2017年11月に千葉県のウエルシア薬局で医療用医薬品の不正販売についての報道があり、こんな記事を書きました。
そして残念なことに先週こんな報道がありました。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201802/554877.html
埼玉県の薬局について、薬機法に対する違反で業務停止7日間の行政処分、ということです。(麻向法違反については処分なし?のようです)
また、先述のウエルシア薬局の店舗に対しては、薬機法及び麻向法に対する違反で、19日間の業務停止処分となりました。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201802/554926.html
違反内容及び処分内容の違いをまとめてみました。
薬局名 | ウエルシア薬局ユーカリが丘店 | ファミリープラザ健康薬局 |
開設者 | 株式会社ウエルシア薬局 | 有限会社ドラッグストア光 |
所在地 | 千葉県佐倉市 | 埼玉県和光市 |
違反期間 | 2014年8月31日~17年7月10日(約3年間) | 2015年9月18日~17年10月6日(約2年間) |
違反内容 |
《千葉県発表》 (1)薬機法第49条第1項違反 薬局開設者は、2014年8月31日から17年7月10日までの間、26人に対し計63回(うち向精神薬3人、計8回を含む)、36種類(うち向精神薬3種類を含む)の処方箋医薬品を処方箋なく販売した。 (2)薬機法第8条第1項違反 管理薬剤師は、上記(1)の通り処方箋医薬品を処方箋なく販売するなど管理者の義務を怠った。 (3)薬機法第55条第1項違反 薬局開設者は、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を22人に対し計29回、薬機法第50条(直接の容器等の記載事項)および薬機法第52条(添付文書等の記載事項)に定める必要な記載事項を渡すことなく販売した。 (4)麻薬及び向精神薬取締法第50条の16第4項違反 薬局開設者は、2016年3月22日から17年3月3日までの間、3人に対し計8回、3種類の向精神薬を処方箋なく販売した。 |
《埼玉県発表》 同薬局が (1)医師から処方箋の交付を受けていない人13人に対して、処方箋医薬品の抗菌薬や向精神薬を17品目販売、 (2)従業員2人に対して、薬機法施行規則第205条で定められた文書の交付を受けずに劇薬2品目を販売
それぞれ薬機法第49条第1項、同法第46条第1項に違反 |
発覚経緯 | 2017年8月21日 巡回中の管理職 | 2017年6月 匿名の通報 |
立入検査 | 2017年9月5日に通報、12月22日まで行政指導 | 2017年8月 |
不正販売品目 | (1)の処方箋医薬品として、主にED治療薬や男性型脱毛症治療薬(AGA治療薬)が販売され、(3)については主にロキソプロフェンナトリウム水和物(商品名ロキソニン他)やH2受容体拮抗薬が含まれていた |
患者2人計9回 レペンタン坐剤 従業員11人計36回 抗菌薬など |
処分発表 | 2018年2月7日 | 2018年2月9日 |
処分内容 | 業務停止19日間 2018年2月9日~同月27日 | 業務停止7日間 2018年2月10日~同月16日 |
※ウエルシア薬局の千葉県内の店舗110店舗についても点検を指示され、3店舗で不正販売が確認されたものの常習性はないと判断され今回はおとがめなしとなっているようです。
まあ、ウエルシアについては氷山の一角、あるいはトカゲのしっぽキリ的なこともあるんだろうな、というのが感想ですね。
大手以外でも全国でこのような法に抵触することが日々行われているのかもしれません。なんせ5万5千軒もの薬局がありますからね。。
内部通報や匿名の通報により行政の知るところとなった時、行政側はまず開設者を呼び出して事情を聴いてきます。その後、不正の有無を示す資料の提出などを経て、不正の疑いありとなったら現場立入検査となります。
多くの場合は、事情聴取で開設者代理の担当者が持ち帰り数日以内に保健所へ社内調査内容を報告する際に、大ごとにならないように折衝しています。
時には資料を改ざんすることもありますが、バレなければ不正ではないので、保健所に確信的なネタがなければそのまま終了することもあります。
(以前にも登録販売者の実務経験証明書発行で不正がありましたが、表ざたになったのは氷山の一角にすぎません)
違反内容について
今回の2例の違反内容を分かりやすく振り返ります。
- 薬機法第49条第1項 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
いわゆる、処方せん医薬品について、「処方せん医薬品を処方せんなしで販売等してはいけません」ということです。
- 薬機法第46条第1項 薬局開設者又は医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者は、毒薬又は劇薬については、譲受人から、その品名、数量、使用の目的、譲渡の年月日並びに譲受人の氏名、住所及び職業が記載され、厚生労働省令で定めるところにより作成された文書の交付を受けなければ、これを販売し、又は授与してはならない。
「毒薬又は劇薬を販売等する際は、譲受人に「譲受け証」を書いてもらわないといけません」ということですね。ちなみに、調剤された医薬品は薬機法の対象外となるため、処方せん調剤で劇薬を患者に交付する際にはこの譲受け証は不要となります。
- 薬機法第55条第1項 第50条から前条までの規定に触れる医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
医薬品を販売する際には、添付文書などが必要です。薬局間の譲渡の際は納品書などに必要事項を記載し、【調剤専用】と明記することで免除されます。
※ウエルシア薬局から小分け分譲してもらった伝票にはこの【調剤専用】の記載がないので、厳密には小分けの際(店舗間移動含む)に添付文書等を一緒に渡していなければ、全店舗がこの法律に違反していることになります。
- 薬機法第8条第1項 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない。
管理者の義務として規定されています。今回は医薬品の管理において義務を果たせていないとされたのでしょう。
- 麻向法第50条の16第4項 向精神薬小売業者は、向精神薬処方せんを所持する者以外の者に向精神薬を譲り渡してはならない。ただし、向精神薬営業者から譲り受けた向精神薬を返品する場合その他厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
処方箋医薬品の販売については、薬機法第49条第1項の但し書きで、薬剤師等に販売することは認められていますが、向精神薬についてはたとえ相手が医師でも、処方せんがなければ販売等はできません。(病院等の開設者に対しては販売等が認められる)
開設者の無責任
公表された違反内容の事実についてよく見てみると、「開設者は…」となっていることに気づきます。
多くの開設者(会社の幹部たち)は、ちゃんとやっていないのは管理者の責任だ、と思っていることでしょう。自分たちの責任を棚に上げて、ね。
バ~カと言ってやりましょう。
管理者が業務を遂行できているかを確認し、常に薬機法にのっとった運営ができるように配慮をするのが開設者の責務なのです。
開設者が調剤(=売上げ)のことしか考えてないと、こういった違反が起きてしまうということを肝に銘じておいてもらいたいものですね。