額ベースで45%程度をGEに変更しないと課税事業者となる未来が待っていることが分かります!!
ちなみに、当社の薬剤料比率を30%とすると、課税売上げ割合は、
1622万 ÷ (46870万円 ÷ 0.3) = 1.03% となります。
※課税売上げ割合については、記事後半で解説
あとは、どの程度が「医療上の必要性」として処方されるのか、「薬局都合(判断)」とするケースがどれだけあるのか、にも大きく左右されますので、初めの3か月程度で状況を確認し、年間の課税売上げがどうなるかを把握しておくといいでしょう。
課税事業者になるタイミングは?
多くの薬局は現在免税事業者だと思います。
24年10月以降の選定療養費制度により課税売上げが上昇し、会社として年間の課税売上げが1000万円を超えると、翌々事業年度より課税事業者となります。
「免税事業者の課税売上げ」って少し変な感じもしますね。免税事業者の課税売上げが1000万円を超えるかどうかの判定には、「税込み」の金額で判定するようです。だってこれまでお客さんから預かった「消費税」は納税せず、自らの利益としていましたよね。つまり、そういうことのようです。
事業年度が4月始まりであれば、早ければ2026年度から課税事業者となります。私の所属する会社は1月はじまりで、2024年10~12月の選定療養費だけでは1000万円は超えそうにないので、恐らく2027年1月から課税事業者となりそうです。
皆さんの会社の事業年度と、想定される課税売上はいくらですか?
仕入税額控除ができる!
免税事業者になくて、課税事業者にある特権が「仕入税額控除」でしょう。
(正確なところは国税庁ホームページで確認できます)
非課税取引である保険調剤を主な生業とする調剤薬局では、仮に課税事業者登録をしてもこれまでは仕入税額控除の恩恵はわずかでした。
そんな中、選定療養費制度が始まります。これは課税売上割合が上昇するということにつながりますので、仕入税額控除で認められる金額の上限が増えると考えると分かりやすいでしょうか。(正確には上限ではありませんが、、、)
超簡単に言うと、『課税売上割合が上昇すれば、仕入で払った消費税が沢山戻ってくる』ということになります。
こちらの記事もご参考に。