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薬価差益で考えるAG(オーソライズドジェネリック)の採用

 

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先に発売されるAG(オーソライズジェネリック)と、後で発売される他メーカーのジェネリックのどちらを採用したらいいか悩みどころですよね。

 

一番重要なポイントは、

  • 現在算定している後発医薬品調剤体制加算が維持できるか

になるでしょう。

これについてはこちらの記事をご覧ください。

pharmalabo.hatenablog.com

 

その他のポイントとしては、

  1. 本部指示
  2. MR、MSとの関係
  3. 剤形(OD錠・識別記号・色・大きさ・味など)、包装、など
  4. 薬価、薬価差益

などが挙げられますね。

今回は、4の「薬価及び薬価差益」の視点で、9月にAGが発売になったオルメサルタンとロスバスタチンについてジェネリックの採用を考えてみます。

 

ジェネリックの薬価

 

ある先発品のジェネリック(内服薬)が薬価収載される際、その薬価は先発品の5割となるが、銘柄数が10を超えると先発品薬価の4割となります。

つまりオルメサルタン、ロスバスタチンのジェネリックの薬価は次のようになります。

  5mg 10mg 20mg 40mg  
オルメテック 31.5 59.3 112.8 171.5  
AG「DSEP」 15.6 29.6 56.4 84.6 9月の時点では1銘柄のみのため先発品薬価の約5割
12月収載品(19社) 12.6 23.7 45.1 68.6 AGと合わせて10銘柄を超えるので先発品薬価の4割となる見込み

 

  2.5mg 5mg  
クレストール 63.1 121.3  
AG「DSEP」 31.6 60.7 9月の時点では1銘柄のみのため先発品薬価の約5割
12月収載品(25社) 25.2 48.5 AGと合わせて10銘柄を超えるので先発品薬価の4割となる見込み

 

 

薬価差益は、「薬価ー納入価」ではない!!

 

オルメテックの20mgを月に100錠使用した場合の薬価差益を考えてみましょう。

調剤薬の納入価は一般に「薬価x〇%」として卸と契約している薬局が多いのですが、ここでは「85%」としてみます。

 各薬局の売り上げを集計する際、

  • 売上=調剤報酬

ですが、利益は

  • 利益=調剤技術料+薬価差益

で表せます。

  • 調剤技術料=基本料+調剤料+薬学管理料

です。では、薬価差益はどうでしょう?

 

普通はレセコン出力した調剤報酬集計表などに記載される「薬剤料」に平均納入価率を乗じて求めることが多いでしょう。

  • 薬価差益=総薬剤料×(1‐平均納入価率)

では、平均納入価率はどうやって求めるか?正確に算出することは極めて困難なため、当月の仕入れた品目の総薬価金額と総納入価から求めるのが妥当でしょう。

  • 平均納入価率=総納入価÷総薬価金額

 

これをオルメテック20mg(100錠使用)に当てはめると、

 薬価差益=112.8円x100錠x(1ー85%)=1,692円 となります。

 

しかし、本当の薬価差益は

薬価差益=薬剤料ー納入価

であるため、「オルメテック錠20mgの100錠分の薬剤料がいくらか」が重要です

 

薬価と患者負担額

 先日の記事でも述べましたが、「薬価が半額」だからと言って「患者負担が半額」になるとは限りません

 

pharmalabo.hatenablog.com

 

調剤報酬の算定では、薬剤料の計算の仕方にあるルールがあります。

内服薬については同一処方内の薬剤を剤ごとにまとめた上で、1日分の薬価金額を合計します。

更に1日分の薬価金額合計の一円の位を四捨五入ならぬ「五捨五超入」して10円単位にして、処方日数をかけたものが薬剤料となります。

 

 

オルメテック20mg(@112.8円) 1錠 30日分の場合

1日分薬価(112.8円)

⇒五捨五超入:1日分薬剤料(110円)

⇒30日分薬剤料:3,300円(110x30)

⇒患者負担額(3割):990円

 

オルメテック20mg(@112.8円) 1錠 100日分の場合

1日分薬価(112.8円)

⇒五捨五超入:1日分薬剤料(110円)

⇒100日分薬剤料:11,000円(110x100)

⇒患者負担額(3割):3,300円

 

オルメテック20mg(@112.8円) 2錠 30日分の場合

1日分薬価(225.6円)

⇒五捨五超入:1日分薬剤料(230円)

⇒30日分薬剤料:6,900円(230x30)

⇒患者負担額(3割):2,070円…1錠処方の時の2倍よりも高い!

 

となります。

※今回は単剤処方の場合で考えましたが、同一「剤」の中に複数の薬剤がある場合はそれぞれの1日薬価金額を合計した上での「五捨五超入」なのですべての処方で正確な薬価差益を一度に計算することはほぼ無理なので、試算は単剤処方でのみ行います。

 

実質薬価差益の求め方

 薬剤料の算出ルールが分かったところで、実質薬価差益の求め方を確認しておきましょう。

オルメテックの納入価は薬価の85%とします。

 

オルメテック20mg(@112.8円) 1錠 の場合

1日分薬剤料(110円)

納入価:112.8x85%=95.88円

1日(1錠)当たり薬価差益額:110‐95.88=14.12円(12.5%)

 

オルメテック20mgが1日1錠で単剤処方された場合、1日分の薬価差益は14.12円となります。

 

 

このようにして、先発品、第一三共エスファのAGと他メーカーのGEの薬価差益について試算してみます。

 

納入価率については、

  • 先発品:85%
  • DSEPのAG:85%(一般卸から納品されほとんど値引きされないと仮定)
  • 他メーカー品:75%(ジェネリック専門の卸からの納品である程度の値引きを期待)

としておきます。(他メーカー品は専門卸のある東和薬品沢井製薬の品目を想定)

 

試算:オルメサルタン(1日1錠として)

 ☆5mg

  オルメテック 第一三共エスファ(AG) サワイ、トーワ など
薬価 31.5 15.6 12.6
1日薬剤料 30 20 10
納入価率 85% 85% 75%
1日薬価差益 3.225 6.74 0.55

先発品よりAGの方が薬価差益がありそうですね。もちろん患者負担も減りますよ。

他メーカー品は4割薬価の五捨五超入のおかげで薬価差益ほぼ0となっています。 

 

☆10mg

  オルメテック 第一三共エスファ(AG) サワイ、トーワ など
薬価 59.3 29.6 23.7
1日薬剤料 60 30 20
納入価率 85% 85% 75%
1日薬価差益 9.595 4.84 2.225

先発品で引っ張れるだけ引っ張って、GEにするならAGを採用するのがお利口でしょう。他メーカー品の薬価差益はAGの半分以下しかありません。

 

☆20mg

  オルメテック 第一三共エスファ(AG) サワイ、トーワ など
薬価 112.8 56.4 45.1
1日薬剤料 110 60 50
納入価率 85% 85% 75%
1日薬価差益 14.12 12.06 16.175

他メーカー品の薬価が先発品の4割として45.1円かそれよりも少し高ければ、最も薬価差益が取れます。

逆に45.0円か低ければ1日薬剤料が40円になってしまうため、薬価差益が10円減少してしまう微妙なラインです。

想定通りの薬価とすると、12月に発売されたら他メーカー品を採用すべきでしょう。

 

☆40mg

  オルメテック 第一三共エスファ(AG) サワイ、トーワ など
薬価 171.5 84.6 68.6
1日薬剤料 170 80 70
納入価率 85% 85% 75%
1日薬価差益 24.225 8.09 18.55

先発品とAGで薬価差益が3分の1になっています。12月に他メーカー品が発売になったらそちらを採用すべきでしょう。

 

試算:ロスバスタチン(1日1錠として)

 ☆2.5mg

  クレストール 第一三共エスファ(AG) サワイ、トーワ など
薬価 63.1 31.6 25.2
1日薬剤料 60 30 30
納入価率 85% 85% 75%
1日薬価差益 6.37 3.14 11.10

 こちらも薬価が微妙なラインですが、一応4割薬価として他メーカー品が一番薬価差益が大きいでしょう。AGの3倍超です。

 

☆5mg

  クレストール 第一三共エスファ(AG) サワイ、トーワ など
薬価 121.3 60.7 48.5
1日薬剤料 120 60 50
納入価率 85% 85% 75%
1日薬価差益 16.90 8.41 13.63

こちらもAGより12月発売の他メーカー品を採用した方がよさそうですね。

 

 

いかがでしょうか。薬剤料から薬価差益を検討してみれば、AGを採用すべきかが明確に分かりました!!