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長期収載品の選定療養に係る疑義解釈資料②③の解説

 

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(R6.9.29 ③の追加掲載を受けて追記しました)

8月21日の夜に厚労省の選定療養関連特設ページの後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省 (mhlw.go.jp) に疑義解釈資料(その2)が掲載されましたので、その1に続いて解説したいと思います。
また、9月25日にその3が、26日にその3訂正版が掲載されましたので、追記して解説します。

資料はこちら→
長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する 疑義解釈資料の送付について(その2).pdf

長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する 疑義解釈資料の送付について(その3).pdf

 

 

 

その2~~~

【処方箋の記載について】

問1 「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄の双方に「✓」又は「×」がついた場合、保険薬局においてはどのような取扱いになるか。

これは処方せんを交付する医師等がルールを分かってなくて、「医療上必要」と「患者希望」の両方に「✓」又は「×」がある、とても面倒なケースを想定してくれました。

(答)「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄の双方に「✓」又は「×」がつくことは、通常は想定されず、医療機関のシステムにおいても双方に「✓」又は「×」を入力することはできないと考えられるが、仮にそのような場合があれば、保険薬局から処方医師に対して疑義照会を行う等の対応を行うこと。
なお、医療機関では、「長期収載品の処方等又は調剤について」(令和6年3月 27 日保医発 0327 第 11 号)において、「「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」を記載した場合においては、「患者希望」欄には「✓」又は「×」は記載しないこと。」としているところであり、医療上の必要性がある場合は、「変更不可(医療上必要)」欄にのみ「✓」又は「×」を記載すること。

医科レセコンメーカーの開発者が余程おバカでない限りシステム的にはあり得ない状況なのですが、万が一両方に「✓」又は「×」がある場合は「薬局薬剤師は疑義照会をしろ!」ということのようです。
その上で、「医療上の必要性」であれば保険適用、「患者希望」であれば改めて特別に費用について丁寧に説明した上で先発希望が変わらないようなら選定療養費を徴収することになります。

みなさん、医科レセコンが普通であることを祈りましょう。

 

問2 令和6年 10 月1日前に処方された長期収載品であって、保険薬局に 10月1日以降に処方箋が持ち込まれた場合は制度施行前の取扱いとなるのか。
(答)そのとおり。

問3 令和6年 10 月1日前に処方された長期収載品であって、保険薬局に 10月1日以降に 2 回目以降の調剤のためにリフィル処方箋や分割指示のある処方箋が持ち込まれた場合は制度施行前の取扱いとなるのか。
(答)そのとおり。

問2・3は処方箋交付日が選定療養費制度の施行日より前だった場合はどうするの?という内容です。
処方箋交付日が9月30日までなら、実際の調剤日が10月でも施行前の取り扱い(つまり今まで通り)となるようです。

交付日と調剤日が異なるケースでよく取り上げられるのは、健康保険が変更になっているケースですが、適用される健康保険は「療養の給付を受ける日」が基準となるため、受診してから月跨ぎで来局された場合は、来局日に有効な保険証での処理となります

今回の選定療養の適用に関しては「受診日(処方箋交付日)」が基準となるということですね。

 

問4 令和6年 10 月1日以降に旧様式の処方箋で処方された長期収載品であって、後発品変更不可にチェックがあるものの、理由について記載がされていないものについてどう扱えばよいか。
(答)保険薬局から処方医師に対して疑義照会を行う等の対応を行うこと。

手書き処方せんやシステム対応されないレセコンの場合にありそうですね。交付日が10月1日以降(=選定療養費制度が適用される)の処方箋で、変更不可となっているが、「医療上の必要性」なのか「患者希望なのか」が不明な場合は『疑義照会しろ!』ということのようです。

問5 「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」(平成 18 年厚生労働省告示第 107 号)第三の十四(三)において、「後発医薬品のある先発医薬品の処方等又は調剤に係る費用徴収その他必要な事項を当該保険医療機関及び当該保険薬局内の見やすい場所に掲示しなければならないものとする。」とされているが、掲示内容について参考にするものはあるか。
(答)院内及びウェブサイトに掲示する内容については、以下の URL に示すポ
スターを参考にされたい。 

保険診療に付き物の「掲示物」についてですが、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)に掲載されているものを参考にしてね!ということのようです。

 

【診療報酬明細書の記載について】

問6 医事会計システムの電算化が行われていないものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関及び保険薬局については、薬剤料に掲げる所定単位当たりの薬価が 175 円以下の場合は、薬剤名、投与量等を記載する必要はないとされているが、医療上の必要性等により長期収載品を処方等又は調剤した場合の理由は記載が必要となるのか。
(答)記載不要。 

どれくらいの医療機関、薬局が該当するのか分かりませんが、診療報酬明細(いわゆるレセプト)をコンピューターで作成することができない、つまりレセコンを導入してなくて日々の診療会計も手計算し、レセプトも手書き作成しているところに対する規定なので、ふーんという感じですね。

【公費負担医療について】 

さて、SNSでも話題になった生活保護患者に対しての記述です。

問7 生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合は、どのように取り扱うことになるのか。

生活保護法に定める医療扶助は現物給付となり、受療に対して一切の費用が生じないという大原則があります。この原則を踏まえると、選定療養費制度における特別の費用は生じるのか??みたいな疑問が飛び交ってました。これに対して厚労省もしっかり答を用意してくれました。

(答)【長期収載品の処方等が医療扶助の支給対象にならない場合】「生活保護法第五十二条第二項の規定による診療方針及び診療報酬」(昭和 34 年厚生省告示第 125 号)第2に基づき、生活保護受給者については、長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。
このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等又は調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)第 34 条第3項に基づき、後発医薬品処方等又は調剤を行うこととなる
【長期収載品の処方等が医療扶助の支給対象になる場合】
長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。 

まず、生活保護受給者に対して選定療養が医療扶助の支給対象となるかどうかを述べていますね。「長期入院選定療養」を除き選定療養は医療扶助の支給対象とはならない、と明言されました。

つまり、「医療上の必要性」のない長期収載品の処方(調剤)は医療扶助の支給対象とはならないため、それ以外の医薬品(=後発医薬品)を支給する。ということです。

差額を払えばいいとかそういうことではなく、『「医療上の必要性」がないなら長期収載品は支給対象ではないので支給することはできない』ということなんです。

ただし、医師等が「医療上の必要性」を認めた場合は医療扶助の支給対象となります。

ちなみに生活保護法第34条第3項は以下の通りです。省令や通知ではなく「法律」で定められているということを再確認しておきたいですね。

3 前項に規定する医療の給付のうち、医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条又は第十九条の二の規定による製造販売の承認を受けた医薬品のうち、同法第十四条の四第一項各号に掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が同一性を有すると認められたものであつて厚生労働省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)を使用することができると認めたものについては、原則として、後発医薬品によりその給付を行うものとする。

 

問8 生活保護受給者である患者が、単にその嗜好から長期収載品を選択した場合、「特別の料金」を徴収するのか。

そんなこと言っても、「生活保護受給者には自由はないのか!」みたいに薬局で文句を言うような患者がいた場合は、どうすればいいのか?特別の料金を徴収して先発品を調剤すればいいの?なんて、薬局の休憩室でも話になったりしてますよね。その答えも厚労省が用意してくれました。

(答)生活保護受給者である患者について、医療上の必要性があると認められず、かつ、保険医療機関又は保険薬局において後発医薬品を提供することが可能である場合は、長期収載品を医療扶助又は保険給付の支給対象として処方等又は調剤することはできないため、当該患者が単にその嗜好から長期収載品を希望した場合であっても、後発医薬品を処方等又は調剤することとなる。そのため、「特別の料金」を徴収するケースは生じない。

生活保護受給者に対して長期収載品を処方(調剤)できるケースは、
・医療上の必要性がある場合
・医療機関又は保険薬局で後発医薬品を提供することができない場合
に限られていて、それ以外の場合は後発医薬品を調剤することになる。と断言されています。「医療上の必要性」がない場合に『患者の希望』で長期収載品を調剤するというシチュエーションがあり得ない!ということなんです。

ここは、粛々と対応するに限ります。

9月中に生活保護受給者に対して以下のようなご案内をしておきましょう。

国からの指導に基づき、「後発医薬品のある先発医薬品等」が処方されている場合には、24年10月以降は
・医師等が「医療上の必要性がある」と認める場合
・薬局の在庫都合で後発医薬品を提供することができない場合
を除き、ジェネリック医薬品を調剤交付することとなりますので、予めご了承ください。

厚労省ふざけんな!とか、何でも薬局に押し付けやがって!とかという気持ちもありますが、一番は患者さんと揉めるようなことなく安寧な日常を過ごせるように、準備すべきことをしておく、ということだと思うのですがどうでしょうか。

 

(ここから追記です)

その3~~~

【入院中の患者以外の患者に対する注射について】

問1 「「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について」(令和6年3月27日保医発0327第10号)において、「別表第一区分番号C200に掲げる薬剤」、「別表第一区分番号G100に掲げる薬剤」及び「別表第二区分番号G100に掲げる薬剤」が選定療養の対象となるとされているが、入院中の患者以外の患者(往診又は訪問診療を行った患者も含む)に対して医療機関が注射を行った場合も、長期収載品の選定療養の対象となるのか。

ここではまず、言葉の説明をしたいと思います。

別表第一:医科診療報酬点数表
 区分C:「在宅医療」に係る点数
 C200:「薬剤」に係る点数
 区分G:「注射」に係る点数
 G100:「薬剤」に係る点数

別表第二:歯科診療報酬点数表
 区分G:「注射」に係る点数
 G100:「薬剤」に係る点数

となっています。

入院中の患者に対する処方については選定療養の対象外となることが上記通知(30(6)①)で示されていましたが、院内や患家で医師等が注射を行った場合はどうなるのか?という問です。

(答)長期収載品の選定療養の対象とはならない。
なお、在宅自己注射を処方した場合については、「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和6年7月12日厚生労働省保険局医療課事務連絡。以下「疑義解釈その1」という。)問9に記載するとおり、長期収載品の選定療養の対象となる。 

医師等が診療に伴なって行う注射選定療養の対象外であるということです。

その①問9は「問9 在宅医療において、在宅自己注射を処方した場合も対象となるか。 」というもので答は「そのとおり」となっています。

一方で、今回の問では区分F200「投薬」に関しては触れていないため、診察・処置の際に使用する注射薬以外の薬剤については、選定療養の対象となるものと考えられます。ただし、院内採用品に係る除外規定もあるため、実質的にはこれまで通り保険給付となるでしょう。

 

【医療上の必要性について】 

問2 疑義解釈その1問1の②において、「当該患者が後発医薬品を使用した際に」とあるが、後発医薬品の添付文書において、当該患者への投与が禁忌とされている場合も、実際に当該患者に使用したうえで判断する必要があるのか。 
(答)後発医薬品の添付文書において禁忌とされている患者に対しては、当該後発医薬品を使用したうえで判断する必要はなく、この場合は疑義解釈その1問1の②に該当するとみなして差し支えない。 

ここでおさらいです。疑義解釈その1で医療上の必要性について①~④が示されました。簡単に言うと、
①先発後発で効能効果に差異がある
②後発品で副作用、相互作用、効果発現差異がある
③ガイドライン等で後発品へ切り替えないこと等が推奨されている
④後発品では服用困難、吸湿性などで調剤困難などがある
の4つでしたよね。

このうち②について「当該患者が使用した際に」と明記されていて、一度も使っていない場合は、医療上の必要性があるとは認められないことになりました。しかし、この問2は先発品では禁忌ではないが、後発品では禁忌に該当する患者に対してはどうなのか?と質問されています。

普通は「え?先発後発で禁忌の有無が違うものなんてあるの?」と思いますよね。

ところが、Xである方がポストされていました。一般名尿素クリームの、「パスタロンソフトクリーム20%」(先発)には禁忌がないが、「ケラチナミンコーワクリーム20%」(先発)や「尿素クリーム20%「日医工」」「尿素クリーム20%「SUN」」には禁忌が記載されているんです!・・・スゴイ

ただ、内容を確認すると実質的には違いはないものと考えるべきかなと…ということで、この問2はあまり気にしなくていいのではないかと思います。

 

問3 複数の医薬品を混合する際、後発医薬品を用いると配合変化により薬剤が分離する場合であって、長期収載品を用いることにより配合変化が回避できるときは、医療上の必要性があると認められるか。 
(答)疑義解釈その1問1の④に該当するため、医療上の必要性があると認められる。 

これは以前の解説記事でも述べました(間違っていなくてホッとしてます)が、ネットやSNSで「どうするの?」という声が多かったのでわざわざ疑義解釈で示してくれたのかもしれませんね。

 

こちらもご確認ください。

長期収載品の選定療養に係る疑義解釈資料①の解説 - 調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo

 

 

みなさんの薬局での情報共有・患者対応のお役に立てれば幸いです。