調剤薬局の適正在庫について、ロス率や、過剰在庫を考える前に在庫日数の適正値について考えてみましょう。
前回の記事で、適正在庫を評価する指標について「在庫日数」が簡便で信頼度も高いとお話ししました。そしてその初期目標は「30日を下回ること」を説明しました。
では、30日を下回ったとして何日分まで絞ればいいのでしょうか?
30日を切っていれば何日でも大して変わらない
結論からいうと、「30日を切っていれば何日でも大して変わらない」ということになります。
ただし、期首在庫を大きく上回らないことが前提です。
同じ売り上げ規模の2店舗を考えてみましょう。A店は日常から在庫を絞っていて在庫日数は15日、B店はなんとか30日の目標をクリアしているとします。
(単位:万円) | 期首在庫 | 当月仕入 | 当月使用 | 期末在庫 | 在庫日数(日) |
A店 | 500 | 1,000 | 1,000 | 500 | 15 |
B店 | 980 | 1,000 | 1,000 | 980 | 29.4 |
資金繰りの面では売り上げに対しての仕入れ額で考えるとA店もB店もそれほど変わりません。
もちろん、在庫資産を早く現金化するためには在庫は少ないに越したことはありませんが、問題はB店の980万円分の在庫が常に現金化されているかどうか、つまり期限切れ廃棄などのリスク(いわゆるデッドストック)を抑えて流動化できているか、という点です。
逆に、在庫日数を15日にするために発注にどれだけの労力を費やしているか、欠品が発生して患者さんに迷惑をかけていないか、欠品対応のための労力は、などに目を向けているでしょうか。
世の中は「バランス」が重要だと思いますので、資金繰りのために在庫を絞ることとそのために要する労力のバランスが取れているかが、重要でしょう。
ということで、期首在庫を大きく上回らず、廃棄リスクを低減したうえなら、在庫日数は「30日を切っていれば何日でも大して変わらない」と言えるでしょう。
決算期と薬価改定月は在庫を絞ろう
ただし、決算期だけは別、と考えておいた方がいいでしょう。
決算期には資産を極力現金化しておくことが、企業の信用度に大きく影響するからです。私の経験上、決算期は会社全体(チェーン店舗の合計)の在庫日数が30日を下回るように、店舗によっては15日程度を目標とすることも必要かもしれません。
チェーン店舗が全て門前薬局である場合などは各店舗が確実に20~30日程度に絞れていれば十分でしょう。
※いたずらに在庫削減ゲームをしてはいけません!
薬価改定がある月も薬価引下げによる資産の目減りを抑えるために、薬価引下げ率の大きいものを中心に在庫を極力絞る必要があります。
なお、通常期は20~30日を保つことができていれば、適切に在庫管理できているといっていいと思います。
面薬局は45日を目標にしよう
ドラッグストアなどで医療機関の門前薬局ではない店舗も増えてきましたが、これらのチェーン薬局では経営体力もあるので在庫日数30日にこだわる必要はないでしょう。最近では、土日祝日に営業していたり、深夜まで営業していたりすると、問屋への急配依頼もできないケースもあるでしょう。
しかし、だからと言って青天井でも困りますよね。
チェーン店の強みを活かせば、過剰在庫の流動化、小包装での小分けなども十分に行えば面薬局全店で在庫日数45日を目標とすることができるでしょう。
チェーン店舗の中にも門前薬局があるでしょうから、その門前薬局が在庫削減に頑張って、会社全体で30日を下回ればいいでしょう。
この場合、門前薬局は15~20日程度までの削減目標となることが多いと思います。