H30年1月24日に個別改定項目について中医協で議論され資料が厚労省のホームページに公開されました。
後発医薬品調剤体制加算は3段階ということなりました❗️近日関連記事を掲載予定ですが、このページは数字の扱い方の参考にご覧頂ければ嬉しいです。
(H30.2.12追記)こちらのページで改定内容について解説いたします!
薬局長目線の解説:2018年(平成30年)診療報酬改定内容が決定!! - 調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo
========================================================================
秋になり来年の改定に向けて、中医協での議論が活発になってきていますね。
次の調剤報酬改定では、薬局機能による調剤基本料の区分化やかかりつけ薬剤師指導料の要件見直しなどが取り沙汰されていますが、今回は、後発医薬品調剤体制加算について考えてみたいと思います。
国は欧米並みのジェネリック普及率である「80%」を掲げて、2020年度には達成するとの閣議決定に基づき議論されています。
現状は昨年4月の改定で65%、75%の2段階で加算が設定されていますが、来年の改定では80%の一本化になりそうとの話です。
(※H30.1月追記:2段階が維持されるかもしれません。詳しくはこちら→
2018年(平成30年)診療報酬改定率が決定! - 調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo )
そもそも診療報酬とは、医薬分業に始まる国の政策誘導を実現するためのインセンティブという面が大きい(つまり馬の目の前にニンジンをつるすようなもの)のですが、加算が設けられるのは国の目標である80%を達成できるまで、と考えるのが賢明でしょう。
となると、次回2018年の改定で後発医薬品調剤体制加算の要件は80%のみとなり、2020年に国の目標を達成できたとするともう加算の設定は終わり、となる可能性が大きい、つまり、同加算の恩恵を受けられるのもあと2年半ということです。
そこで今回は、今から頑張れば来年4月に80%をクリアできそうな薬局が、本当に後発品を頑張った方がいいのか、先発品での売り上げ増を確保した方がいいのかを考えてみます。
後発医薬品調剤体制加算の点数は?
現在65%で18点、75%で22点の点数が設定されていますが、過去の改定での点数の変遷は次のようになっています。
次の改定では80%のみとなるということなので点数は25~30点くらいになるのではないでしょうか。
国は何としても80%という目標をクリアしたいので、65%(18点)も廃止するし、とにかく点数を高くしてでも薬局に頑張ってもらいたいのです。
ということで、次回改定で後発医薬品調剤体制加算は「30点」になると仮定して試算をしてみます。
sponsored Link
試算:現行の加算2から80%クリアの場合
追記:Excelで試算するためのシート作成についてはこちらの記事をどうぞ
Excelで後発品医薬品調剤体制加算を試算する方法 - 調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo
試算の前提として、下記の条件を仮定します。
- 月間処方せん受付:1500回
- 処方せん単価:10,000円
- 薬剤料比率:70%
- 現在の後発医薬品調剤率:76%
- カットオフ値*1:67%
- 後発品薬価/先発品薬価=30%(私の薬局での計算値)
- 先発でも後発でもない品目の薬価/先発品薬価=90%
- 薬価改定での影響はないとする
- 調剤報酬技術料の改定率も±0%
処方せん1枚当たりの後発品薬剤料
まずは現状の薬剤料の中身をみる前に、先発品の薬価を基準に薬剤料比率を出してみます。
先発でも後発でもない薬品:33%(100‐カットオフ値) × 90%(上記7)=0.297(A)
後発品:67%(カットオフ値) × 76% × 30%(上記6) =0.153(B)
先発品:67% × 24% = 0.161(C)
ということで、金額ベースの比率を求めると
- 後発品:0.153÷(0.297+0.153+0.161)=25.0%
- 先発品:0.161÷(0.297+0.153+0.161)=26.4%
- 先発でも後発でもない:0.297÷(0.297+0.153+0.161)=48.6%
薬剤料の構成比から先発品、後発品の平均薬剤料を求めます
1枚当たり薬剤料 10,000円 × 70%(薬剤料比率) = 7,000円
- 後発品薬剤料 7,000円 × 25.0%(上の1) = 1,750円
- 先発品薬剤料 7,000円 × 26.4%(上の2) = 1,848円
- 先発でも後発でもない薬剤料 7,000円 × 48.6%(上の3) = 3,402円
となります。
来年4月までに80%達成したら
ここから、後発品調剤を頑張った結果来年4月には後発品調剤率80%を達成したとします。オルメテックやアバプロ、クレストールなど続々と後発品が出てくるのでカットオフ値も70%になったとします。
そうすると、数量構成比から薬剤料構成比を求めると
先発でも後発でもない薬品:30%(100‐カットオフ値) × 90%(上記7の薬価比)=0.27(A')
後発品:70%(カットオフ値) × 80% × 30%(上記6の薬価比) =0.168(B')
先発品:70% × 20% = 0.14(C')
薬剤料の変化は、
現行:(A)+(B)+(C)= 0.297+0.153+0.161 = 0.611
来年4月:(A')+(B')+(C')= 0.27+0.168+0.14= 0.578
0.578 ÷ 0.611 = 94.6%
薬剤料は、7,000円 × 94.6% = 6,622円 (5.4%減) となります。
つまり、処方せん1枚単価が 薬剤料の減少分(7000円‐6622円=378円)だけ下がってしまいます。
これに対し、後発医薬品調剤体制加算の増額分は
30点(推定) - 22点(現行) = 8点(80円)
にとどまります。
つまり、売上としては処方せん1枚当たり
80円(加算増) - 378円(薬剤料減) = △298円
月間 △298円 × 1500枚 = △447,000円
年間 △447,000円 × 12か月 = △5,364,000円
となります。
利益を考えると
薬剤料の薬価差益について、先発品と先発でも後発でもない品目の薬価差益を15%、後発品の薬価差益を25%と仮定してみると、
- 現行先発品などの差益:(A+C)÷(A+B+C)×15% = (0.297+ 0.161)÷(0.297+0.153+0.161)x15% = 0.458 ÷ 0.611×15% =0.112
- 現行後発品の差益:(B)÷(A+B+C) × 25% = 0.153 ÷ 0.611 ×25% = 0.063
- 薬価差益:7000円 × (0.112+0.063) ≒ 1,225円
一方、来年4月80%達成の場合の差益は、
- 先発品などの差益:(A'+C')÷(A'+B'+C')×15% = (0.27+0.14)÷(0.27+0.168+0.14)×15% = 0.41 ÷ 0.578 ×15% = 0.106
- 後発品の差益:(B')÷(A'+B'+C')× 25% = 0.168 ÷ 0.578 ×25% = 0.073
- 薬価差益:6622円 × (0.106+0.073) ≒ 1,185円
となるので、加算の増額と合わせると処方せん1枚あたり、
80円(加算増) - 1,225円(現行薬価差益) + 1,185円(80%達成差益) = 40円
の増益となります。
月間 40円 × 1,500枚 = 60,000円
年間 60,000円 × 12 =720,000円
の増益となります。が、後発品の在庫管理コストや患者への案内などの手間が増えることも考慮しなければいけません。
加算の増額が1~2点程度であれば、コストの方が大きくなる可能性もあるので、見極めが重要になりそうですね。
後発品調剤率を4%上げると薬価差益が1枚当たり40円減額となりましたので、単純に考えて後発品調剤率を22%下げると薬価差益を220円増額できるとしたら、加算2がなくなっても利益は変わらないということになりそうです。
でも76%から54%にするのもなかなか難しそうですね。
その他、前提とした条件のところを皆さんの薬局の現状を当てはめてみて下さい。
次回は、
試算②現行の加算1から80%を目指す場合
について考えてみます。