3月の薬価改定に向けて在庫を絞りたいと考えている薬局長が多いことでしょう。
今回は、通常包装品で購入して、何錠か残ってしまい薬価改定を迎えて薬価差が小さくなるのと、3月末に在庫「0」となるように分割品を購入するのと、どちらがお得か考えてみましょう。
今在庫が90錠あるけど、3月末までに84錠ずつ2人の患者さんに出そう…
3月末までに、84×2ー90=78錠 を仕入れないといけません。
100錠包装で仕入れると、3月末に22錠残ってしまいます。ここは卸の分割品を利用した方がいいのでしょうか?
1シート10錠単位の分割品を8シート(80錠)仕入れたら、3月末の在庫は2錠だけです。
通常なら、薬価差益を考えたら通常包装で仕入れた方がいいに決まっていますが、薬価改定が待ってます!さあ、薬局長の決断はどっち??
毎年薬価改定が始まれば薬局経営を左右しかねない問題となりそうなこの命題ですが、
- 3月末までに使用される分の薬価差益
- 薬価改定後の在庫の薬価差益
- 薬価改定後に仕入れる分の薬価差益
の3つを丁寧に考えれば答えは見つかりそうです。
私の薬局で、セルセプトカプセル250mgを調剤している患者さんが3月末までにあと2回来局予定です。直近の処方日数は35日分で、1日1回1カプセルなので、70Cpが必要となります。
現時点の在庫数は15Cpです。
薬価は1Cp 269.4円で、薬価引下率は7%とします。
通常包装で100Cp仕入れた場合
仕入れ率を85%とすると、1Cp当たりの薬価差益は薬価×(1‐仕入れ率)ですので、
70Cpの薬価差益= 70 × 269.4 × (1‐0.85) = 2828.7(円)
3月末の在庫数は、15+100-70=45Cp となります。
4月以降の薬価(仮定)は、269.4円×(1‐0.07)=250.4円 となるとして、
原価は変わりませんので、45Cpの薬価差益は、45Cp×(250.4‐269.4×0.85)=969.8円
つまり、通常包装を仕入れた場合の薬価差益の合計は
2828.7+969.8=3798.5円 となります。
分割品で60Cp仕入れた場合
一方、3月末の在庫を絞るために分割品で仕入れた場合を考えてみます。
仕入れ率を92%とすると、3月末までに使用する分の薬価差益は15Cpが通常包装品の残りを使用して、55Cpが分割品を使用したとすると、
15×269.4×(1‐0.85)+55×269.4×(1‐0.92)=1791.5(円)
そして3月末の在庫は、15+60-70=5Cpとなります。
新薬価(仮定)は250.4円として、5Cpの薬価差益は、5Cp×(250.4‐269.4×0.92)=13.4円
ここで便宜上40Cp包装品があるとして考えます。
(通常包装品仕入れの場合と在庫数を合わせるため)
仕入れ率は変わらず85%とすると、
40Cpの薬価差益=40×250.4×(1‐0.85)=1503.2(円)
ということで、分割品を仕入れた場合の薬価差益の合計は
1791.5+13.4+1503.2=3308.2円 となります。
分割品で損をするかも。見た目の在庫金額に騙されないで!!
元の在庫数、薬価、薬価引下げ率、通常包装容量、分割品容量、各仕入れ率、にもよるのですが、今回のケースでは、分割品を仕入れて期末在庫を「5Cp」とするよりも、通常包装品を仕入れて「45Cp」とした方が、結果的には薬価差益を確保できるという結果になりました。
そうです、「仕入れ値の高い分割品を使って期末在庫を減らす」という手法では、結果的に損をすることもある、ということです。
では、通常品の方がいい場合、分割品の方がいい場合、の見極めはどうするの?って知りたいですよね。。。ハイ、ここでExcelの出番です!
次回の記事で、Excelを使ったシュミレーション方法を紹介したいと思います。
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記事更新ししました!
Excelでのシュミレーションについてはこちらをどうぞ!!
(H30.3.2更新)