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薬局長目線でポイント解説②:令和2年度(2020年)診療報酬改定

2月7日(金)に、皆様お待ちかねの診療報酬改定の答申内容が公表されました。

 

1月29日に公表されていた個別改定項目に具体的な数字が加わった形で厚労省のホームページにアップされています。

令和2年度診療報酬改定について

 

その中から薬局に関連すると思われる部分を抜粋し、3回に分けて解説します。

=======================

その②の内容・・・

 

【Ⅱ-10 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた評価、薬局の対物業務から対人業務への構造的な転換を推進するための所要の評価の重点化と適正化、院内薬剤師業務の評価 】

① 地域医療に貢献する薬局の評価 

概要:地域支援体制加算の実績要件について、以下のとおり見直す

点数:地域支援体制加算 35点 ⇒ 38

要件など(変更点):

調剤基本料1を算定する薬局

  • ②在宅患者に対する薬学的管理及び指導の回数 1回以上 ⇒ 12回以上

  • ④ 患者の服薬情報等を文書で医療機関に提供した実績 12回以上(服薬情報等提供料に加え、服薬情報等提供料が併算定不可となっているもので、同等の業務を行った場合を含む)(新設)

  • ⑤ 薬剤師研修認定制度等の研修を修了した薬剤師が地域の多職種と連携する会議に1回以上出席(新設)

  • ④と⑤のどちらかを満たすこと※経過措置期間あり

調剤基本料1以外を算定する薬局

  • ⑨ 薬剤師研修認定制度等の研修を修了した薬剤師が地域の多職種と連携する会議に回以上出席(新設)

  • 9つの要件のうち8つを満たすこと

解説:<ハードルを少し上げて、点数アップ>

調剤基本料1の薬局について、在宅患者に対する指導実績要件が上がりました。

服薬情報等提供に関しても、算定の有無にかかわらず年12回以上の実績が求められることになりました。ただし、認定研修薬剤師が地域の多職種連携会議に回以上参加するか、のどちらかを満たせばいいとなります。

ハードルは上がったというか増えただけでこれくらいなら点数アップの恩恵の方が上回りそうですね。

調剤基本料1以外の薬局では、多職種連携会議参加要件が追加されましたが、これまでの①~⑧と合わせて9つの要件のうち8つがクリアできればいいですよ、ということになりました。つまり、今までの①~⑧のうちどうしてもきついものがあれば、今回新設の⑨がクリアできればOKとしてあげます、ということです。

経過措置期間についてですが、調剤基本料1を算定する薬局は1年間の経過措置がありますが、調剤基本料1以外の薬局ついては記載がありませんので、次の4月から適用されることになります。

 

② 薬局における対人業務の評価の充実(目玉!)

概要:

1.服用薬剤調整支援料について、6種類以上の内服薬が処方されている患者からの求めに基づき、患者が服用中の薬剤について、重複投薬等の状況を含めた一元的把握を行い、処方医に重複投薬の解消に係る提案を行った場合の評価を新設する。(「Ⅱ-1-③」を参照) 
2.患者のレジメン(治療内容)の情報を活用し、患者への副作用対策の説明や支持療法に係る薬剤の服薬指導等を実施するとともに、調剤後に電話等により服薬状況、抗悪性腫瘍剤の副作用の有無を確認し、その内容を文書等により医療機関に情報提供した場合の評価を新設する。(「Ⅱ-7-1-⑥」を参照) 
3.服薬情報等提供料について、医師の指示による分割調剤を実施する際に処方医に情報提供を行う場合、分割回数で除した点数ではなく、通常の点数(30 点)を算定できることとする。 
4.喘息等の患者について、医師の求めなどに応じて、吸入薬の使用方法について、文書での説明に加え、練習用吸入器を用いた実技指導を行い、その指導内容を医療機関に提供した場合の評価を新設する。 (新) 薬剤服用歴管理指導料 吸入薬指導加算 30
5.経管投薬が行われている患者が簡易懸濁法を開始する場合について、医師の求めなどに応じて薬局が必要な支援を行った場合について新たな評価を行う。 (新) 経管投薬支援料 100
6.地域において医療機関と薬局が連携してインスリン等の糖尿病治療薬の適正使用を推進する観点から、医師の求めなどに応じて、地域支援体制加算を届け出ている薬局が調剤後も副作用の有無の確認や服薬指導等を行い、その結果を医師に情報提供した場合について新たな評価を行う。 (新) 薬剤服用歴管理指導料 調剤後薬剤管理指導加算 30
7.薬剤服用歴管理指導料について、同一薬局の利用推進及び対物業務から対人業務への構造的な転換の観点から、以下の見直しを行う。(「Ⅱ-1-⑤」を参照) 
(1)薬剤服用歴管理指導料の点数が低くなる規定について、再度の来局の期間を「原則6月以内」から「原則3月以内」に短縮するとともに、対象を調剤基本料1以外にも拡大する。 
(2)医療機関と薬局が連携による残薬への対応を推進する観点から、お薬手帳による医療機関への情報提供を推進する規定を要件に追加する。
(3)医療機関等から薬局への連絡を円滑に行うため、患者が普段利用する薬局の名称をお薬手帳に記載するよう患者に促す規定を追加する。
(4)同一薬局の利用推進及び対物業務から対人業務への構造転換の観点から、評価を見直す。
 8.対物業務から対人業務への構造的な転換を進めるため、内服薬の調剤料について評価を見直す。
 

点数:

3.(分割調剤)服薬情報等提供料1枚の処方せんにつき30点 ⇒ 1回の提供ごとに30点

4.(新) 薬剤服用歴管理指導料 吸入薬指導加算 30

5.(新) 経管投薬支援料 100

6.(新) 薬剤服用歴管理指導料 調剤後薬剤管理指導加算 30

8.調剤料 内服薬(浸煎薬及び湯薬を除く。)(1剤につき)

イ 14日分以下の場合

  1.  7日目以下の部分(1日分につき) 5点 ⇒ 7日分以下28
  2.  8日目以上の部分(1日分につき) 4点 ⇒ 8日分以上14日分以下55

ロ 15日分以上21日分以下の場合67点 ⇒ 64

ハ 22日分以上30日分以下の場合78点 ⇒ 77

ニ 31日分以上の場合86点  ⇒ 86

要件など:

4.喘息又は慢性閉塞性肺疾患の患者であって吸入薬の投薬が行われているものに対して、患者若しくはその家族等から求めがあった場合であって、処方医に了解を得たとき又は保険医療機関の求めがあった場合に、患者の同意を得た上で、文書及び練習用吸入器等を用いて、必要な薬学的管理及び指導を行うとともに、保険医療機関に必要な情報を文書等により提供した場合に、吸入薬指導加算として、3月に1回に限り30点を所定点数に加算する。

5.胃瘻若しくは腸瘻による経管投薬又は経鼻経管投薬を行っている患者若しくはその家族等から求めがあった場合であって、処方医に了解を得たとき又は保険医療機関の求めがあった場合に、患者の同意を得た上で、簡易懸濁法による薬剤の服用に関して必要な支援を行った場合に初回に限り算定する。

6.地域支援体制加算を届け出ている保険薬局において、インスリン製剤又はスルホニルウレア剤(以下「糖尿病治療薬」という。)を使用している糖尿病患者であって、新たに糖尿病治療薬が処方されたもの又は糖尿病治療薬に係る投薬内容の変更が行われたものに対して、患者若しくはその家族等から求めがあった場合であって、処方医に了解を得たとき又は保険医療機関の求めがあった場合に、患者の同意を得て、調剤後も当該薬剤の服用に関し、電話等によりその服用状況、副作用の有無等について患者に確認し、必要な薬学的管理及び指導(当該調剤と同日に行う場合を除く。)を行うとともに、保険医療機関に必要な情報を文書等により提供した場合には、調剤後薬剤管理指導加算として、1月に1回に限り30点を所定点数に加算する。

 

解説:<調剤料を減らして、対人業務への評価へシフト>

 4. 「吸入薬指導加算」はまず喘息とCOPDに限られました。イナビルの吸入指導では算定できないようです。また処方医の指示又は了解が必要なため、主な処方せん発行元医療機関の医師に予め「吸入薬指導をお願いします」などのコメント記載をお願いしておくといいでしょう。また、吸入指導後の医師への報告に関してはフォーマットを作成しておいた方がいいでしょう。

また「練習用吸入器」は現在使っている「説明用見本」でいいのか、患者さんが直に口をつけて吸入力を試すことができるようなものでないといけないのか、3月の説明会待ちです。※直に口をつけるものでないといけないとなると、メーカーがそれ用のキットを作成しないといけないし、患者の数だけキットが必要となりますので難しいところですね。

5.「経管投薬支援料」は胃瘻・腸瘻・経鼻経管投薬を行っている患者さんに、初回のみ簡易懸濁法の指導を評価しますよ、という内容です。在宅をやっていてもそんなに頻繁に胃瘻・腸瘻・経鼻経管投薬を行う患者さんにはあたらないのではないでしょうか。100点という点数は魅力ですが、今回の改定で「増収」につながるというよりは、今後の対人業務の評価増につながるような点数だと思います。

6.「調剤後薬剤指導加算」は糖尿病患者における低血糖症状の発現を防止するために薬局薬剤師の活躍を期待するといった内容のようです。低血糖防止のためなので薬剤はインスリンと、SU剤に限定されています。処方医の指示又は了解の下、後日電話などで服薬状況や副作用発現有無などを確認し必要な指導を行い、医療機関に文書でフィードバックすることで、1月に1回算定できます。60日処方だとすると、調剤当日に薬歴管理指導料(+特定薬剤管理指導加算1)を算定し、3w後くらいに電話し状況確認し指導、さらに3w後くらいにも電話確認指導をすれば次回来局時に2回分算定できるということになるのでしょうか、、、実施日と算定日のタイムラグが生じるのでこれも3月の厚労省の説明会待ちですね。

8.「調剤料」はこれまでも色々話が出ていた通りになりました。例の『0402通知』以降、薬剤師でなくてもできる対物業務には点数はつけない、と言われ、一方で保険薬局の利益の半分以上を占めている調剤料を減らすのは慎重に、という声もあり、今回はこの点数で落ち着いたということでしょう。私の予測では次回改定ではさらに減点されていくと思います。(もしくは一包化加算などを減点していくとか、「1剤につき」というところにメスを入れるか?)

ただ、今回の改定では6,7日分、13,14日分の処方のみ減点となりますが、1~5日分、8~11日分までだと調剤料が増えることになります。自店のレセコンで調剤料集計のような帳票を出してみて増減をシュミレーションしてみると面白そうですね。(当番医などではやや増収が見込めますね。)

近いうちにこのブログでもメディコムレセコンでの調剤料シュミレーションについて取り上げたいと思っています。メディコムのレセコンでは7日分以下、14日分以下、・・・というような区分でしか集計できないので、14日分以下の内服調剤料の日数別の増減シュミレーションはできなそうです。ほかのレセコンなら日数別の集計ができるのかなぁ…

 

③ 調剤基本料の見直し

概要:

1.特定の医療機関からの処方箋受付割合が95%を超える薬局について、処方箋の1月あたりの受付回数が1,800回を超える場合を調剤基本料2とし、また、同一グループ内全体で3.5万回を超える場合を調剤基本料3イとする。

2.調剤基本料について、同一患者から異なる医療機関の処方箋をまとめて複数枚受け付けた場合、2回目以上の受付分については所定点数の100分の80に相当する点数を算定する。(Ⅱ-1-⑤参照)

3.特別調剤基本料について、特定の診療所との不動産取引等その他の特別な関係がある診療所の敷地内薬局(同一建物内に診療所がある場合を除く。)を対象に追加する。さらに、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合の基準を引き下げ、点数も引き下げる。

4.いわゆる同一敷地内薬局の調剤基本料について、かかりつけ機能に係る基本的な業務を実施していない場合の要件を見直す。

点数:

調剤基本料1 42点 ⇒ (変更なし)

調剤基本料2 26点 ⇒ (変更なし)

調剤基本料3イ 21点 ⇒ (変更なし)

調剤基本料3ロ 16点 ⇒ (変更なし)

特別調剤基本料 11点 ⇒ 

未妥結・非かかりつけ減算 100分の50 ⇒ (変更なし)

(新)複数医療機関同時受付 100分の80(2回目以降の受付)を算定

後発医薬品減算(20%以下) ▲2点 ⇒ 40%以下) ▲2点

要件など:

【調剤基本料1】

調剤基本料2、3ーイ、3ーロ、特別調剤基本料以外 (医療資源の少ない地域にある薬局は、処方せん集中率の状況等によらず、調剤基本料1)

【調剤基本料2】 次のいずれかに該当

①処方せん受付回数が月4,000回超+処方せん集中率70%超 ⇒ (変更なし)

②処方せん受付回数が月2,000回超+処方せん集中率85%超 ⇒ (変更なし)

③いわゆる医療モール内の医療機関からの処方せん受付回数の合計が月4,000回超 ⇒ (変更なし)

(新設)処方せん受付回数が月1,800回超+処方せん集中率95%超
【調剤基本料3】
※ 特別調剤基本料に該当する場合は、特別調剤基本料を優先

<イ>(21点)

(現行)同一グループ薬局による処方せん受付回数が月4万回超40万回以下で、次のいずれかに該当 ①処方せん集中率85%超 ②医療機関との間で不動産の賃貸借取引:有

⇒次のいずれかに該当

  1. (新設)同一グループ薬局による処方せん受付回数が月3.5万回超4万回以下 & 集中率95%超
  2. 同一グループ薬局による処方せん受付回数が月4万回超40万回以下 & {集中率85%超 or 医療機関との間で不動産の賃貸借取引:有}(変更なし)
<ロ> (16点) ⇒ (変更なし)
同一グループ薬局による処方せん受付回数が月40万回超で、次のいずれかに該当 ①処方せん集中率85%超 ②医療機関との間で不動産の賃貸借取引:有
【特別調剤基本料】 11点 ⇒ 
(現行)病院と不動産取引等その他の特別な関係:有+集中率95%超 
保険医療機関不動産取引等その他の特別な関係:有+集中率70%超
非かかりつけ減算回避要件】
(現行)4に掲げる業務(かかりつけに関する業務)を合計10回算定した場合には、算定回数を満たした翌月より薬剤師のかかりつけ機能に係る基本的な業務を実施していない保険薬局とはみなさない。
4に掲げる業務(かかりつけに関する業務)を合計10回(特別調剤基本料を算定する薬局においては合計100回算定した場合には、算定回数を満たした翌月より薬剤師 のかかりつけ機能に係る基本的な業務を実施していない保険薬局とはみなさない。
 

解説:<ますますチェーン薬局&門前薬局に厳しく!>

今回の改定では調剤基本料の点数にはあまり手を付けず、集中率の高い門前薬局やかかりつけ機能を果たさない薬局により厳しい改定となりました。

在宅患者訪問や地域医療の基幹薬局としての取り組みを行わない薬局は、じわじわと利益を削られていきます。

調剤基本料1以外をまとめると次のようになるかと思います。

f:id:ashomopapa:20200208230659p:plain

調剤基本料まとめイメージ

 

★大事なこと★

集中率については、95%、85%、70%というのがポイントですが、さらなる線引きを予測していた方がいいかもしれませんね。経営のことを考えれば次回改定で低い点数にならないようにということを考えておかなければいけません。

たとえば、4,000回超70%超 ⇒ 3500回超70%超 となるかもしれませんし、4000回超60%超となるかもしれません。また、5000回超65%超などが新設されるかもしれません。

現在調剤基本料1を算定できている薬局は、要件が厳しくなっても調剤基本料1を算定できるように次の2年間で準備しておかないとですね。

 

その③に続きます…

 

薬局長目線でポイント解説③

その③の内容・・・・

【Ⅱ-11 医療におけるICTの利活用】

⑤情報通信機器を用いた服薬指導の評価

【Ⅲ-3 質の高い在宅医療・訪問看護の確保 】

⑯ 患者の状態に応じた在宅薬学管理業務の評価

【Ⅳ-1後発医薬品やバイオ後続品の使用促進】

①薬局における後発医薬品の使用促進

【Ⅳ-6 医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用の推進】

② 入院時のポリファーマシー解消の推進<医科>

 

薬局長目線でポイント解説①

その①の内容・・・

【Ⅰ-4 業務の効率化に資するICTの利活用の推進 】

②情報通信機器を用いたカンファレンス等の推進

【Ⅱ-1 かかりつけ機能の評価 】

③ 外来患者への重複投薬解消に対する取組の評価

④ かかりつけ薬剤師指導料等の評価

⑤ 同一薬局の利用推進

【Ⅱ-7-1 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価】

④ 質の高い外来がん化学療法の評価<医科>

⑥ がん患者に対する薬局での薬学的管理等の評価

 

 

【ダウンロード】薬価引下げ率リスト

前回は薬価改定に伴い、「在庫絞るリスト」の作成について考えました。

 

このサイトに辿り着いたみなさんの中には、「そんなことより、手っ取り早く薬価がどうなるのかの一覧が欲しい!」という人も多いでしょう。

 

ということで、次のリンク先からExcelファイルをダウンロードしてください。

  

2019年10月薬価改定率リスト

※Microsoft の onedrive を利用しています。ブラウザでExcel様式のファイルが開きますので、ツールバーにある「ダウンロード」ボタンでお使いのPCにダウンロードしてください。(Windowsの場合ダウンロードフォルダに保存されていると思います)

ダウンロードしたファイルは「編集を有効」にすれば加工ができます。

 

みなさんの薬局で採用している採用品リストから医薬品コード(9桁数字)をSheet2のA列に貼り付ければ一覧の医薬品コード列に色が付きます(条件付き書式設定をしています)。

医薬品コード列の▼マークで「セルの色で並べ替え」を選択すれば、あなたの薬局の採用品のみの薬価改定リストができあがります」

 

更に改定率のフィールドには1.8%以下(買い溜め推奨)の品目のフォントに色をつけています(条件付き書式)ので、ここでも「セルの色で並べ替え」または「昇順に並べ替え」「降順に並べ替え」などで利用しやすいように加工してみて下さい。

 

元記事はこちら

pharmalabo.hatenablog.com

 

新薬価告示!!在庫絞るべきリスト

2019年10月から適用される新薬価が、8月19日に告示されました。予想していた9月5日前後より半月以上も早かったのでびっくりしています。

 

今回の薬価改定は19年10月1日の消費増税に対応するものなのですが、普通に考えれば1.85%(=1.10÷1.08)の増額にすればいいのですが、長期収載品や後発医薬品の薬価をまず引き下げてから増税対応するなどの措置があり、結果的に薬価が上がるもの、変わらないもの、下がるもの、大幅に下がるものなどがあります。

 

薬価改定以外にも10月に診療報酬も一部改定されるのですが、こちらのブログが大変参考になります。

pharmacist.hatenablog.com

 

ここでは、皆さんが日常業務で知りたい「結局、どの品目の在庫を絞んなきゃいけないの?」にお応えするべく、在庫絞るべきリストを紹介します。

 

まずは新薬価一覧の入手から

私が薬価データを得るために利用しているサイトはこちらです。

ここにある「医薬品マスター」をクリックしてZIPファイルをダウンロードすると、「y」というシンプルなファイル名のCSVファイルがあります。

CSVファイルなので、すぐにExcelで活用できるので重宝しています。

(8月19日に告示された薬価ですが、このサイトにデータが掲載されたのが23日でした)

 

通常の薬価告示は、例えば亜鉛華軟膏とか酸化マグネシウムなどは「10g」でいくら、となっているのですが、 このデータの素晴らしいところは全て「1g」単位となっていることなんです。

 

利用するのは、

C列:医薬品コード(私はレセ電コードと呼んでいます)

E列:医薬品名・規格名(告示名よりも丁寧)

  • 告示名称:ベイスン錠0.2
  • 医薬品名・規格名:ベイスン錠0.2 0.2mg

L列:新薬価

Y列:旧薬価

AF列:薬価基準コード(厚労省コードともいう)※YJコードではないので注意!

また、AC列がすべて空欄のため、うっかりリストを並べ替えすると医薬品名と薬価基準コードがバラバラになる事にも注意が必要ですね。

 

リストから必要箇所をコピーし、加工する

次に、データ活用していきます。

上述の5項目を利用したいので、各列を選択(「Ctrl」を押しながら列タイトルを順にクリック)し、新しいブックにコピペします。

1行目にタイトル行を挿入し、項目名を入力して、列幅を整えておきましょう。

 

F列に「薬価引下げ率」というフィールドをつくります。

F1セルに「薬価引下げ率」と入力します。

F2セルに以下の数式を入力します。

 =(D2-C2)/D2 …(薬価が上がる場合はマイナス表示)

書式設定で「%」、「小数点以下桁数増」で整えます。

f:id:ashomopapa:20190825215254p:plain

F2セルのフィルハンドルをダブルクリックすれば、最下行まで数式がドラッグされます。 これで「薬価引下げ率リスト」の出来上がりです。

 

採用品目と10月以降の使用量見込みを確認

各薬局で採用している在庫システムから「採用品在庫一覧」のようなリストをExcel又はCSVファイルで抽出します。

上の「薬価引下げ率リスト」のG列などにさらにフィールドを追加していきます。

G列:採用品

H列:使用量

 

G列にはVLOOKUP関数またはCOUNTIF関数で、医薬品コードまたは医薬品名を基準にして、「採用品在庫一覧」ファイルから当該薬品が採用されているかを検査します。

※薬価基準コードはユニークではない(一つのコードが複数の医薬品に割り当てられていることがある)ので、検査の基準にしてはいけません

 

VLOOKUP関数を使う場合

 =IFERROR(VLOOKUP(医薬品コード,検査対象のセル範囲,1,0),"")

 ⇒ 採用されていれば医薬品コードが表示、採用されていなければ空白

 

COUNTIF関数を使う場合

 =COUNTIF(検査対象のセル範囲,医薬品コード)

 ⇒ 採用されていれば「1」、採用されていなければ「0」

 ただし、採用品在庫一覧がJANコード単位など、同じ医薬品に対して複数行記載されている場合はその行数を表示します。

 

  • 医薬品コード:医薬品コードのセルを選択します、医薬品コードが「採用品在庫一覧」に項目がなければ、医薬品名でも構いません(告示名ならNG)
  • 検査対象のセル範囲:「採用品在庫一覧」の中の医薬品コードの列全体を指定、または上の関数で医薬品コードではなく医薬品名を使った場合は「医薬品名」の列を選択

 

H列にも同様に、使用量を検査します。

まず「採用品在庫一覧」のリストの中に「使用量」や「処方量」などの列があることを確認してください。さらに、それは何か月分か?も確認しましょう。

 

VLOOKUP関数を使う場合

 =IFERROR(VLOOKUP(医薬品コード,検査対象のセル範囲,列数,0),"")

  • 検査対象範囲:「採用品在庫一覧」の中の医薬品コード~使用量までの列を選択
  • 列数:医薬品コード列を1列目として、使用量列までの列数

※検査対象範囲は必ず検査の基準である「医薬品コード」列から指定するのが掟です

※JANコード単位など一つの医薬品につき複数行がある場合は使えません

 

SUMIF関数を使う場合

 =SUMIF(在庫一覧の医薬品コード列,医薬品コード,在庫一覧の使用量列)

※JANコード単位など複数行あっても該当する医薬品の使用量を合算して表示できます

 

使用量見込みで在庫絞るかを判断

9月末まで在庫を絞るか、買い溜めしておくかについては以前の記事でも書きました。 

pharmalabo.hatenablog.com

結論としては、10月の薬価引下げ率 が、

  • 「1.8%以上」なら在庫を絞る
  • 「1.8%以下」または「薬価引上げ」ならなるべく多く在庫する

ということでした 。

 

今回は絞る目安と買い溜めする目安を考えます。

 

既に厚労省から「買い占めなどをしないように」とお達しが出ていますので、あくまでも良識の範囲でということでお付き合いください。

 

在庫を絞るのは、患者の来局を見込んで欠品しないようにできるだけ発注を「我慢」することに尽きます。

 

対して、在庫を多く持つことに関しては、単純に〇ヶ月分を9月に発注するかを本部指示かなんかで示せばいいでしょう。

ただ、低薬価品をチマチマ買い溜めしても、増税対策の効果は限定的です。逆に、棚卸前に在庫を増やすことで管理コスト(手間)をむやみに増やすことにもなりかねません。

なので、どの品目をどの程度備蓄するか、が重要です。

 

(0.018 - 薬価引下げ率)x 現薬価 x 買い溜め数量 = 増税対策効果 …①

 

となります。「増税対策効果」と表記しましたが、10月以降に仕入れた場合はその分だけ仕入れ値が高くなるということでもあります。

一方、薬価引下げで在庫価値の目減りについては、

 

(薬価引下げ率 - 0.018 )x 現薬価 x 9月末在庫数量 = 在庫価値目減り …②

 

となります。実際は未来の在庫を把握するのは難しいので、現時点での在庫数量を9月末の在庫数量に置き換えて試算してみるといいでしょう。 

 

f:id:ashomopapa:20190829004223p:plain

201910薬価改定影響

 私の薬局の在庫データで試算してみたのが上図です。

採用していれば在庫が生じているでしょ、ということで採用品のところを「在庫数」としました。「使用量」は直近3か月間の値を入れて、「影響額」は上の①式をベースにして買い溜め数量を使用量以上の包装単位数量としてみました。

って、意味わからないですよね。(日本語って難しい…)

上図で1行目にある「サーティカン錠0.25mg」で説明すると、まず3か月使用量は140となっています。一方この薬品の包装容量は60錠包装です。つまり60錠包装で140錠以上となるのは180錠ですよね。Excel関数でこの数値を求めています。使うのはCEILING関数です。

 CEILING関数とは、「指定された基準値の倍数のうち、最も近い値に数値を切り上げる」もので、CEILING(数値、基準値)と引数を入れます。

上図の「サーティカン錠0.25mg」の場合は、

=CEILING(140 , 60 )= 180 を買い溜め数量としました。

 

この試算で薬価引下げによる在庫金額の目減りと、買い溜めによる在庫金額のアップを合計すると約3万円のプラスとなりました。

 

このように関数を利用すると、買い溜めするといくら増税対策に貢献するのかがきりわかります。

ただ、薬価差の小さいものまで買い溜めしても大した効果はないので、プラスの影響額が上位30品目のうち、薬価が100円以上のもので、フィルタをかけると18品に絞り込まれました。そして、影響額はなんと117千円もあります。(上図 赤〇) 

 

約3万円のプラスを享受するために買い溜めする金額を見ると、この18品目に絞っても約437万円(現薬価ベース)ありました。

 

薬価引下げになる品目である程度在庫金額は押さえられるとは言え、400万円の在庫を抱える勇気があるかどうか。という問題になりそうですね。

数字の上では、使用見込みがあるのであれば、引き上げ対象品については在庫を抱えるべきなのですが…

 

私の薬局では、今回のような年度途中に、消費増税があり、引下げを含む薬価改定なんかはそう経験できないイベントと位置付けて、約400万円の備蓄にトライしてみようかと思っています。

 

みなさんの薬局ではどうしますか?

 

 薬価引下げ率リストを上記の手順に則って作成しました。

※元データは厚労省が管理する「診療報酬情報提供サービス」からなのでご安心ください

pharmalabo.hatenablog.com

 

 

地域支援体制加算を算定している薬局は、お盆休みをとっていいか?

天下の日経DI ONLINE に目を疑う記事が掲載されていたので、びっくりしてこの記事を書いています。

 

medical.nikkeibp.co.jp

 

この記事の中では、地域支援体制加算の算定に係る開局時間に関する要件として、

国民の祝日に関する法律」第3条に規定する休日を含む週は、「週45時間以上開局」の“カウント外”ですので、今年に関して言えば、8月11日(日・祝)を含む週に、同加算を算定している薬局がお盆休みを取っても何ら問題ないことになります。

 と記されています。

 

「何ら問題ない」という言葉にビックリしました。

 

地域支援体制加算の前身である基準調剤加算についての2016年3月の疑義解釈資料では、

(問18)基準調剤加算の算定要件に「当該保険薬局の開局時間は、平日は1日8時間 以上、土曜日又は日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、かつ、週 45時間以上開局していること」とあるが、祝日を含む週(日曜始まり)につい ては、「週45時間以上開局」の規定はどのように取り扱うのか。
(答)国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)第3条に規定する休日並びに 1月2日、3日、12月29日、12月30日及び31日が含まれる週以外の週の開局時間で 要件を満たすか否か判断すること。

とあります。

 

つまり、日~土の間で祝日がある週については、週45時間の規定は適用しないということです。それでも平日は8時間以上の開局が要件であることに変わりはありません。

それなのに「何ら問題ない」とは、、、

 

さらに言えば、仮に、「何ら問題ない」として、次のような記述も気になります

地域支援体制加算に話を戻すと、今年は要件に該当しませんでしたが、社会全体が働き方改革を進めている中で、お盆休みすら取ることができない、そもそもの算定要件がおかしいと個人的には感じています。

 「今年は要件に該当しませんでした」とあるのは、週の始まりが月曜日と認識しているからなのでしょうか。だとすると、それも算定要件の考え方とは相違しています。

 

働き方改革を持ち出して、薬局にはお盆休みがあってもいいじゃないか!といいたいようですが、勿論休みたければ休めばいいでしょう。

ただ、そんな薬局は地域支援体制加算の算定をしなければいいだけの話です。

 

珍しく何を言いたいのかさっぱり分からないコラムだったので、慌てて記事を書いてみました。

薬局の不正は大手調剤薬局・ドラッグストアだけの問題か??①

今年も保険薬局が関係する「不正」問題がネットを賑わせてしまってますね。

 

以前、【医療用医薬品の不正販売】として記事を掲載しましたが、今回はより本質的な部分を考えてみたいと思います。

 

 

1)薬歴管理料の不正請求と虚偽報告について

まずはこちら、

アポロメディカルHD 薬歴改ざんで調剤報酬不正請求 アルフレッサHD子会社 | ニュース | ミクスOnline

 

このアイランド薬局ほくしん店の薬局機能情報を見ると、昨年の処方せん応需数は27,458人となっています。また、薬剤師数は4人とのことです。

主な処方せん応需元は隣接する内科胃腸科クリニックで、診療日は月~土で、木土は午前のみの診療です。

年間の診療日が約280日として、単純に1日約100枚の処方せん応需となります。

薬剤師が処理すべき薬歴は1日25件ということになりますが、記事では介護施設の管理も行っているという記載もあり、外来7割、施設3割くらいだとすると、1日100枚のうち外来70枚、施設30枚、月間にすると外来1750枚、施設750枚程度と考えられます。割と忙しい薬局と窺えます。

 

さてこの薬局が、18年6月に個別指導を受けて、①薬歴未記載にもかかわらず薬歴管理指導料を算定していた、として自主返還(約5年分)を求められ、さらに返還対象となる未記載の薬歴に、②電子薬歴の日付を操作するなどして薬歴を書き足すなどの改ざんをして、③厚生局へ虚偽の報告を行っていた、ことが問題とされています。

 

一連の不正の中で一番の問題は何なのでしょうか?

【未記載になる原因】

そもそも、なぜ薬歴未記載が発生したのかを考えてみます。

記事では、約5年間で660万円の返還が必要と管理薬剤師が試算したとあります。

返還額はレセプト請求額となりますので、1件410円のうち、自己負担割合の平均が1.5割程度と仮定した場合、6,600,000÷(410x0.85)=17,000件、1年あたり3,400件、1か月あたり283件、薬剤師1人1か月あたり70件の未記載があった計算になります。

 

面展開の1人薬剤師のドラッグストアならともかく、月間2000枚の処方せんを応需する薬局で毎月毎月300件近い薬歴未記載が外来患者であったとは思えません。薬歴がないと次の服薬指導がままならないからです。

おそらく、介護施設のうち介護保険の居宅療養管理指導の対象としていない、いわゆる「外来扱い」の施設に対して、未記載を続けてきたと考えるのが普通でしょう。

 

薬歴未記載の原因は、恐らく本部が営業成果として”獲ってきた”介護施設の調剤に、外来処方せん枚数以上の労力を要する上、外来応需もそこそこの忙しさがあり、

往診同行⇒処方せんチェック⇒調剤(一包化・粉砕)⇒配薬準備(薬局内)⇒お届け・配薬(施設)⇒担当者への伝達・持参薬チェック・他科受診確認⇒薬局に戻るとすぐに外来対応、、、

の無限ループだったのではないでしょうか??

 

多くの場合、施設ごとに担当薬剤師が決まっているので、薬歴を書かなくても次回処方の際に前回までの流れを把握できているので、それほど調剤に支障が出ないということも、施設薬歴を後回しにしてしまい、他の薬剤師も状況は同様だったりするので、他人の未記載薬歴を指摘することができない状況だったのでしょう。

 

つまり今回の問題発生の本質は、施設調剤についての調剤~薬歴記載までのオペレーションの不備であり、それを確認せずに”施設を獲得”してくる本部の無能が問題の本質、と見ることができます。

(以下の記述は、このことを前提にした記述ですのご了承ください)

 

【自主返還にあたり電子薬歴を改ざん】

660万円の自主返還、との報告を受けた会社幹部は社長(故人)に報告し「何とかしろ」という旨の指示を受けたことで改ざんが始まったようです。

前述リンク先の記事によると、15,304件に改ざんが判明したとのことです。

つまり返還対象と管理薬剤師が確認した17,000件のうち90%超に手を加えたということです。その改ざんの内容については

  • 未記載となっていた薬歴データに過去の服薬指導時のメモなどを見ながら薬歴データを作成し、日付を過去のデータに改ざんした
  • レセプトの提出期限を越えて記載していた薬歴データを、請求期限内の日付に改ざんした
  • 薬歴の日付や新たな情報を追加し、薬歴の内容も改ざんした

等が確認されているという。

 

ある薬剤師会幹部の方は、「電子薬歴の日付操作」に対してなんてことをしてくれたんだ!と大変憤っていました。

 

自主返還金額を過少報告することは別に珍しくも何ともありません。

ただそのやり方として、薬歴の改ざんを指示したのはいただけないですね。有印私文書偽造・改ざんなどにも該当するリスクもあります。

ここでも、会社幹部のの危機管理のセンスが悪かったようです。

 

 

厚生局へ虚偽の報告

薬歴を改ざんした結果、自主返還は244件、約10万円となったそうです。

厚生局も本質は審査(捜査)機関ではないので、そのまま受理したことでしょう。

この件の関係者の誰かが、良心の呵責に耐えられず報道機関にリークしたようです。

親会社のアルフレッサHDは、「(内部通報制度はあったが)通報されないまま、こうなったことは一番課題にしなければならない」と語ったそうです。また、管理薬剤師から何らかの意見具申が行われた形跡もなかったという。

 

さてみなさんは何が一番問題だと思いますか?

 

私は、最初の段階で会社が店舗のオペレーションに対して責任を持った上で、施設調剤を獲得してくるべきと考えます。そこさえちゃんとしていれば、あとは制度への対処の方法を会社として学べば済むことです。

それを親会社のアルフレッサHD(医薬品卸国内最大手)の社長は、「内部通報制度が活用されなかったこと」が一番の課題と捉えているそうです。現場を知らないおバカな発想ですが、超大企業のトップなら仕方がないところでしょうか。

 

あなたの薬局は大丈夫?

さて、今回の件では電子薬歴の改ざんという禁じ手の中の禁じ手を使ったことも企業ガバナンス上の大きな問題ですが、問題の本質は、現場を回すための努力と、営業さえすればいいという本部の意識との乖離にあります。(各メディアで大きく取り上げられたのは超大企業の傘下の薬局での出来事だからです)

あなたは、あなたの薬局やグループ店舗では施設調剤の薬歴未記載が絶対ないと断言できますか?

あなたの会社の幹部たちは、各店舗がどのようなタイムスケジュールでどのようなオペレーションで動いているかをしっかり把握していますか?

あなたの会社の幹部たちは、薬局長(管理薬剤師)に責任をただ押し付けてはいませんか?

ほら、他人事ではないような気になってきましたね。。。

 

よその会社に「襟を正せ」とかいう前に、「人の振り見て我が振り直せ」ですよ。。

 

 

 

登録販売者試験 最強対策サイト コンテンツ完成!!

今年も間もなく登録販売者試験が各地で始まる季節になりました。

約2年がかりで最強対策サイトのコンテンツを執筆してきましたが、ようやく全範囲のコンテンツが仕上がりました。(H21~29年の過去問を網羅しています)

このサイトでは、過去問を完全分析して過去に出題されている箇所のうち概ね3回(3年)以上出題された項目のみを解説しています。

また実際の出題文も掲載し、「どのように出題されるか」も合わせて確認できます。

このサイトを上手に活用して、合格を目指してください!!

 

試験日によってはもうすでに追い込みの時期に入っている人もいると思います。

ここからは試験日までの日数と現時点での自分の実力に応じて、勉強方法を変えていく必要があります。

追い込みにはこちらのページも参考にしてください。

pharmalabo-touhan.hatenablog.com

居宅療養管理指導における「単一建物居住者」 処方元が複数の医療機関の場合…

グループ店舗の薬局長の間で話題になったことを、書いてみますね。

 

在宅業務に積極的な当社は各店舗がそれぞれ個人在宅はもちろん、介護施設居住者の調剤を担当させてもらっています。

 

会社から売上げを上げろ、単価を上げろ、GEの率は下げるな、と言われたある薬局長がGE率を下げずに単価を上げる方法として目を付けたのが、単一建物居住者の解釈の見直しでした。

 

介護報酬では、同じ建物に居住する患者に対して居宅療養管理指導を実施した場合の報酬については、その人数に応じて減算する規定となっていました。

平成30年の改定から居宅療養管理指導の算定要件が変更となり、「同一建物居住者」という概念から「単一建物居住者」という概念に基づいて当該指導費を算定することとなりました。

つまり、同じ日に指導を行った同じ建物に居住する患者の人数、から、同じ月に指導を行った同じ建物に居住する患者の人数で算定する点数を判定することになっています。

現在は、
単一建物居住者が1人⇒507単位
単一建物居住者が2~9人⇒376単位
単一建物居住者が10人以上⇒344単位 となっています。

 

その薬局長は知り合いなどから、とある県では単一建物居住者を「処方元医療機関ごとに数える」ことになっているという情報を得たようです。

 

例えば、同じ施設に居住する12人の患者に対して、月2回居宅療養管理指導を実施していて、処方元の医療機関は3つあるとします。

A医療機関の患者は1人、B医療機関の患者は6人、C医療機関の患者は5人とすると、この数え方を変更することでどれだけ算定点数に差が出るでしょうか。

 

現行 12人 x 344単位 x 各2回 = 8,256単位

解釈を変更すると、

 ( 1人 x 507単位(A) + 6人 x 376単位(B) + 5人 x 376単位(C) )x 各2回

 =  1,014単位+4,512単位+3,760単位 = 9,286単位

差は1,030単位(=10,300円)です。解釈の変更だけで毎月1万の増収となります。

 

もしこの解釈が問題ないとしたら、いいところに目を付けた!となりますが、果たして本当にいいのでしょうか。

 

厚生局に聞いてみる?

薬局長は自分の役割を果たそうと、知り得た情報を会社にぶつけて可否の判断を仰ぎました。それに対して会社は、確かにそういう県があるようだ、という回答を薬局長会議で披露しただけでした。

ご存知の通り、算定要件の解釈・運用については都道府県ごとに違いがあり、他の県ではそれでいいらしいので本県でもOK、は通用しないことも多々あります。

会社の担当者に、本県での解釈・運用はどうなっているのかを確認すべきと進言したところ、オフィシャルには確認できず、市薬剤師会理事、国保審査担当者の私的な見解としての回答を得たということでした。

 

【回答要旨】

とある県での事例は、指導担当者の解釈の違いによるグレーゾーンではないか

 

他県の指導担当者を安易に否定するわけにはいかない、という内情がビンビン伝わる内容ですね。

さらに、市薬剤師会理事においては、現時点では行政(厚生局や市役所介護課など)への問い合わせは見合わせてほしい(するな)というおまけ付きでの回答だったようです。

 

どの部分の解釈が???

ここまで、解釈の変更だの、解釈の違い、などと続けてきましたが、いったいどの通知のどの部分をどのように解釈しているのか、気になりますよね。

厚生労働省の改定説明文書のうち下記の部分の話のようです。

f:id:ashomopapa:20190327182805p:plain

上図で「医師が行う場合」を引き合いに、医師(医療機関)ごとに単一建物居住者数をカウントする、という解釈する指導担当者がいるようなのです。

 

そんな、アホな⁉

そんなアホな…と思ったあなたはいたって常識人です。

介護報酬改定のQ&Aその1の問4②で

② 同じマンションに、同一月に同じ居宅療養管理指導事業所の別の医師がそれぞれ別の利用者に居宅療養管理指導を行った場合

(答)いずれの利用者に対しても「単一建物居住」複数人に対して行う場合の宅療養管理指導を算定する。

となっています。

医師が行う場合に、同じ居宅療養管理事業所(=同一医療機関)の別の医師がそれぞれ別の患者に対して実施したとしても人数のカウントは合算することになっています。

薬局薬剤師が居宅療養管理指導を実施する場合ににおいて、医師の所属によってカウントを分けていいとするには無理があり過ぎます。

 

算定したもん勝ち(やったもん勝ち)の現実

今回の件に関わらず、調剤報酬や介護報酬に関しては、ある一定のルールはあるものの、そこから逸脱した場合に矯正する手段は、レセプト審査と個別指導しかないのが現実です。

レセプト審査で対応できるのは、レセプト(診療報酬請求明細書)に記載された情報だけで判定できる内容に限定されますし、個別指導は開局1年経過時の新規個別指導が終われば、二度と指導に当たらないことだってあります。

つまり、明らかに不可とされていない解釈に基づいて算定していたとしても、咎められたり、矯正してもらったりする機会はなく、不適正な算定を続けているということは十分にあり得ることです。

 

行政当局は十分認識しているでしょうが、手が足りないというのが正直なところ。本来なら薬剤師会などがその代替として機能すべきなのでしょうが、体たらく。

 

「これはちょっとやりすぎかも」ということでも、だいたいはやったもん勝ちになってしまうのが現在の制度なのです。

 

だからこそ、私たち医療者は自ら襟を正すことを常に肝に銘じておきたいものですね。

 

 

それ本気ですか?棚卸(決算時)の在庫金額目標!!

今月末に決算棚卸を予定している薬局は多いことと思います。

私の薬局でも3月が決算期のため、毎年9月と3月に薬局の実地棚卸を実施しています。

 

1~3月は季節性の疾患が増え、特に抗アレルギー薬など比較的高薬価な薬剤が処方されるため、金額ベースでは1年で最も在庫金額が膨らむ時期です。

 

以前の記事でも述べましたが、欠品を避けて売上げを作りつつ健全な在庫とするには、在庫日数が「30日(1ヶ月分)」を下回っていれば概ね及第点となります。

pharmalabo.hatenablog.com

 

決算期はなるべく在庫を搾るに越したことはないのですが、「在庫削減ゲーム」にならないように適正在庫を維持することも管理薬剤師の責務でしょう。

 

今年(2019年)の3月は薬価改定もなく、いつもの月末より少々在庫を搾る程度のつもりでいたところ、先日会社から一方的に目標を突き付けられました。

 

「昨年3月末が在庫日数約14日だったので、今年も同程度で。」という話でした。

「え、薬価改定もないのに何言ってるの?」が私の第一声でした。

会社の担当者は数字しか見ていません。その数字が何を意味して、現場のどういう状態を表しているのか?その数字に持っていくためにどれだけの労力を要するのか?残念ながら全く理解できていません。

 

「じゃあ、あなたの店は独自目標で結構です。」なんだよ、それ。

その程度なら初めから偉そうに数字を投げてこないでください。というやり取りの末、いつも通り欠品を避けつつ無理のない範囲での在庫削減をすることに。

(おそらく最終的には20日を切るくらいになるでしょう)

 

みなさんの薬局でも、無茶な在庫削減目標を掲げて「在庫削減ゲーム」にならないようにしてください。

そこまで在庫を減らすことが何の得になるのかを、よく理解した上で行動したいものです。

 

ちなみに、私の薬局では3月26日(火)の午後に実地棚卸を予定していますが、棚卸を末日以外に実施する薬局でも在庫削減の期日は「月末」となります。

つまり、棚卸が終わったからと言って翌日に大量に発注したりすると、最終的に月末在庫が増えてしまうことになります。

 

棚卸が終わっても月末までは削減した在庫をキープしましょう。

※厳密には、卸からの請求日が切り替わるタイミングの在庫金額がminimumになるようにすればいいのですが、売上の締日とも合わなかったり色々と期間を合わせるのが難しくなるので、締日は全て月末で統一するのが一般的です。

遠隔服薬指導

2018年4月の診療報酬改定で、医科の遠隔診療が認められたことから、服薬指導が対面を義務付けられていることに異論が及び、2019年薬機法改正(予定)で遠隔服薬指導を解禁する流れとなってきました。

 

実は15年ほど前、S市のドラッグストアの調剤併設店舗から約5kmほど離れた患者さんに対して遠隔服薬指導を行ったことがあります。といっても、調剤併設ドラッグストアをアピールするための地元テレビ局の取材用にデモをしただけですが(笑)

当時画期的な「テレビ電話」機能を持った携帯電話「FOMA」を利用して、臨時のかぜ薬が処方されたという想定で遠隔服薬指導を行い、夕方の情報番組で放送されました。

それ以降は実際に遠隔服薬指導を勧めるという流れにはならず立ち消えになりましたが…

 

なぜ対面義務だったのか

 

 2014年の薬事法改正で調剤された医薬品の情報提供について新たな規定が設けられました。

第九条の三 

薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により厚生労働省令で定める事項を記載した書面(略)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。

 それまでは、「調剤された医薬品」は薬事法で定める「医薬品」には当たらないとして、薬事法においては全く規定されていませんでした。

(調剤に関することはほぼ全てが「薬剤師法」で規定されていました)

 

前職で調剤薬のデリバリー&遠隔服薬指導を開拓せよと指令を受けていた私はビックリしました。万事休すです。

 

では、なぜこのような規定ができたのか?

実は、OTCのネット販売と深く関係していることをご存知でしょうか。

薬事法では薬局・店舗販売業を許可を取得している店舗での販売しか想定しておらず、インターネットなどで注文を受ける店舗外販売については規定されていませんでした。これに対応するため厚労省令で「第3類医薬品のみネット販売可」と通知し、それに基づいて保健所が監視指導を行っていました。

これに異を唱え、法廷闘争を始めたのがケンコーコム(現在は楽天の子会社)でした。

結果、最高裁で厚生省令は無効との判断が示され、さらに景気回復を大義とする安倍政権が「すべての一般用医薬品をネット販売可とすべき」と言ったりしたことで、一時OTCのネット販売については無秩序状態に陥りました。

 

この最悪な事態を打開すべく厚労省が打ち出したのが、「要指導医薬品」の導入でした。安倍ちゃんの発言を100%生かしつつ、ネット販売反対の日本医師会(自民党の大票田)、日本薬剤師会、消費者団体のメンツを保つ妙手(奇策?)を編み出しました。

結果、第1類医薬品を含めてOTC(一般用医薬品)は全てネット販売可、要指導医薬品は対面販売を義務付ける、という流れになりました。

(旧ケンコーコムは更に要指導医薬品についてもネット販売解禁を訴え提訴しましたが、平成31年2月6日に東京高裁判決で敗訴しています)

 

これに慌てたのは日本薬剤師会です。ネットの雄Amazon楽天、ヤフーなどが一斉にOTCのネット販売に参入し始められたら、会員薬局のOTCの売上げがあっという間になくなるかもしれません。何より、メンツが立ちません。(もともと会員薬局のOTC売上なんて知れているのですが…)

そこで、ネット販売について省令で細かな条件を設けることに腐心しました。

  • ネット販売等の購入受付は実店舗に薬剤師または登録販売者がいる時間帯に限る
  • ネット販売等できる品目は実店舗に実際に在庫している商品に限る

などを省令に盛り込ませることに成功しました。

 

これに対して、ネットの雄、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)側は「してやられた」というか、議論にも加われない体たらく状態だったのでしょうか。

 

ともあれ、ネット販売等するには実店舗で扱っている品目を、その店舗で資格者が勤務している時間に限るということになりました。

 

そして、その議論のついでに調剤された医薬品についても対面での情報提供を義務付ける議論が並行して進められていたのです。

資本力に勝る大手調剤薬局チェーンやドラッグストアが売り上げを伸ばす中、少しでも制約を増やして、資本力組織力では勝負できないようにしておきたかったのでしょう。

 

こうして、OTCのネット販売可否の議論の陰で調剤薬の対面での情報提供義務が決まっていったのです。

 

日本薬剤師会の先見力の無さ

 しかし、メンツを保ちたいという日薬の思いとは裏腹に、医科では遠隔診療を推進する流れがどんどん進んでいきました。

世の中のICTの流れにも無頓着でした。

2018年の診療報酬改定で遠隔診療に点数がつくという事態になっても、自ら勝ち取った対面での情報提供義務を手放すことは決してしません。

そして、2018年4月以降マスコミなどで遠隔診療はできるのに遠隔服薬指導は違法という現状を世間に晒されることになりました。

処方の元になる「診療」自体が画面越しに行われるのに、処方された薬の説明は対面でないと安全性が担保できない、というのはあまりにも滑稽でした。

 

国は国家戦略特区という制度で遠隔服薬指導の試験運用を開始しましたが、メンツがある薬剤師会は試験運用に参加する薬局が多いと困るので、

1. 離島、へき地に居住する者に対し、
2. 遠隔診療が行われ、
3. 対面での服薬指導ができない場合に限り、
4. テレビ電話による服薬指導(いわゆる遠隔服薬指導)が可能

という極めて限定した条件下で実施されることになりました。

日薬としては遠隔服薬指導への流れは不可避と感じながらも、時間稼ぎがしたいとか、対面による情報提供義務を設けたメンツが傷つかないように展開したいなどの思惑が透けて見えます。

  

遠隔服薬指導の課題は?

電子処方箋の普及

 

 

グレーゾーン解消制度によって服薬指導後の調剤薬の郵送などは適法とされましたが、そもそも処方箋の受付をどう規定するのか、が問題になりそうです。

今検討されているのは、電子処方箋の利用拡充です。

2018年の診療報酬改定で規定された電子処方箋の運用では、電子的に(データとして)医療機関から薬局に処方せんを送信することに加え、患者は電子処方箋を交付した旨の用紙を薬局に持参する必要があります。

え、結局紙が必要じゃん??というのが現状です。明らかにアホな運用と言わざるを得ません。厚労省も十分承知しているようで今回の法改正議論ではその辺も検討が進められているようです。

 

また、電子処方箋の普及にはインフラの整備が不可欠です。

医療業界には様々な企業が参入していて、それぞれ独自のフォーマットでシステムを構築しているのが現状です。(NSIPSだけは例外で、福岡県薬剤師会が調剤に関するフォーマットを考案し業界団体に普及しました)

レセプトのオンライン請求やNSIPSと同じように行政などがフォーマットを定義しない限り、フリーアクセスを担保するためのシステムの構築の実現は厳しく、中途半端な電子処方箋の制度開始は一部の医療機関・薬局に利するか、多くの患者に迷惑をかけることになります。

 

遠隔服薬指導のツール

 

現在国家戦略特区での遠隔服薬指導のシステムを数社が提供しています。

遠隔診療においてはガイドラインが定められていて、情報通信ツールもその内容に則っている必要があります。ただし、このガイドラインは比較的緩いもので、実際にはLINEのビデオ通話機能を利用している医師も少なくありません。

専用のツールを導入するにはそれなりのコストが発生します。LINEであればスマホを持っている人であればだれでもすぐに利用できます。

ただし、診療に必要な「データ」などを送信したりする場合は、サーバーにデータが一時的に保存されることになるため、セキュリティが担保されたシステムを採用した方がよさそうです。

 

遠隔服薬指導においても同様か、または少々厳しい要件が課されることが想像できます。なぜ、少々厳しいか?ですが、簡単に言うと日薬の嫌がらせでしょう。

個人~中小薬局の連合体である日薬は、遠隔服薬指導のハードルを上げることに躍起になるのは想像に難くありません。

しかし、もしハードルを上げることに成功したとすると、今度は会員薬局が遠隔服薬指導にチャレンジするためのハードルも上げることになるのです。

体格(資本力組織力)が小さい分、相対的な高さは更に高くなることでしょう。

 

日薬のかじ取りに注目していきたいものです。

 

 

 

「ここが出る!」登録販売者試験講座(東海北陸版) 始めました

毎年秋の実施される各県の登録販売者試験合格を目指す方を、目一杯応援するためのブログを開設してコンテンツを積み上げているところですが、新たな挑戦としてYoutubeで講座を開講しました。

 

以前、1,4,5章からしっかりポイントを押さえましょう、という記事を書きましたが、今回は「教えて」ニーズの高い第3章から始めてみました。

 

pharmalabo.hatenablog.com

 

これから夏、秋に向けてコンテンツを公開していくつもりです。

良かったら活用してください。

youtu.be