前回の記事に引き続き、来年(平成30年)の改定での後発医薬品調剤体制加算に関わる試算をしてみます。
今回は現行で加算2(75%)にもう少しという薬局が、来年4月に80%を目指すべきかどうか、利益の試算をしてみましょう。
試算:現行の加算1から80%を目指す場合
について考えてみます。
試算の前提として、下記の条件を仮定します。
- 月間処方せん受付:1500回
- 処方せん単価:10,000円
- 薬剤料比率:70%
- 現在の後発医薬品調剤率:72%
- カットオフ値:73%
- 後発品薬価/後発のある先発品薬価=30%
- (先発でも後発でもない品目+後発のない先発)/後発のある先発品薬価=90%
- 薬価改定での影響はないとする
- 調剤報酬技術料の改定率も±0%
処方せん1枚当たりの後発品薬剤料
まずは現状の薬剤料の中身をみる前に、先発品の薬価を基準に薬剤料比率を出してみます。
先発でも後発でもない薬品+後発のない先発品:27%(100‐カットオフ値) × 90%(上記7)=0.243(A)
後発品:73%(カットオフ値) × 72%(上記4) × 30%(上記6) =0.158(B)
先発品:73% × 28% = 0.204(C)
ということで、金額ベースの比率を求めると
- 後発品:0.158÷(0.243+0.158+0.204)=26.1%
- 先発品:0.204÷(0.243+0.158+0.204)=33.7%
- 先発でも後発でもない:0.243÷(0.243+0.158+0.204)=40.2%
薬剤料の構成比から先発品、後発品の平均薬剤料を求めます
1枚当たり薬剤料 10,000円 × 70%(薬剤料比率) = 7,000円
- 後発品薬剤料 7,000円 × 26.1%(上の1) = 1,827円
- 先発品薬剤料 7,000円 × 33.7%(上の2) = 2,359円
- 先発でも後発でもない薬剤料 7,000円 × 40.2%(上の3) = 2814円
となります。
来年4月までに80%達成したら年間売り上げ800万円ダウン!
ここから、後発品調剤を頑張った結果来年4月には後発品調剤率80%を達成したとします。オルメテックやアバプロ、クレストールなど続々と後発品が出てくるのでカットオフ値も75%になったとします。
そうすると、数量構成比から薬剤料構成比を求めると
先発でも後発でもない薬品:25%(100‐カットオフ値) × 90%(上記7の薬価比)=0.225(A')
後発品:75%(カットオフ値) × 80% × 30%(上記6の薬価比) =0.18(B')
先発品:75% × 20% = 0.15(C')
薬剤料の変化は、
現行:(A)+(B)+(C)= 0.243+0.158+0.204 = 0.605
来年4月:(A')+(B')+(C')= 0.225 + 0.18 + 0.15 = 0.555
0.555 ÷ 0.605 = 91.7%
薬剤料は、7,000円 × 91.7% = 6,421円 (8.3%減) となります。
つまり、処方せん1枚単価が 薬剤料の減少分(7000円‐6421円=579円)だけ下がってしまいます。
これに対し、後発医薬品調剤体制加算の増額分は
30点(推定) - 18点(現行加算1) = 12点(120円)
にとどまります。
つまり、売上としては処方せん1枚当たり
120円(加算増) - 579円(薬剤料減) = △459円
月間 △459円 × 1500枚 = △688,500円
年間 △688,500円 × 12か月 = △8,262,000円
となります。
利益を考えると
薬剤料の薬価差益について、先発品と先発でも後発でもない品目の薬価差益を15%、後発品の薬価差益を25%と仮定してみると、
- 現行先発品などの差益:(A+C)÷(A+B+C) × 15% = (0.243 + 0.204)÷(0.243+0.158+0.204) x15% = 0.447÷0.605×15% = 0.1108
- 現行後発品の差益:(B)÷(A+B+C) × 25% = 0.158 ÷ 0.605 ×25% = 0.0653
- 薬価差益:7000円 × (0.1108+0.0653) ≒ 1233円
一方、来年4月80%達成の場合の差益は、
- 先発品などの差益:(A'+C')÷(A’+B’+C’) × 15% = (0.255+0.15)÷(0.255+0.18+0.15)×15% = 0.405 ÷ 0.585 × 15% = 0.1038
- 後発品の差益:(B')÷(A’+B’+C’) × 25% = 0.18 ÷ 0.585 ×25% = 0.0769
- 薬価差益:6421円 × (0.1038+0.0769) ≒ 1160円
となるので、加算の増額と合わせると処方せん1枚あたり、
120円(加算増) - 1233円(現行薬価差益) + 1160円(80%達成差益) = 47円
の増益となります。
月間 47円 × 1,500枚 = 70,500円
年間 70,500円 × 12 =846,000円
の増益となります。
頑張って80%達成しても月間たったの7万円しか利益になりません。
これじゃ頑張る意味がない!と思いますよね。
それでは、80%達成を諦めた場合はどうなるでしょうか。
単純に、今まで算定していた後発医薬品調剤体制加算1の18点がなくなりますので
月間 180円 × 1,500枚 = 270,000円
年間 270,000円 × 12 = 3,240,000円
諦めたら324万円の利益減となります。
つまり、80%行くと行かないとでは
846千円(80%達成した場合)増益 - 3,240千円(諦めた場合)減益 =4,086千円 の利益差が出ます。
やはり、80%を目指すべきでしょう。
ただし、80%目指して頑張ったけど79%ちょっとが限界だったというのが最悪のシナリオでしょう。
ざっと考えると、
△180円(現行加算がなくなる) - 1233円(現行薬価差益) + 1160円(後発率80%の薬価差益) = △253円
年間 △253円 × 1500枚 × 12か月 = 4,554千円 の差益減となってしまいます。
80%を目指すからには何としても達成したいところですね。
ところで、このブログはExcelをテーマにしているのを思い出しました。近いうちに、今回のシュミレーションをExcelシートで行う方法を紹介しますね。