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調剤薬局業務をExcelで効率化しよう

薬局は儲けすぎなのか?

 

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今回の診療報酬改定ではかなり薬局への風当たりが強くなっていますね。

 

「そらそうだよな」なんて思ったりもしますが、メディアの記事など腑に落ちないこともあるので少し整理してみたいと思います。

 

院内処方の薬価差益が発端?

 

日本では「調剤」について薬剤師法第19条で薬剤師の専権事項となっています。

ただし、薬剤師法第19条及び医師法第22条の規定で医師(または歯科医師)に調剤権の特例を認めています。

しかしながら、長らく「院内処方」が一般的でした。

 

1970年代以降から「医薬分業」へと政策誘導が始まったのですが、その原因は院内処方による薬価差益目当ての不必要な薬剤投与です。医師(または医師会)による自浄作用が期待できなかったから、あるいは不十分だったからでしょう。

 

医薬分業が加速するようになったのが90年代後半以降、公立の総合病院などの多くが院外処方に切り替え始めたのがきっかけだったようです。

 

この頃までの特徴としてもう一つ、秘密主義もあげられるでしょう。

医師は患者に投薬の情報をなるべく隠すのが一般的でした。「医者からもらった薬がわかる本」などが本屋に必ずありましたし、実際に医者からもらった薬には薬の名前も書いていませんでした。識別番号がその頃の名残ですね。

軟膏剤なんかは薬品名の書いた薬札を破ってから患者に渡すようになっていました。

分業率が上がるにつれ、薬品の情報がオープンになり今ではインターネットでだれでも知りたい情報を見つけることができるようになりました。

 

薬剤師会は何をしていたのか?

 多くの薬局がいわゆるパパママ薬局として地域に根付いた「町の薬屋さん」として、OTCや衛生材料、雑貨品などを販売していたのが、降って湧いた医薬分業ブームで調剤を中心にする薬局が増えたのでしょう。

効率を求め知り合いの医師の診療所の門前に店を構えて、衛生材料や雑貨品の品ぞろえは最小限にする門前薬局のビジネスモデルが出来上がってきました。

一方、調剤中心にすることを選ばず、OTCや衛生材料、雑貨品などで収益を上げるドラッグストア志向の薬局が誕生しだしたのもこの頃のことと思われます。

 

薬剤師会の構成メンバーはこうしたパパママ薬局から始まった数店舗の薬局を経営する人たちが多いのですが、調剤に関わる情報を共有することを命題としていたのでしょうか、世の中では処方箋は門前薬局で、OTCや雑貨はドラッグストアで、という認識がどんどん広がっていきました。

 

その結果、薬剤師会の構成メンバーは小規模薬局の経営者が中心となり門前薬局の集団に、一方のドラッグストアは徐々に規模を拡大しOTC医薬品供給の中心になっていきました。

 

薬剤師会は降って湧いた医薬分業ブームに対応するのが至上命題と化し、そのビジネスモデルは門前調剤薬局であり、今話題の健康サポート薬局のあり方からどんどん乖離していきました。

 

調剤薬局チェーンの台頭

 

 パパママ薬局が診療所の門前に店を構える一方、資本力のある薬局が大型病院の門前に立地を求めて展開し始め、どんどん巨大化していき調剤薬局チェーンも増えていくことになります。

命題は効率化と教育。待ち時間をいかに少なくするか、いかに少ない人員で運営するかということに加え、薬剤師の満足度を上げるためなのか社員教育にも注力することで、薬剤師を集め更なる店舗展開へとつなげていきました。

 

小規模門前薬局中心の薬剤師会の中では、規模に見合う発言権が得られないからか日本薬局協会(NPhA)を平成16年に設立し、一部の企業は日薬から退会したりもしました。

設立当初から大企業が構成していることもあり、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)と並ぶ業界団体として大きな影響力を持っています。

 

ドラッグストアの調剤路線強化

 調剤中心を選ばず、OTCや化粧品を販売の中心にして拡大をしてきたのがドラッグストアです。命題は市場原理の中での推奨販売。

日替わり商品などで集客し、高利益の保健薬や化粧品を推奨販売するための接客力が命でした。

 

業態(ビジネスモデル)としては、健康サポート薬局に最も相応しい業態でしょう。

しかしここ10年ほどでインターネットショッピングなどの影響もあり、雑貨品の低価格販売では集客に陰りが見え、集客と利益の柱が食品と調剤にシフトしてきました。

それと引き換えに推奨販売や接客は弱くなってきているなあと感じています。 

 

推奨販売が中心の頃は、薬剤師が十分に確保できず薬剤師不在の店舗なんてのもよく聞いた話でしたが、業界として登録販売者制度を勝ち取り、OTC販売と調剤を分離することで薬剤師が調剤専任となっていき、求人にも有利に働いてきています。

 

調剤路線を歩みだしたのが遅いのと、1店舗当たりの薬剤師数は少ないので、薬剤師としての見識を深めることが難しいのが課題でしょう。ただ、「自分しかいない」という場面も多いので決断力は早くから身につきやすいですね。

また、調剤専任の薬剤師が増えることで、ドラッグストアなのにOTCが苦手な薬剤師も増えていることが懸念されます。

 

院内処方ではだれが調剤しているのか?

 話を院内処方に戻します。

薬局で調剤し、患者に交付するのは薬剤師の仕事です。では身近にある院内処方の診療所では、だれが調剤し、説明してくれるのでしょう。

 

薬剤部のある病院では薬剤師が担当しているでしょう。

一方、開業医のクリニックでは、薬をくれるのは窓口の事務員、というところが多いのではないでしょうか。

薬剤師法第19条には「ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。」との但し書きがあります。

看護師に余裕があるところなら看護師が行うところもあるでしょう。しかし、医師が自ら調剤し、患者に交付しているクリニックはそうそうないのではないでしょうか。

 

 なぜ医師自らが調剤しないのか?コストに見合わないからなんでしょうね。。。

 

院内処方に戻せば診療報酬は削減できるのか?

院外処方により薬価差益を得られなくなっても、医師による多剤投与が「ポリファーマシー」と言われ問題視されるようになってきています。

そんな中で、すべてを院内処方に戻して、少しばかり院内処方の調剤料を増やしたとして、医師が「割に合う」と感じるでしょうか。

 

在庫管理もしないといけません。調剤、投薬するスタッフの確保・教育、備蓄スペースも必要です。

 

現実的に考えれば、今更院内処方へ回帰するなんてどう考えても無理な話です。

 

ところで、ビジネスジャーナルの記事で「薬局、棚から100円の薬取るだけで手数料1100円?「儲けすぎ」批判強まる、大手社長に配当1億円超」というのが出ましたが、ドラッグストアは調剤でのもうけを原資に、食品をスーパーやコンビニより安売りできるという旨がありましたが、売上構成比や、粗利率、人件費について全く触れないバカげた記事です。

しかも、日医の会長の写真を掲載しているものだから、日医会長の発言のように錯覚を誘っているような記事。無責任ですよね。

  

「患者のための薬局ビジョン」って?

 とは言え、いわゆる門前薬局が今のままではいけないんだろうということには異論はありません。と同時に、どうしてこうなったのかの反省がないの?とも思います。

 

普通の企業は自らの成長や生き残りのために、企業理念なり戦略などを描いて経営者の指導の下にいかに実践していくか、を毎日努力しています。

業界団体においても同じで、業界全体が成長するために、あるべき姿、目指すべき姿、求められる姿などを描きます。

 

それなのに、国から「薬局はこういう姿になりなさい」と言われた薬局業界!

特に日本薬剤師会の体たらくには目も当てらません。まずはその反省をしっかりしなければ存在意義を自ら失うことにつながるでしょうね。。。