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(H30年11月追記)
2019年10月の消費増税に合わせての薬価改定の議論が熱を帯びています。
こちらもご覧ください。
2019年10月の消費増税と薬価改定 - 調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo
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来年度の診療報酬改定の議論の中で、今まで2年に1回だった薬価改定を毎年実施することについて、「2021年から実施する」という方向でまとまりそう、ということです。
ということは、
平成30年(2018年)4月 診療報酬改定・薬価改定・介護報酬改定
平成31年(2019年)4月 薬価改定(H30.7.6訂正)
〇〇元年(2019年)10月 消費税8%⇒10%に増税
&診療報酬改定があるかも(H30.7.6訂正)
〇〇2年(2020年)4月 診療報酬改定・薬価改定
〇〇3年(2021年)4月 薬価改定・介護報酬改定
〇〇4年(2022年)4月 診療報酬改定・薬価改定
〇〇5年(2023年)4月 薬価改定
〇〇6年(2024年)4月 診療報酬改定・薬価改定・介護報酬改定
というスケジュールになります。
※現天皇の退位が2019年4月末になるのが有力だそうです。2019年5月からは新元号となりそうです。
つまり、「2018年以降毎年薬価改定が実施されることになる」ということです。
2019年4月に薬価改定をしないというのは、同年10月に予定されている消費増税の影響を含めて今の中医協で議論をすることは困難との判断もあったのでしょうかね。(H30.7.6 取消)
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2019年10月の消費増税の影響を踏まえて、2019年4月には全品目の薬価改定が行われる予定となっていました!!
また、消費増税による医療機関の経費増を手当てするための診療報酬改定も検討されているようですが、これはまだ実施するかどうか、実施するならその時期は、などについては現在検討中のようです。
こちらのサイトが大変参考になりますので紹介しておきます。
2019年10月の消費税率引き上げに備え、薬価・材料価格の調査を実施―消費税分科会 | メディ・ウォッチ | データが拓く新時代医療
消費増税だからって薬価改定されても、診療報酬で補填されなければ薬局の損税ばっかり増えてしまいますね。(H30.7.8追記)
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前回の消費増税は2014年4月で、改定のタイミングとピッタリだったため、一包化の加算が7日当たり30点→32点になったりと一応消費増税の影響を踏まえたものでした。
しかし今回の増税のタイミングは改定から1年半も後なので、なるべく増税には触れないまま点数を決めたいという思惑もあるのでしょうか。。。
我々薬局で働くものとしては、御上が決めることにどう対応していくか、に尽きますので「毎年薬価改定」の売り上げと在庫への影響について考えてみます。
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分割品目の発注の適否についてはこちらをどうぞ(H30.2.18追記)
薬価改定に向けて分割品購入はお得か? - 調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo
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目次
薬価改定の売上げへの影響
まず、売上についてみてみましょう。経済活動ですので実質的に問題となるのは「差益額」なのですが、上場企業の場合は「売上額」もとっても重要視されてしまいます。
売上げが「昨対割れ」にならないように、必死のパッチにならざるを得ないのが上場企業の宿命なのです。
薬価ベースの引下げ率は例年5~7%程度となることが多く、単純に調剤報酬の中の「薬剤料」が5~7%売上げダウンする、ということになります。
ご存知の通り、
調剤報酬 = 調剤技術料(基本料+技術料+薬学管理料) + 薬剤料
となっており、H29.5月の調剤医療費の動向(厚労省)では、処方せん1枚当たりの調剤報酬は9,004円、技術料 2,270円(25.2%)、薬剤料 6,733円(74.8%)、なので
74.8%(薬剤料比率) x 5~7% = 3.74~5.24% の売上げが減ることになります。
金額にすると、処方せん1枚当たり337~471円の売上げダウンです。
月間2,000枚応需の門前タイプでは、67~94万円の減収となります。
薬剤料比率の高い総合病院門前の大型薬局では、処方せん単価2万円程度、薬剤料比率80%という薬局も珍しくありませんが、上場企業なら薬価改定の影響は相当痛いものとなります。
ちなみに、月間応需5,000枚だとすると
20,000円(処方せん単価) X 80%(薬剤料比率) X 5,000枚(月間応需) X 5~7%(引下げ率) =400~560万円
何もしてないのに、月の売上げが400万円以上消えてなくなってしまうんです!!
オープンしたての薬局でもなければ、昨年対比3~5%アップというのはそう簡単な数字ではないので、大型門前薬局を多く抱える上場企業の薬局は苦労しそうですね。
薬価改定の差益額への影響
次に、我々のお給料にも直結する差益額への影響を考えてみましょう。
前述の調剤医療費の動向によると、薬剤料比率は74.8%(6,733円/枚)です。
薬価差益率は会社によって差があるでしょうが、平均的には15%ではないでしょうか。
また、調剤の仕入れに関してはその消費税も原価として計上する必要があります。
消費税を加味した薬価差益率は、
1 -(1 - 15%(薬価差益率) ) x 1.08%(消費税) = 8.2%
となります。
1枚当たりの薬価差益は
9,004円(1枚単価) x 74.8%(薬剤料比率) x 8.2%(薬価差益率) = 552円 となります。
薬価改定で、5~7%引下げがあると単純に
552 x 5~7% = 27.6~38.7円 が1枚当たりの差益減となります。
月2,000枚応需の薬局で55千円~77千円の差益減、時給2,000円の薬剤師の28~38時間分に相当する見込みです。
- 応需枚数が多い
- 1枚単価が高い
- 薬剤料比率が高い
- 薬価差益率が高い
という薬局では影響が大きくなります。
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薬価改定の在庫への影響
薬価改定を迎える場合に、在庫削減を指示される薬局が多いと思いますが、なぜ在庫削減が必要かを理解していますか?
単純に考えます。
1万円で売っている商品が、明日から9500円になると知っていたら、どうしても今日必要でなければ買うのは明日以降にしますよね。
価値が下がるのが分かっていて、わざわざ高い時に買うのはおバカさんなのです。
(3月中に使いきれるならいいんですよ)
資産価値の目減り
資産価値としての在庫を考えましょう。
例えば3月31日に薬価ベースで1000万円の在庫があっても、一晩経つと薬価改定で5%価値が下がり、950万円の在庫となります。
普段、「在庫削減するように」指示されている薬局長としては「在庫金額が減ったじゃん!」と喜ぶ人もいるようですが、大きな間違いです。
資産価値とは、その在庫がすべて売れた場合いくらの現金になるか、ということであり、それが一晩で50万円少なくなってしまう、ということに危機感を持たないといけません。
薬価差益額の算定への影響
売上げ評価のため、調剤での差益額を算出する場合にネックとなるのが薬価差益の算出です。
一般的な小売業では単品(JANコード)ごとの原価がPOSに登録されていて、POSレジでJANコードをスキャンして会計をすることで、粗利益額が計上されます(売買差益額とも言ったりします)。
ところが調剤の場合は、単品ごとの原価を管理するという商習慣ではなく、各卸とトータルで(薬価に対して)何%の値引きをするかを契約していることが多いのです。
また、基本的な帳合は決まっていても、「急配」という発注をすることがあったり、分割品目の仕入れや、他薬局から分譲してもらうなど、通常の小売業にない仕入制度となっています。
更に、薬剤料の計上についても、単純に薬価×使用数量=薬剤料ではありません。
みなし薬価差益率
これらのことから、正確な薬価差益額の計上は困難ため、経営上差益額の計上をする際には、「みなし薬価差益率」を用いることが多いです。
きちんとしている薬局は、当月の仕入れに対して、
1 ー 当月仕入の原価合計 ÷ 当月仕入の薬価金額合計 = みなし薬価差益率
として、毎月店舗ごとのみなし薬価差益率を算出しているでしょうが、大手ドラッグストアでもそこまでちゃんとしているところは少ないようです。
各卸の薬価差益率に仕入れ割合(シェア)を乗じて平均の薬価差益率を算出して、それを用いることが多いようです。
薬価改定前後の差益
3月末時点で10000円の在庫があって、9000円で仕入れたとします。
4月以降には9500円になったが、みなし薬価差益率は同じとします。
4月に売れた場合、正確な差益は9500円-9000円=500円ですが、みなし薬価差益率が同じなので、計算上は9500円x10%=950円の差益があったとなってしまいます。
いつも通りに差益額を算出するだけだと、この450円(9500円の4.7%)の差を無視してしまうことになるのです!!
そこら辺の調剤部長レベルでは理解していないことも多いかも。。。
なるべく正しく評価するためには、
3月末の在庫に対して、みなし薬価差益率からみなし原価を算出し、4月の薬価に対しての「改定後みなし薬価差益率」を求めておき、
改定直後の在庫金額 ÷(改定直後の在庫金額+4月~〇月の仕入金額)x 改定後みなし薬価差益率
+4月~〇月の仕入金額 ÷(改定直後の在庫金額+4月~〇月の仕入金額)x みなし薬価差益率 = 新みなし薬価差益率
が求められます。
つまり、3月末の在庫が多ければ、いつまでも薬価差益への影響が続く、ということです。
毎年改定の影響
2018年以降、この薬価改定が毎年やってくるのです。
例年3月5日頃に診療報酬改定と同時に新薬価が公示されますが、2018年以降も同様だとすると、1ヶ月間で引下げ率の大きい薬品を中心に使い切るようにする必要があります。(2020年⇒2018年に訂正しました H30.7.8)
今までは薬価引下げと同時に調剤報酬改定もあったので、技術料と合わせての増収、減収という形でしたが、今後報酬改定のない年には薬価が下がるマイナス要因のみとなります。上場企業では昨年対比割れを避けるための施策が不可欠となりますね。
毎年改定にどう対処すべきか
売上げに関しては、報酬改定と同時の場合は加算をしっかり算定できる体質にしていくことが最も重要でしょう。大きな加算としては基準調剤加算と後発医薬品調剤体制加算の二つでしょう。これらは全ての処方せん受付に対して算定できるので影響が大きいですね。
しかし、薬価改定のみの年は加算算定だけでは補えそうにありません。
基本に立ち返り、実直に患者数を増やす努力を日頃から続けることが1番かもしれません。
長期処方の見直しを処方元にお願いするのもありでしょうが、リフィル処方解禁に向けた流れもありますので、薬局のとるべき施策としてはイマイチな気がします。
差益額や在庫金額に関しては、
- 過剰在庫(いわゆるデッドストック)をなくす
- 3月末までに使い切れるように早めに店間移動する
- 未開封品は卸に返品する※
- 3月末までの使用量を的確に予測して必要数を発注する
- 3月5日以降は公示された引下げ率を加味して発注する
などの対応を店舗ごとに行う必要があるでしょう。
加えて本部側は店舗状況の把握に努めつつ、原価交渉を頑張ることが必要ですね。
※最近は卸もロット管理をしているので、返品を受ける際には「いつ納品したものか」を確認しています。そのため、返品を受け付けたのが薬価改定後であっても薬価改定前に納品したものであれば、その時の納入価で返品を受けてくれるはずです。つまり、返品は必ずしも薬価改定前にしなくても損はしません。
ただし、差益額の算出の際には本部側ではその辺の状況まで確実にデータで押さえることは大変難しいため、やはり3月中に返品しておく方が無難だと思います。
消費増税前は特別です!(H30.7.8追記)--------
2019年10月に消費税が8%⇒10%へと増税が予定されています。
薬価が変わらないのに、仕入負担が増えるだけ!だとすると、薬局の対処としては2019年9月中になるべく在庫を抱えるようにするしかありません。
いわゆる「買いだめ」ですね(笑)
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普段から適切な在庫管理ができていれば、慌てふためいたり、嘆いたりすることもありません。 また、これらのポイントについては今後このブログで手法を紹介していきたいなと思っています。