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妊婦加算凍結 復活はあるか?

 

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2018年終盤に、世間を賑わせた診療報酬の「妊婦加算」について皆さんはどう思われましたか?

厚労省は2018年末に2019年1月1日からの妊婦加算の算定停止の措置を通達しました。

 

本来の目的・意味

 

 いろいろワイドショーなんかでも取り上げられていますが、簡単に言うと「妊婦の診療にあたっては様々な配慮が必要になるが、その必要な配慮を実施して診療することは、妊婦の診療の機会を確保することにつながるため、妊婦加算を設定してその労力を評価する」ということです。

妊婦さんが風邪をひいて内科を受診したときに、妊婦であることを申告したら「ウチでは診れません」と診療を拒否されることが少なからずあることの裏返しです。

 

この「妊婦加算」、実は産婦人科医の多くが賛同しているようです。

妊婦が風邪をひいたり体調が悪くなる度に、「妊娠」とは直接関係ない疾患で受診されると、ただでさえ担い手の少ない産科の診療に支障を来すため、一般の診療科で診てもらえるように制度上の手当てをすることに賛成という立場の産科医が多いみたいです。

 

テレビではコメントはされませんが、この妊婦加算は産婦人科でも対象になります。

産科の患者はほぼ妊婦ですので、産科では妊婦1人1回あたり初診75点(750円)、再診38点(380円)の増収となるため、仮に1か月に初診40人(1日2人)、再診600人(1日30人)を診察したとすると、40 x 750 + 600 x 380 = 258千円 の増収となります。

産科医が反対する理由はどこにもなさそうです。

 

ターゲットが分かりやすかった

 診療報酬には様々な疾患を持った患者を対象にした、〇〇指導加算、〇〇管理加算などの加算が沢山あります。

今回の妊婦加算のほか、6歳未満の小児の診療に関する乳幼児加算(初診75点、再診38点)や、慢性疼痛疾患管理に関する外来管理加算、特定薬剤治療管理料、特定疾患療養管理料、皮膚科特定疾患指導管理料などなど。

 

これらの中で、妊婦加算と乳幼児加算はその対象がはっきりしているのですが、6歳未満の乳幼児加算については、多くの自治体で「子ども医療助成」として窓口負担が無料或いは一律500円などとなっており、加算の負担感がありません。

 

これに対し、妊婦加算の対象者はそのほとんどが3割負担の方です。近年は保険診療に係る明細書の発行義務化もあるので、その明細に「妊婦加算」とあれば、「え、妊婦だと負担が増えるの?」となるのは、容易に理解できますよね。

更に、妊婦加算をはじめ診療報酬の算定内容についてきちんと説明するような医療機関はほぼ皆無でしょう。(逆にそんなことをしていたら窓口渋滞が恐ろしい…)

 

べた取り

妊婦加算を算定を認められるのは全ての診療科とされていました。

眼科でも、耳鼻科でもなんでもどこでも算定ができるとされていました。これにあやかって、いわゆるコンタクトレンズ眼科でも、コンタクトレンズの処方のため目の検診を受けただけの人でも、妊婦加算を算定する眼科もあったのでしょう。

内科的な相談は全くしていないのに、内服薬が処方されたわけでもないのに…

耳鼻科でも鼻づまりで、鼻腔を診察して、吸引して、ネブライザー処置をしてもらっただけで処方もなかったのに妊婦加算を算定された…とか。

 

これを不満に思った人がSNSに投稿したのが騒ぎの始まりでしたね。

 

内科医でも、かぜ薬を一通り処方しておいて、「薬のことは薬局で薬剤師に相談して」とだけ言われたとか、「医師からは何もコメントなかった」というケースなどもあります。

 

政治が動いた

 このSNSにいち早く反応したのが、与党自民党の小泉議員でした。

この分かりやすいべた取りの構図にNGを突き付けた格好です。もともと妊婦加算についても中医協という厚労相の諮問機関で議論された上で、閣議決定された事項ですので一議員が施行されて9ヶ月も経った頃に異議を唱えるなど、異例中の異例でしょう。

しかし、小泉議員です。マスコミも注目します。ということで世の中にどんどん拡散されることとなりました。

 

妊婦に対しての配慮を評価することで、妊婦の診療の機会を確保することが目的ならば、それは国民全体で負担すべきであって、妊婦一人ひとりに負担させるのは「妊婦税」だという論調が大きくなった結果、4月の統一地方選、夏の参院選を控えて自民党内でもめるのは得策ではないとして、厚労省が折れた形になりました。

 

なぜ妊婦加算だけ?

 診療報酬にはいろいろな加算や管理料が設定されています。ただしその対象は様々な算定要件があるため、一般の人には非常に分かりにくいものとなっています。

今回の一件は、対象が「妊婦」と分かりやすかったことに加え、少子化対策に逆行する妊婦税だとしてマスコミも取り上げやすかったことが、妊婦加算凍結につながったものと思われます。

その他の加算・管理料についても国民目線の見直しがあればもっと医療費を抑えられるかもしれませんね。

 

2020年4月の診療報酬改定で廃止されるのか、算定要件を明確化して復活するのか注目です。

私の予想では、算定要件として、「妊婦の診療にあたって医学的な配慮を行った場合に限り」などの算定要件になるのではないかと思っています。

また、産科はそもそも妊婦を対象とするので、「産科は除く」としてもいいと思うのですが、産科学会が黙っていないでしょうから、結局産科では毎回算定できることになるでしょう。