調剤薬局業務をExcelで快適に PharmaDataLabo

調剤薬局業務をExcelで効率化しよう

薬局の不正は大手調剤薬局・ドラッグストアだけの問題か??①

 

sponsored Link

今年も保険薬局が関係する「不正」問題がネットを賑わせてしまってますね。

 

以前、【医療用医薬品の不正販売】として記事を掲載しましたが、今回はより本質的な部分を考えてみたいと思います。

 

 

1)薬歴管理料の不正請求と虚偽報告について

まずはこちら、

アポロメディカルHD 薬歴改ざんで調剤報酬不正請求 アルフレッサHD子会社 | ニュース | ミクスOnline

 

このアイランド薬局ほくしん店の薬局機能情報を見ると、昨年の処方せん応需数は27,458人となっています。また、薬剤師数は4人とのことです。

主な処方せん応需元は隣接する内科胃腸科クリニックで、診療日は月~土で、木土は午前のみの診療です。

年間の診療日が約280日として、単純に1日約100枚の処方せん応需となります。

薬剤師が処理すべき薬歴は1日25件ということになりますが、記事では介護施設の管理も行っているという記載もあり、外来7割、施設3割くらいだとすると、1日100枚のうち外来70枚、施設30枚、月間にすると外来1750枚、施設750枚程度と考えられます。割と忙しい薬局と窺えます。

 

さてこの薬局が、18年6月に個別指導を受けて、①薬歴未記載にもかかわらず薬歴管理指導料を算定していた、として自主返還(約5年分)を求められ、さらに返還対象となる未記載の薬歴に、②電子薬歴の日付を操作するなどして薬歴を書き足すなどの改ざんをして、③厚生局へ虚偽の報告を行っていた、ことが問題とされています。

 

一連の不正の中で一番の問題は何なのでしょうか?

【未記載になる原因】

そもそも、なぜ薬歴未記載が発生したのかを考えてみます。

記事では、約5年間で660万円の返還が必要と管理薬剤師が試算したとあります。

返還額はレセプト請求額となりますので、1件410円のうち、自己負担割合の平均が1.5割程度と仮定した場合、6,600,000÷(410x0.85)=17,000件、1年あたり3,400件、1か月あたり283件、薬剤師1人1か月あたり70件の未記載があった計算になります。

 

面展開の1人薬剤師のドラッグストアならともかく、月間2000枚の処方せんを応需する薬局で毎月毎月300件近い薬歴未記載が外来患者であったとは思えません。薬歴がないと次の服薬指導がままならないからです。

おそらく、介護施設のうち介護保険の居宅療養管理指導の対象としていない、いわゆる「外来扱い」の施設に対して、未記載を続けてきたと考えるのが普通でしょう。

 

薬歴未記載の原因は、恐らく本部が営業成果として”獲ってきた”介護施設の調剤に、外来処方せん枚数以上の労力を要する上、外来応需もそこそこの忙しさがあり、

往診同行⇒処方せんチェック⇒調剤(一包化・粉砕)⇒配薬準備(薬局内)⇒お届け・配薬(施設)⇒担当者への伝達・持参薬チェック・他科受診確認⇒薬局に戻るとすぐに外来対応、、、

の無限ループだったのではないでしょうか??

 

多くの場合、施設ごとに担当薬剤師が決まっているので、薬歴を書かなくても次回処方の際に前回までの流れを把握できているので、それほど調剤に支障が出ないということも、施設薬歴を後回しにしてしまい、他の薬剤師も状況は同様だったりするので、他人の未記載薬歴を指摘することができない状況だったのでしょう。

 

つまり今回の問題発生の本質は、施設調剤についての調剤~薬歴記載までのオペレーションの不備であり、それを確認せずに”施設を獲得”してくる本部の無能が問題の本質、と見ることができます。

(以下の記述は、このことを前提にした記述ですのご了承ください)

 

【自主返還にあたり電子薬歴を改ざん】

660万円の自主返還、との報告を受けた会社幹部は社長(故人)に報告し「何とかしろ」という旨の指示を受けたことで改ざんが始まったようです。

前述リンク先の記事によると、15,304件に改ざんが判明したとのことです。

つまり返還対象と管理薬剤師が確認した17,000件のうち90%超に手を加えたということです。その改ざんの内容については

  • 未記載となっていた薬歴データに過去の服薬指導時のメモなどを見ながら薬歴データを作成し、日付を過去のデータに改ざんした
  • レセプトの提出期限を越えて記載していた薬歴データを、請求期限内の日付に改ざんした
  • 薬歴の日付や新たな情報を追加し、薬歴の内容も改ざんした

等が確認されているという。

 

ある薬剤師会幹部の方は、「電子薬歴の日付操作」に対してなんてことをしてくれたんだ!と大変憤っていました。

 

自主返還金額を過少報告することは別に珍しくも何ともありません。

ただそのやり方として、薬歴の改ざんを指示したのはいただけないですね。有印私文書偽造・改ざんなどにも該当するリスクもあります。

ここでも、会社幹部のの危機管理のセンスが悪かったようです。

 

 

厚生局へ虚偽の報告

薬歴を改ざんした結果、自主返還は244件、約10万円となったそうです。

厚生局も本質は審査(捜査)機関ではないので、そのまま受理したことでしょう。

この件の関係者の誰かが、良心の呵責に耐えられず報道機関にリークしたようです。

親会社のアルフレッサHDは、「(内部通報制度はあったが)通報されないまま、こうなったことは一番課題にしなければならない」と語ったそうです。また、管理薬剤師から何らかの意見具申が行われた形跡もなかったという。

 

さてみなさんは何が一番問題だと思いますか?

 

私は、最初の段階で会社が店舗のオペレーションに対して責任を持った上で、施設調剤を獲得してくるべきと考えます。そこさえちゃんとしていれば、あとは制度への対処の方法を会社として学べば済むことです。

それを親会社のアルフレッサHD(医薬品卸国内最大手)の社長は、「内部通報制度が活用されなかったこと」が一番の課題と捉えているそうです。現場を知らないおバカな発想ですが、超大企業のトップなら仕方がないところでしょうか。

 

あなたの薬局は大丈夫?

さて、今回の件では電子薬歴の改ざんという禁じ手の中の禁じ手を使ったことも企業ガバナンス上の大きな問題ですが、問題の本質は、現場を回すための努力と、営業さえすればいいという本部の意識との乖離にあります。(各メディアで大きく取り上げられたのは超大企業の傘下の薬局での出来事だからです)

あなたは、あなたの薬局やグループ店舗では施設調剤の薬歴未記載が絶対ないと断言できますか?

あなたの会社の幹部たちは、各店舗がどのようなタイムスケジュールでどのようなオペレーションで動いているかをしっかり把握していますか?

あなたの会社の幹部たちは、薬局長(管理薬剤師)に責任をただ押し付けてはいませんか?

ほら、他人事ではないような気になってきましたね。。。

 

よその会社に「襟を正せ」とかいう前に、「人の振り見て我が振り直せ」ですよ。。