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遠隔服薬指導

2018年4月の診療報酬改定で、医科の遠隔診療が認められたことから、服薬指導が対面を義務付けられていることに異論が及び、2019年薬機法改正(予定)で遠隔服薬指導を解禁する流れとなってきました。

 

実は15年ほど前、S市のドラッグストアの調剤併設店舗から約5kmほど離れた患者さんに対して遠隔服薬指導を行ったことがあります。といっても、調剤併設ドラッグストアをアピールするための地元テレビ局の取材用にデモをしただけですが(笑)

当時画期的な「テレビ電話」機能を持った携帯電話「FOMA」を利用して、臨時のかぜ薬が処方されたという想定で遠隔服薬指導を行い、夕方の情報番組で放送されました。

それ以降は実際に遠隔服薬指導を勧めるという流れにはならず立ち消えになりましたが…

 

なぜ対面義務だったのか

 

 2014年の薬事法改正で調剤された医薬品の情報提供について新たな規定が設けられました。

第九条の三 

薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により厚生労働省令で定める事項を記載した書面(略)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。

 それまでは、「調剤された医薬品」は薬事法で定める「医薬品」には当たらないとして、薬事法においては全く規定されていませんでした。

(調剤に関することはほぼ全てが「薬剤師法」で規定されていました)

 

前職で調剤薬のデリバリー&遠隔服薬指導を開拓せよと指令を受けていた私はビックリしました。万事休すです。

 

では、なぜこのような規定ができたのか?

実は、OTCのネット販売と深く関係していることをご存知でしょうか。

薬事法では薬局・店舗販売業を許可を取得している店舗での販売しか想定しておらず、インターネットなどで注文を受ける店舗外販売については規定されていませんでした。これに対応するため厚労省令で「第3類医薬品のみネット販売可」と通知し、それに基づいて保健所が監視指導を行っていました。

これに異を唱え、法廷闘争を始めたのがケンコーコム(現在は楽天の子会社)でした。

結果、最高裁で厚生省令は無効との判断が示され、さらに景気回復を大義とする安倍政権が「すべての一般用医薬品をネット販売可とすべき」と言ったりしたことで、一時OTCのネット販売については無秩序状態に陥りました。

 

この最悪な事態を打開すべく厚労省が打ち出したのが、「要指導医薬品」の導入でした。安倍ちゃんの発言を100%生かしつつ、ネット販売反対の日本医師会(自民党の大票田)、日本薬剤師会、消費者団体のメンツを保つ妙手(奇策?)を編み出しました。

結果、第1類医薬品を含めてOTC(一般用医薬品)は全てネット販売可、要指導医薬品は対面販売を義務付ける、という流れになりました。

(旧ケンコーコムは更に要指導医薬品についてもネット販売解禁を訴え提訴しましたが、平成31年2月6日に東京高裁判決で敗訴しています)

 

これに慌てたのは日本薬剤師会です。ネットの雄Amazon楽天、ヤフーなどが一斉にOTCのネット販売に参入し始められたら、会員薬局のOTCの売上げがあっという間になくなるかもしれません。何より、メンツが立ちません。(もともと会員薬局のOTC売上なんて知れているのですが…)

そこで、ネット販売について省令で細かな条件を設けることに腐心しました。

  • ネット販売等の購入受付は実店舗に薬剤師または登録販売者がいる時間帯に限る
  • ネット販売等できる品目は実店舗に実際に在庫している商品に限る

などを省令に盛り込ませることに成功しました。

 

これに対して、ネットの雄、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)側は「してやられた」というか、議論にも加われない体たらく状態だったのでしょうか。

 

ともあれ、ネット販売等するには実店舗で扱っている品目を、その店舗で資格者が勤務している時間に限るということになりました。

 

そして、その議論のついでに調剤された医薬品についても対面での情報提供を義務付ける議論が並行して進められていたのです。

資本力に勝る大手調剤薬局チェーンやドラッグストアが売り上げを伸ばす中、少しでも制約を増やして、資本力組織力では勝負できないようにしておきたかったのでしょう。

 

こうして、OTCのネット販売可否の議論の陰で調剤薬の対面での情報提供義務が決まっていったのです。

 

日本薬剤師会の先見力の無さ

 しかし、メンツを保ちたいという日薬の思いとは裏腹に、医科では遠隔診療を推進する流れがどんどん進んでいきました。

世の中のICTの流れにも無頓着でした。

2018年の診療報酬改定で遠隔診療に点数がつくという事態になっても、自ら勝ち取った対面での情報提供義務を手放すことは決してしません。

そして、2018年4月以降マスコミなどで遠隔診療はできるのに遠隔服薬指導は違法という現状を世間に晒されることになりました。

処方の元になる「診療」自体が画面越しに行われるのに、処方された薬の説明は対面でないと安全性が担保できない、というのはあまりにも滑稽でした。

 

国は国家戦略特区という制度で遠隔服薬指導の試験運用を開始しましたが、メンツがある薬剤師会は試験運用に参加する薬局が多いと困るので、

1. 離島、へき地に居住する者に対し、
2. 遠隔診療が行われ、
3. 対面での服薬指導ができない場合に限り、
4. テレビ電話による服薬指導(いわゆる遠隔服薬指導)が可能

という極めて限定した条件下で実施されることになりました。

日薬としては遠隔服薬指導への流れは不可避と感じながらも、時間稼ぎがしたいとか、対面による情報提供義務を設けたメンツが傷つかないように展開したいなどの思惑が透けて見えます。

  

遠隔服薬指導の課題は?

電子処方箋の普及

 

 

グレーゾーン解消制度によって服薬指導後の調剤薬の郵送などは適法とされましたが、そもそも処方箋の受付をどう規定するのか、が問題になりそうです。

今検討されているのは、電子処方箋の利用拡充です。

2018年の診療報酬改定で規定された電子処方箋の運用では、電子的に(データとして)医療機関から薬局に処方せんを送信することに加え、患者は電子処方箋を交付した旨の用紙を薬局に持参する必要があります。

え、結局紙が必要じゃん??というのが現状です。明らかにアホな運用と言わざるを得ません。厚労省も十分承知しているようで今回の法改正議論ではその辺も検討が進められているようです。

 

また、電子処方箋の普及にはインフラの整備が不可欠です。

医療業界には様々な企業が参入していて、それぞれ独自のフォーマットでシステムを構築しているのが現状です。(NSIPSだけは例外で、福岡県薬剤師会が調剤に関するフォーマットを考案し業界団体に普及しました)

レセプトのオンライン請求やNSIPSと同じように行政などがフォーマットを定義しない限り、フリーアクセスを担保するためのシステムの構築の実現は厳しく、中途半端な電子処方箋の制度開始は一部の医療機関・薬局に利するか、多くの患者に迷惑をかけることになります。

 

遠隔服薬指導のツール

 

現在国家戦略特区での遠隔服薬指導のシステムを数社が提供しています。

遠隔診療においてはガイドラインが定められていて、情報通信ツールもその内容に則っている必要があります。ただし、このガイドラインは比較的緩いもので、実際にはLINEのビデオ通話機能を利用している医師も少なくありません。

専用のツールを導入するにはそれなりのコストが発生します。LINEであればスマホを持っている人であればだれでもすぐに利用できます。

ただし、診療に必要な「データ」などを送信したりする場合は、サーバーにデータが一時的に保存されることになるため、セキュリティが担保されたシステムを採用した方がよさそうです。

 

遠隔服薬指導においても同様か、または少々厳しい要件が課されることが想像できます。なぜ、少々厳しいか?ですが、簡単に言うと日薬の嫌がらせでしょう。

個人~中小薬局の連合体である日薬は、遠隔服薬指導のハードルを上げることに躍起になるのは想像に難くありません。

しかし、もしハードルを上げることに成功したとすると、今度は会員薬局が遠隔服薬指導にチャレンジするためのハードルも上げることになるのです。

体格(資本力組織力)が小さい分、相対的な高さは更に高くなることでしょう。

 

日薬のかじ取りに注目していきたいものです。

 

 

 

「ここが出る!」登録販売者試験講座(東海北陸版) 始めました

毎年秋の実施される各県の登録販売者試験合格を目指す方を、目一杯応援するためのブログを開設してコンテンツを積み上げているところですが、新たな挑戦としてYoutubeで講座を開講しました。

 

以前、1,4,5章からしっかりポイントを押さえましょう、という記事を書きましたが、今回は「教えて」ニーズの高い第3章から始めてみました。

 

pharmalabo.hatenablog.com

 

これから夏、秋に向けてコンテンツを公開していくつもりです。

良かったら活用してください。

youtu.be

 

 

auからLINEモバイルに転向しました

薬局とは全然関係ないのですが、先日6年契約していたauからLINEモバイルに転向しました。

回線の変更にあたって、各社の料金プランを比較し損得を判断するために、Excelが有効でしたので、紹介しておきますね。

 

現在のプラン

元々ソフトバンク一筋(東海デジタルホンボーダフォンソフトバンク)で17年ほど利用していたのですが、会社の携帯がソフトバンクからdocomoに変わったタイミングで、自宅の光回線でスマートバリューが対象だったこともあり、2012年12月にガラケーからiPhone5に夫婦で変更しました。

そして2014年11月頃にiPhone6に機種変更して、端末代金を払い終えた後、ぴたっとプランが始まってからプラン変更して今に至ります。

 

現在は、次のような利用度でした。(端末は支払いが終了しています)

私:ほとんどが家と職場のWi-Fi環境で使用、通話はあまりなくほとんどが家族通話

ぴたっとプラン(~1GB)&スーパーカケホ

月額:3480円-500円(スマートバリュー)=2980円

 

妻:パート先まで自転車通勤の間音楽ストリーミング、パート先ではWi-Fi利用できない。PTAなどの連絡含め5分以上の通話を月に5~10回ほどする。

ぴたっとプラン(~3GB)&カケホ

月額:6480円-1000円(スマートバリュー)=5480円

 

 

夫婦でおおよそ、2980+5480=8,460円 が毎月の料金でした。

 

5分かけ放題とかけ放題、どちらがお得?

 

auでは、通話し放題が2プランあります。

5分かけ放題の「スーパーカケホ」と、時間制限なしのかけ放題の「カケホ」ですが、差額は1000円です。

スーパーカケホで5分超過した場合の通話料は、30秒20円となっていますので、

1000÷20×0.5分=25分

5分超過後の通話がトータル25分以上あるなら「カケホ」がお得となります。

10分の通話が5回あるならカケホにすべしです。

交換の動機(iPhoneと添い寝)

4年前に購入したiPhone6はストレージが16GBで、アプリや写真が思うように入れられなかったことに加え、バッテリーの挙動がおかしくなってきて、普段使いにも支障が出始めたため機種変更を検討し始めました。

バッテリーの挙動不審は1年位前に始まりました。寝る前にフル充電したはずなのに朝起きたら電源が落ちていて、充電しようとLightningケーブルを挿した瞬間に「90%」の表示になったり、ある日ついにLightningケーブルを挿してもなかなか電源が入らない状態となりました。

いろいろWebを検索してみて、「ケースから外して、裏面を手の平でこすり続けるといい」というのを信じて10分ほどで電源が入りほっとしました。

そしてある時、「寒さ」がバッテリーの挙動をおかしくしていることに気づきました。

夏場は何ともなかったのですが、18年の冬になってまた「ぬくもりを求める」スマホとなり、夜は枕元ではなく脇に抱えるように添い寝をしないと朝までバッテリーが持たない状態でした。

appleのバッテリー交換プログラムに申し込めば18年中は安くなることも知っていましたが、バッテリーの在庫不足などで時間がかかることもあり、機種変更を決意しました。

選択肢としてはauで機種変更するか、2年縛りの更新月の1月2月にMNPするか、と考えました。

 

iPhone6のSIMカードSIMフリーiPhoneには使えない

 

11月頃から検討していたのですが、バッテリーがいよいよダメになったら、どうせSIMフリーiPhoneにするなら早く買っちゃって、iPhone6のauのSIMを新iPhoneに入れちゃえば、とりあえずauiPhoneとして使えるんじゃないの??と思いました。

しかし、auiPhone6のSIMはVoLTEには正式に対応してないらしく、特殊な3G用のSIMになっているらしく、新iPhoneに使用するにはauにSIM交換を申し込まないといけないらしいことが分かりました。

なので、1月まで粘るしかない!と添い寝をすることにしました。

 

 

各社プラン比較

 

機種変更を決意したので、どんな選択肢があるのかを調べ、それぞれの長短所を把握しなければ次には進めません。

ということで、Excelで表を作成し、各社ごと月額料金、端末料金を縦に並べ、横には月数を並べて、2年、3年、4年経過の総支払額を関数を利用して求めます。

 

最近は月単位で割引が行われるので、面倒くさいですが、分かりやすさも大事ですので横軸の月数は1か月ごとにします。

 

端末代金

 

まずはiPhoneの買い替えについて、機種を決めないと価格シュミレーションもできないので、新iPhoneの機種を私:iPhone XR(64GB)、妻:iPhone8(64GB)に変更することとします。

 

まずapple storeSIMフリーiPhoneを購入する場合f:id:ashomopapa:20190203180329p:plain

auで機種変更で購入する場合

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iPhone8の価格差が大きいですね。

次はsoftbankMNP乗換購入する場合

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softbankでは他社iPhoneの下取りは通信料からの値引き(24分割)となりますが、ここでは4年間通しての料金として端末代金から割引として算出しました。

最後はdocomoMNP乗換の場合です

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docomoは24分割の設定です。何と圧倒的なお得度です!!


 ここまではdocomoの圧勝ですが、次は通信料金を検討します。

 

通信料金

私はデータ通信が1GB程度あれば良くて、妻はデータ3GB、5分以上の通話の回数が月10回はあるので、各社のプランで丁度よさそうなもので比較します。

まずは大手3社のプランを比較しましょう。

 ※現在固定回線はKDDI系の光回線のためauのみスマートバリューを計上します

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docomoは端末では圧倒的にお得でしたが、通信料では最も高くなります。

端末代金の支払合計(4年間使用として)で、docomoは他社よりXRで6~7万円、8で7~8万円もお得に購入できますが、通信料でauと比較すると2年間で約6万円、4年間で11万円も高いので端末と合わせると4年ではauの方が約4万円安くなります。

 

 auのぴたっとプランには、かけ放題のない「シンプル」プランもあります。

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 ぴたっとプラン「シンプル」は上図のようにスマホ応援割の対象外で、1GBではスマートバリューも対象外のため、スーパーカケホの方がお得です。

 

 

次に、3GB+かけ放題を比較しましょう。

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softbankは2GB以上の利用はウルトラギガモンスター50GBを推奨している通り、2GB以上ではギガモンスターと同価格となっています。

ここでは圧倒的にauに軍配が上がります。

 

格安SIMの通信料

 

それでは格安SIMの通信料を見ていきましょう。ここでは、「1GB+通話はあまりしない」にちょうどいいプランを選びます。

代表として、LINEモバイルBIGLOBEモバイル、UQモバイルの料金を見てみます。

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UQモバイルは通話料込のプランのみになっているので5分かけ放題を選択しています。

 データ1GB以内で済むならLINEモバイルがお得です。

格安SIM各社専用の電話アプリから発信すると、だいたい大手の半額(10円/30秒)で通話できるのに加えて、LINEモバイルではLINEの無料通話が使い放題となっています。

今どきスマホを持っていてLINEを利用していない人もあまりいないでしょうから、LINEで電話しちゃえばいいんです!!

 

他にも格安SIM各社のプランを比較してみましたが、この使用状況で比較するとLINEモバイルが一番お得という結果になりました。

 

みなさんも、いろいろ比べる際にはExcelで表を作成する分かりやすくなるので、トライしてみて下さい。

 

2019年10月の診療報酬改定はどうなるの?

昨年12月17日の大臣折衝で、今年の10月に予定されている消費増税に伴い、医療機関等で仕入に係る税額の増大を補填するために、同時期に診療報酬改定の実施が決定しました。

 

改定率は、

診療報酬本体 0.41%
  医科 0.48%
歯科 0.57%
調剤 0.12%
  薬価 医療材料
▲0.51% 0.03%
実勢価格対応 ▲0.93% ▲0.02%
消費税対応 0.42% 0.06%

となっています。

 

診療報酬本体の改定では、2014年の消費税5%⇒8%引上げの対応分が診療科別にした補填率にバラツキがあり、今回の改定では5%⇒10%への引き上げ対応として全体を見直すことになっているようです。

 

ただ、調剤においてはそのような見直しはなく、2014年改定であったように、調剤基本料や一包化加算などでの上乗せになると思っています。

 

注目の薬価ですが、通常の改定では4~5%程度の引き下げがあることを思えば、実勢価格対応で1%弱の引下げに留まっているので影響は小さいように思えます。

しかし、改定される品目は流通の多い一部の品目であったり、改定率もバラバラになることは容易に想像できます。

 

したがって、薬価改定に向けての在庫削減などはやはり品目ごとに上手にやっていく必要がありそうです。

 

詳しくはこちらの記事もご覧ください。

 

pharmalabo.hatenablog.com

 

 実勢価格対応分+消費増税対応分の合計の引き下げ率が、「1.82%より大きければ在庫を搾る、それ以外は在庫を抱える」が正解です

 

妊婦加算凍結 復活はあるか?

2018年終盤に、世間を賑わせた診療報酬の「妊婦加算」について皆さんはどう思われましたか?

厚労省は2018年末に2019年1月1日からの妊婦加算の算定停止の措置を通達しました。

 

本来の目的・意味

 

 いろいろワイドショーなんかでも取り上げられていますが、簡単に言うと「妊婦の診療にあたっては様々な配慮が必要になるが、その必要な配慮を実施して診療することは、妊婦の診療の機会を確保することにつながるため、妊婦加算を設定してその労力を評価する」ということです。

妊婦さんが風邪をひいて内科を受診したときに、妊婦であることを申告したら「ウチでは診れません」と診療を拒否されることが少なからずあることの裏返しです。

 

この「妊婦加算」、実は産婦人科医の多くが賛同しているようです。

妊婦が風邪をひいたり体調が悪くなる度に、「妊娠」とは直接関係ない疾患で受診されると、ただでさえ担い手の少ない産科の診療に支障を来すため、一般の診療科で診てもらえるように制度上の手当てをすることに賛成という立場の産科医が多いみたいです。

 

テレビではコメントはされませんが、この妊婦加算は産婦人科でも対象になります。

産科の患者はほぼ妊婦ですので、産科では妊婦1人1回あたり初診75点(750円)、再診38点(380円)の増収となるため、仮に1か月に初診40人(1日2人)、再診600人(1日30人)を診察したとすると、40 x 750 + 600 x 380 = 258千円 の増収となります。

産科医が反対する理由はどこにもなさそうです。

 

ターゲットが分かりやすかった

 診療報酬には様々な疾患を持った患者を対象にした、〇〇指導加算、〇〇管理加算などの加算が沢山あります。

今回の妊婦加算のほか、6歳未満の小児の診療に関する乳幼児加算(初診75点、再診38点)や、慢性疼痛疾患管理に関する外来管理加算、特定薬剤治療管理料、特定疾患療養管理料、皮膚科特定疾患指導管理料などなど。

 

これらの中で、妊婦加算と乳幼児加算はその対象がはっきりしているのですが、6歳未満の乳幼児加算については、多くの自治体で「子ども医療助成」として窓口負担が無料或いは一律500円などとなっており、加算の負担感がありません。

 

これに対し、妊婦加算の対象者はそのほとんどが3割負担の方です。近年は保険診療に係る明細書の発行義務化もあるので、その明細に「妊婦加算」とあれば、「え、妊婦だと負担が増えるの?」となるのは、容易に理解できますよね。

更に、妊婦加算をはじめ診療報酬の算定内容についてきちんと説明するような医療機関はほぼ皆無でしょう。(逆にそんなことをしていたら窓口渋滞が恐ろしい…)

 

べた取り

妊婦加算を算定を認められるのは全ての診療科とされていました。

眼科でも、耳鼻科でもなんでもどこでも算定ができるとされていました。これにあやかって、いわゆるコンタクトレンズ眼科でも、コンタクトレンズの処方のため目の検診を受けただけの人でも、妊婦加算を算定する眼科もあったのでしょう。

内科的な相談は全くしていないのに、内服薬が処方されたわけでもないのに…

耳鼻科でも鼻づまりで、鼻腔を診察して、吸引して、ネブライザー処置をしてもらっただけで処方もなかったのに妊婦加算を算定された…とか。

 

これを不満に思った人がSNSに投稿したのが騒ぎの始まりでしたね。

 

内科医でも、かぜ薬を一通り処方しておいて、「薬のことは薬局で薬剤師に相談して」とだけ言われたとか、「医師からは何もコメントなかった」というケースなどもあります。

 

政治が動いた

 このSNSにいち早く反応したのが、与党自民党の小泉議員でした。

この分かりやすいべた取りの構図にNGを突き付けた格好です。もともと妊婦加算についても中医協という厚労相の諮問機関で議論された上で、閣議決定された事項ですので一議員が施行されて9ヶ月も経った頃に異議を唱えるなど、異例中の異例でしょう。

しかし、小泉議員です。マスコミも注目します。ということで世の中にどんどん拡散されることとなりました。

 

妊婦に対しての配慮を評価することで、妊婦の診療の機会を確保することが目的ならば、それは国民全体で負担すべきであって、妊婦一人ひとりに負担させるのは「妊婦税」だという論調が大きくなった結果、4月の統一地方選、夏の参院選を控えて自民党内でもめるのは得策ではないとして、厚労省が折れた形になりました。

 

なぜ妊婦加算だけ?

 診療報酬にはいろいろな加算や管理料が設定されています。ただしその対象は様々な算定要件があるため、一般の人には非常に分かりにくいものとなっています。

今回の一件は、対象が「妊婦」と分かりやすかったことに加え、少子化対策に逆行する妊婦税だとしてマスコミも取り上げやすかったことが、妊婦加算凍結につながったものと思われます。

その他の加算・管理料についても国民目線の見直しがあればもっと医療費を抑えられるかもしれませんね。

 

2020年4月の診療報酬改定で廃止されるのか、算定要件を明確化して復活するのか注目です。

私の予想では、算定要件として、「妊婦の診療にあたって医学的な配慮を行った場合に限り」などの算定要件になるのではないかと思っています。

また、産科はそもそも妊婦を対象とするので、「産科は除く」としてもいいと思うのですが、産科学会が黙っていないでしょうから、結局産科では毎回算定できることになるでしょう。

 

 

在庫不足時の対処方法と備蓄基準

みなさんの薬局では、調剤すべき医薬品の在庫が不足した場合にどのような対処をしていますか?

 

一般的には対処の段階としては、

  1. 患者さんへ在庫不足を伝える
  2. 不足のままひとまず薬剤交付する
  3. 不足薬の手配と交付
  4. 次回分備蓄の検討

のような順で対応していくことになると思います。

 

今回は、私の薬局の新人スタッフ向けのつもりでこの対処方法をまとめてみます。

 

 

患者さんへ在庫不足を伝える

 

患者さんとのトラブルを防ぐためにも重要ですね。

基本的には、処方せんを受付けて、在庫の有無を確認して、不足が判明すれば速やかに患者さんに伝える、ことが重要です。

 

よくあるのが、処方せんを受付スタッフが受取り、数人の患者さんの投薬が終わった後に、やっとその患者さんの調剤(ピッキング)を始めたら在庫不足が判明して、それから患者さんに伝えたら「だったら待たせる前に言ってくれよ」とお叱りを受けるパターンです。

 

なので、受付スタッフには「普段見かけない薬剤名がないか」や、「あまり見かけない医療機関からの処方せん」かどうかを常に気にしておくように、と周知・教育しておかないといけません。

 

そして、肝心の「伝え方」ですが、

「申し訳ございません。ただ今〇〇という薬の在庫が〇日分不足となります。〇時間程度で手配可能の見込みですが、ひとまず、ご用意できる分だけお渡しさせていただき、不足分は後程(後日)お届け又は郵送などさせていただいてもよろしいでしょうか。」

更に不足理由が明確な場合、「現在取扱いがなかったので」とか「今回薬が変更となり備蓄がなく」、「今回処方日数が増えていたので」「来局予定から〇日くらい早く来局されたため」などを言い訳じみないようにサラッと添えるのも、患者さんをイラっとさせないために大事です。

 

また、手配時間については、その不足薬剤が一般的にはメジャーな薬剤で、だいたい問屋も在庫してるだろうと思われる場合以外は、「問屋に在庫があるか確認しますので少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか。」と時間をもらって問屋の在庫を確認しましょう。

 

不足のままひとまず薬剤交付する

 

処方数量と、現時点での交付数量及び不足数量を確認し必ず何かしらメモ書きにしておきます。

交付の際に、お届け希望か、郵送でいいのか、患者さんが受取りに来てくれるか、などもメモに記しておきましょう。

 

不足薬がある場合、服薬指導が不足理由の説明やお届けについての確認などに費やされがちです。しっかりと必要な服薬指導をすることを心がけましょう。

 

不足薬の手配と交付

「不足のうち、〇錠交付するか」ですが、

  • その薬剤を他に使っている人がいるかどうか
  • 使っているなら次の来局予定と使用量見込みはどうか

を確認する必要があります。

他に使っている人がいて、その人が「今日あたり来局ありそう」かどうか、で備蓄している全部を交付するか、一部は残しておかないとヤバいのかを判断します。

(「今日あたり来局ありそう」でなければ、備蓄全量を交付しても構いません)

 

投薬後速やかに、あるいは投薬までの間に別のスタッフが問屋に発注をします。この時、遅くても何時までに必要なのかを明確に伝えることが重要です。問屋に変に遠慮してしまうと、患者さんに迷惑をかけることにつながりますので、遠慮せず正確に伝えましょう。(納品時に謝意を伝えることも忘れずに)

 

当日中にお届の必要がある場合は、薬局内でその必要性について情報共有しておくことと、◯時までに届かない場合は問屋に連絡するなど臨機応変な対応が必要です。

 

交付時の不足メモに従って、不足薬剤の数量・薬袋などを準備確認し、お届や郵送などの用意をします。

 

次回分備蓄の検討

 薬が不足してしまうと、一気に仕事が増えてしまいます。仕事が増えるということは、ミスの元にもなりかねません。だから欠品をしない在庫管理が重要になってきます。

 

備蓄の要素は3つあります。

  • どの薬剤を
  • どれくらいの期間
  • どれくらいの量

備蓄するかです。会社によってはその基準を定めているところもあるでしょう。しかし、大手の調剤薬局やドラッグストアでも、その基準を明確に定められている会社はあまりないのが現実です。

 

本部側は在庫を搾れというけど、具体的な指示は出さないという会社は多いでしょう。

実は具体的な指示を出さない、のではなく、出せない、あるいは出し方を知らない(分からない)のです。

具体的指示を出すためには、備蓄の基準を定める必要があります。

そしてその基準があれば、基準通りに備蓄していれば、新患その他で備蓄がない場合は不可抗力と割り切ることができます。現場ではこの「割り切り」が精神衛生上とても重要なことなのです。

 

前職のドラッグストアで在庫管理を任された時に、全店で備蓄基準を決めたことがあります。それは、

一度処方されたことのある薬剤は、同じ量を3か月間備蓄する

というものでした。

「同じ患者さんが、同じ処方内容で3か月以内に来局された場合には必ず備蓄がある」という品揃えを目指しました。

 

この基準があれば、3ヶ月経っても再来局がなかった、他の患者さんにも使わなかった、という薬剤は過剰在庫品として返品や他店舗への移動など、過剰在庫処理の対象とします。

 

繰り返しますが、欠品は

  • リスク管理上の危険因子
  • 患者満足度の悪化要因
  • 服薬指導の質低下
  • スタッフのモチベーション低下

など、ほとんど何も良いことはありません。

防げる欠品は日常の発注業務で防ぎましょう!!

 

突合点検のデータベース化と実際の査定内容

薬局に毎月社会保険支払基金から診療報酬振込明細の案内とともに、レセプト返戻や査定の通知に加えて、突合点検による査定通知が届いています。

※突合点検における査定とは、処方元医療機関から当該点数分を徴収(レセプト請求額から減額)されることです

 

これらの情報を漫然と眺めているだけだと、もったいない!ということで、私の薬局では約2年前から、情報を1件1件Excelに入力し、データベース化しています。

 

データベースと言ってもExcelを使えばいたって簡単ですよ。リスト形式で1件1行でデータを入力して、Excelの「テーブル」機能と「ピボットテーブル」機能を使えばデータベースの完成です。

 

 査定データの入力

 それでは、データの入力項目について紹介します。

以下の項目を1行目・タイトル行として入力します。

 年 月診療分
区分
患者氏名
生年月日
医療機関
調剤日
薬剤名
査定内容
査定点数
査定項目
査定理由
審査結果の理由等

「年月診療分」突合点検通知書の左上部に記載されている、いつ提出されたレセプト分に関する査定か?

「区分」再審査分かどうか。突合点検通知書のタイトルの右側に【再審査】とあれば、この列(データベース的にはフィールドという)に再審査と入力します。再審査とはレセプト提出時点では社保支払基金のチェックを通過したものの、数か月後に保険者(健康保険組合)によるチェックで引っかかったもの、ということです。

「患者氏名」~「調剤日」は通知書に記載されている通り入力します。

「薬剤名」査定の対象となった薬剤の名称を入力

「査定内容」〇錠△日分⇒〇錠▲日分、など

「査定点数」通知書に査定点数と査定金額が記載されているので、点数の方を入力します。(金額は患者ごと負担割合の違いがあるため)

「査定項目」薬剤料のみ、薬剤料+調剤料、薬剤料+調剤料+基本料+薬学管理料、などを入力

「査定理由」通知書に記載されている、【A:療養担当規則等に照らし、医学的に適当と認められないもの】、【B:療養担当規則等に照らし、医学的に過剰・重複と認められるもの】、【C:療養担当規則等に照らし、A・B以外の医学的理由により適当と認められないもの】【D:告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの】のどれかを入力します

「審査結果の理由等」査定理由の続きでコメントが記載されている場合があるので、その文言を入力します

 

ウインドウ枠の固定

 データを入力する際はタイトル行が固定されている方が、入力しやすいので、「ウインドウ枠の固定」をします。

「表示」タブ>「ウインドウ枠の固定」>「先頭行の固定」でタイトル行(1行目)が固定されます。

 

ピボットテーブルの挿入

データが入力出来たら、リスト内のどれかのセルを選択し、「挿入」タブ>「テーブル」を選択し、リスト範囲がすべて選択されているのを確認して「OK」をクリック、または「Enter」キーを押します。

更に、「挿入」タブ>「ピボットテーブル」を選択し、データの範囲の欄に「テーブル1」など上で設定したテーブルの名称を入力しておけば、以降データが増えてもExcelが自動でデータの追加を認識してくれます。

 

レポートフィルタ

 必要に応じてですが、隣の診療所のDrと情報共有することを想定しているので、当薬局では「医療機関」をレポートフィルタに配置して、当該医療機関を選択しています。

行フィールド

 「薬剤名」>「査定理由」>「審査結果の理由等」>「査定内容」の順に配置したりしますが、いろいろ項目を入れ替えてみて、一番役立ちそうな並びにするといいでしょう。

列フィールド

 今回は項目の配置はしていませんが、いろいろ試してもいいでしょう。

値フィールド

 「患者名」など数値以外の項目を配置すると、「個数/患者名」などと集計・表示されますので、「個数/患者名」と表示されたセルを選択して「件数」と上書きします。

次に、「査定点数」を配置します。今度は「合計/査定点数」として各行に入力した査定点数の合計が表示されます。

  

 

実際の査定内容

 それでは、私の薬局の査定内容を一部紹介しますね。

当薬局は消化器内科の門前薬局で、DrはPPIにはラベプラゾールを基本処方としています。最近はタケキャブの処方も増えていますが、それに伴い査定件数も増えつつあるという状況です。

以下は約2年間の隣接医療機関に関する集計になります。

 

タケキャブ:12件、約2万5千円が査定されています

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ラベプラゾール:2規格で21件、約3万1千円が査定されています

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詳細を知るには個々の患者のそれまでの処方内容などを把握した上でないと判断できないので、ここでは割愛しますが、全体として「PPIの処方には、きちんとした段階を踏んでいないものは査定します」という意思が伝わってきます。

 

A~Dの査定理由ですが、きっちりと判断されているというよりは、恐らく審査を担当した担当者の「感覚」によるものと考えた方がよさそうです。

 

アコファイド:6件、約2万6千円

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添付文書の「効能効果に関する使用上の注意」の項で、「上部消化管内視鏡検査等により,胃癌等の悪性疾患を含む器質的疾患を除外すること」とあります。医科レセプトで傷病名に「胃潰瘍」としている状態でアコファイドは処方してはいけませんよ、ということでしょう。

薬剤料のみならず、調剤料も査定されるので大きいですね。

 

超簡単!! グループ店舗の在庫状況を把握する方法

過剰在庫(不動在庫、余剰在庫)はまずは返品するのが基本ですが、包装変更品や、冷所保管品、うっかり開封してしまったものなど、返品ができず困りますよね。

 

それら過剰在庫をグループ内の薬局で使用している店舗に商品移動して使ってもらえば無駄がなくなり、在庫も減るのでとても合理的です。

 

では、皆さんの薬局では、他店舗に過剰品目をもらってもらうのにどのような作業をしていますか?

グループで採用している、いわゆる「本部システム」「在庫管理システム」によってその機能は様々ですが、多くのシステムでは、【他店舗照会】みたいな画面で薬品名を入力して、他店の在庫状況(現在の在庫数、最終処方出庫日、最終入庫日)などが一覧表示されて、その画面を見て当該過剰品目の移動先の目星をつけて、引き取りを依頼する。という流れが多いのではないでしょうか。

 

ただ、この照会方法では1)薬品名数文字を入力して「検索」して、2)検索文字に該当する医薬品候補が表示されて、3)その中から当該医薬品を選択確定して、やっと4)在庫状況が表示される、という画面遷移のシステムが多いのではないでしょうか。

これを1品目ずつやっていると、あほらしいほどの時間が必要です。

「あほらしい」と思える人は優秀です。もっと楽な方法を探すことにつながるからです。当ブログのようなサイトに辿り着く大事な「動機」です。

 

では、その面倒くさい作業をどのように楽にするかを紹介していきましょう。

 

過剰品をもらってもらうためには、その品目を

  1. 採用している
  2. 定期的に処方出庫している

ことを確認できれば頼みやすいし、当てが外れてやり直し、というのを避けられます。

 

当薬局で採用している在庫管理システムは、医薬品卸のアルフレッサから提供されている「JustockEX Ⅲ」というWebサービスです。(ちょっと前ならASPとかSaaSとか言われていたサービスです)

特長としては、グループ薬局の在庫状況などを照会できることです。

残念なのは、サービスにアクセスできる端末を特定の1台のみに限定されていることですね。

 

今回はJustockEXから出力できる帳票(データ)で、他店の薬品の使用状況を確認するためのデータ集計方法を紹介します。タイトルにもありますが、超簡単です。

また、その他の在庫管理システムや本部システムでも同じような内容の帳票データが出力できるはずですので、基本的には同じような考え方で大丈夫です。

 

ポイントは、薬品ごとの①月間の処方量、②月末の在庫数がデータに含まれていればOKです。

 

各店データを帳票出力する

 

JustockEXから帳票出力>「採用薬在庫一覧」の画面で、グループ薬局の名称と出力対象年月を変更しながら各店舗12~15か月分くらいを出力していきましょう。

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1:①の薬局選択欄でグループ薬局を順に選択

2:②の出力対象月で年、月を選択

3:医薬品区分欄は空白のまま

4:医薬品状態欄は「全て」

5:出力対象欄は「全て」

6:YJ/JAN表示選択欄はどちらでもいいですが今回は「YJ」で例示しました

7:左下の「明細表示」ボタンを押す

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8:次にポップアップされる画面で左下の「データ出力」を押し、任意のフォルダに名前を付けて保存します

 

店舗、対象年月を変更しながら「明細表示」>「データ出力」を選択し、PCの任意の場所にデータを保存します。ファイル名は分かりやすく「〇〇店yyyymm」みたいな感じで構いません。

 

例えば12か月4店舗分なら48回作業を繰り返します。

最初は面倒くさいですが、次からは4店舗1か月分ずつなので大した作業にはなりません。ということで初回頑張って作業しましょう。

 

データを集計する

PCに保存した48ヶのファイルを順に開き、1つの集計用のExcelファイルに、下に下にと転記(コピー&ペースト)していきます。

 

この時に、ちょっとしたExcelテクニックがあります。

 

移したい元データのファイルを開いたときにセルは一番左上の「A1」セルが選択されています。1行目はタイトル行となっていますので、データだけをコピーしたい場合は、「Enter」キーを1回押すか、「↓」キーを押して「A2」セルを選択して、

「Ctrl」+「Shift」+「↓」で最下行まで選択、さらに「Ctrl」+「Shift」+「→」で最右行を選択します。

※決してマウスを使ってA2セルから右下のセルまでドラッグしようとしてはいけません!!

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データ行がすべて選択できたら「Ctrl」+「C」でコピーします。

※マウス右クリック>コピーを選択、でも構いませんが、何度も同じ行を繰り返すのでキーボード操作に慣れた方が絶対早くなります

 

基になるデータには「年月」を示す項目列がないので、集計用のファイルに2列を追加してA列に「年」、B列に「月」を入力するようにしておきます。

集計用ファイルを選択し、C列の最下行にデータを転記(ペースト)し、A列、B列には当該「年」「月」を全ての行に入力します。これがとても重要です。

 

コピーを終えたファイルを閉じて、次のファイルを開き同じ作業を繰り返していきます。

 

1店舗平均1500品目だとすると、

1500品目 x 4店舗 x 12か月 = 7万2千行 のExcelファイルとなります。

Excel2003までは1シートで扱える行数は約5万6千行まででしたが、Excel2007以降は一気に約100万行を扱えるようになりましたので、全然余裕です。

 

こうして48のファイルを全て一つの集計用Excelシートに貼り付けたら、ひとまず適当な名前を付けて保存しておきましょう。

 

不要データを削除

 このデータの中には在庫も0、処方も0、というデータがあります。この不要なデータを削除すればデータ行数は3~5割くらい減ることもあります。

データ量が少なければ、オートフィルタをかけて、「在庫数」列のフィルタを「0」、「処方量」列のフィルタを「0」に絞り込んで、タイトル行以外をすべて選択した状態で「削除」すればOKです。(データ量が多いと、Excelに負荷がかかり時間が必要になりますが、ひたすら待てば処理が終わるでしょう)

データが多い場合の処理を短時間で終わらせるためには、「在庫数」列と「処方量」列の並べ替えをしてから、上記作業をする方法や、作業列を追加して数式を入力して「在庫数」「処方量」ともに0の行を判定させて、並べ替えをしたうえでフィルタで絞込をして削除する方法など、いろいろあります。

 

今回は不要データ削除については紹介を割愛します。

 

 

ピボットテーブルで活用する

データ上のどこかのセルを一つ選択した状態で、「挿入」タブからテーブルにしておきます。

f:id:ashomopapa:20181121213326p:plain 「先頭行をタイトル行とする」のチェックはONにします

 

さらにテーブル上のセルを一つ選択して、「挿入」タブからピボットテーブルを挿入します。

f:id:ashomopapa:20181121214248p:plain  f:id:ashomopapa:20181121214330p:plain

この時設定の画面で「テーブル/範囲」のところに「テーブル1」など上で作ったテーブルの名前になっていることを確認してください。これで次月以降データを追加した際にも自動で基データとして認識されます。

 

新しいシートが挿入され、ピボットテーブルが設置されます。

シートの右側に表示されるピボットテーブルのフィールドを次のように操作します。

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上の項目一覧からドラッグ&ドロップで項目を配置していきます。

「列」フィールド:年、月の順で配置

「行」フィールド:医薬品名、単位名(剤形単位)、包装倍率、調剤薬局名の順で配置

「値」フィールド:処方量、在庫数の順で配置(合計/ となっていることを確認)

次に「Σ値」という項目が列フィールドに配置されていたら、行フィールドの一番下に配置しましょう。

※データが多いと値フィールドに項目を配置してからしばらく処理に時間を要する場合がありますが、じっと待ちましょう。

 

自店舗にマーキングする

一覧を見やすくするために、自店舗のデータにマーキングをしておきます。

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自店舗名が表示されている行の先頭辺りをマウスでポイントして、マウスポインタが「→」に変わる場所でクリックします。すると自店舗のデータについて全て選択されるので、「ホーム」タブの「フォント」から適当な色で塗りつぶしを選択します。

 

店舗の表示順を変更しておくとさらに見やすくなりますね。

全店で取り扱いのある品目までスクロールして、店舗名を選択し、セルの枠をポイントするとポインタが十字矢印に変わったらドラッグ&ドロップして店舗名の順を変えていきます。

 

 

在庫数の表示を色文字にする

次に見やすさを確保するために、「処方量」の行と「在庫数」の行を区別するための色付けをします。

先ほどと同様に、在庫数が表示されている行の先頭辺りをポイントして、ポインタが「→」に変わったところでクリックします。

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全ての「在庫数」の行が選択されているのを確認して、「ホーム」タブの「フォント」から文字の色を区別しやすい色に変えます。

 

全店在庫状況の閲覧方法

 

ここまででようやく在庫状況把握の準備が整いました。

それでは、閲覧方法です。

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1:ピボットテーブルの左側にある「行ラベル」のフィルタボタンをクリック

2:「フィールドの選択」欄で「医薬品名称」を選択

3:検索窓に照会したい医薬品の名称(部分一致)を入力

4:「OK」をクリックまたは「Enter」キーを押す

 

これだけで、各店舗の当該医薬品の月別処方量と在庫数の推移が一目瞭然になりました。

 

例)「リクシアナ」で検索

f:id:ashomopapa:20181121235812p:plain 検索結果は次のようになります。

f:id:ashomopapa:20181121235854p:plain

ご覧のように「リクシアナ」と入力するだけで「リクシアナ」という文字が含まれる医薬品全てがいっぺんに表示されます。

処方量と在庫数の推移についても、手に取るように把握できます!

これなら、どの店舗に「もらって依頼」をすれば引き受けてくれそうかはばっちり分かります。

 

さらに、医療材料や自費医薬品(薬価基準未収載)についても、各店で独自マスタとして登録された品名で検索ができます。

※現状JustockEXでは、自費医薬品や医療材料の他店状況は簡単には照会できません

 

 

 

この後は、月が変わった時に、前月分の在庫一覧データを全店分抽出し、集計ファイルに転記するだけでデータが追加されていきます。

(ピボットテーブルに基データが増えたことを読み込みさせる必要がある場合は、「ピボットテーブルツール」リボン>「分析」タブ>「データ」項にある「更新」ボタンを押してください)

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在庫データの応用

 

Excelはとっても優秀なので、これだけのデータ活用ではもったいないところです。

データがこれだけあれば、加工次第でいろいろできます。

  • 各店過剰在庫状況・過剰在庫金額の把握
  • 各店過剰在庫の品目特定と移動先の指定
  • 一般名コード別の使用量・在庫数の状況把握
  • 向覚麻毒などの規制品目の把握(内部統制に利用)
  • 帳合ごとの医薬品の動向把握
  • 店舗数が多い場合、「エリア」列を追加することもできる

などでしょうか。VBA(マクロ)を扱えて、やりたいことがはっきり決まればプログラムを書いてボタンなどを配置し画面レイアウトを構成していけば、「在庫照会アプリ」のようにすることもできますよ。その話はまたいつか…

 

 

 

 

 

 

2019年10月の消費増税と薬価改定で9月の在庫は絞るべきか?

 

前回は消費増税と薬価改定について述べました。

¥pharmalabo.hatenablog.com

 

 

今回は薬局の在庫について考えてみましょう。

 

通常の4月1日実施の薬価引下げ改定なら、改定前になるべく在庫を使い切るようにすべきです。

 

また、薬価改定なしで消費増税だけを考えた場合は、一般消費者と同様増税前にまとめ買いが必要です。

 

それでは、薬価改定(引下げ)と消費増税が同時ならどうなるでしょう。

 

薬価=X、9月末の在庫数=Y、9月までの仕入れ率(原価率)=Ra、10月以降の仕入れ率(原価率)=Rb、薬価改定率=Aとします。

増税前の仕入れ価格:X × Y x Ra x 1.08

9月末の在庫を10月以降に調剤した場合の薬価差益:

 X x Y x A - X × Y x Ra x 1.08 …①

10月以降に数量Yを仕入れて調剤した場合の薬価差益:

 X xY x  A - X x A × Y x Rb x 1.10 …②

 と表されます。

 

式① ≦ 式② となるように整理すると、

  f:id:ashomopapa:20181104150104p:plain

 薬価引き下げ率でまとめると、

  f:id:ashomopapa:20181104150605p:plain

この式から、増税前後で仕入率(Ra,Rb)が同じなら改定率Aは、

  A ≦ 1.08÷1.1 = 0.9818

つまり、仕入率が変わらない場合、改定率が98.18%以下=1.82%以上の薬価引下げがあれば、増税後に仕入れる式②の方が薬価差益が大きい、ということが分かります。 

 

通常、仕入れ率は改定後に契約交渉が始まるので9月の段階では分かりません。

なので、増税前後で仕入率が変わらない、と仮定して行動するのが賢明でしょう。

 

結論:2019年9月末の薬価引下げが1.82%以上の薬品は、9月に在庫を絞るべき(逆に1.82%未満または薬価引上げの場合は9月に買い溜めすべき)

 

単品ごと正確に判定するには、薬価改定率A と改定前仕入率Ra 、改定後仕入率Rb を上式に代入し、式が成り立てば9月は在庫を控える、式が成り立たなければ9月に買い溜めするということになります。

 

 

今までは、ほとんどの医療機関、薬局で「加重平均」などと呼ばれる契約によって、個々の品目の価格(仕入れ値)は一応あるけれど、きちんと計算するのも面倒だから、最終的に仕入れ総薬価に対して仕入率を乗じて卸への支払額を決められるように、適宜値下げ伝票などを起伝して対処しましょう。となっていました。

 

しかし、2018年の診療報酬改定から「単品単価契約」について制度に組み込まれました。つまりこれからは、単品の価格交渉に基づく仕入れになってくるでしょう。

つまり、今までのようなざっくりとした仕入れ交渉しかできないと、知らない間に大損することになる可能性があります。(これが本来の価格交渉なんですよね~)

 

そして、交渉を有利に進めるには、データの分析が必須です。もちろんそのデータ分析もExcel テクニックがあれば余裕です。

 

まだ10か月先の話ですが、心の準備をしていた方がいいでしょう。

 

2019年10月の消費増税と薬価改定

随分久しぶりに記事を書いてます(;^_^A

 

第4次安倍内閣が発足して、10月の閣議で2019年10月の消費増税に向けての準備宣言がなされました。

 

これを受けてか中医協での議論に拍車がかかっているようです。

 

ずばり、消費増税に伴う「薬価改定」と「診療報酬改定」です。

 

消費税が導入された1989年4月(3%)、初の税率引き上げとなった1997年4月(3%→5%)、2段階増税の第1弾2014年4月(5%→8%)に続き、4度目の増税となりますが、その時期が10月というのがいろいろと議論を呼んでいますね。

 

なぜ、消費税が上がると薬価改定が必要なのか???

 

なかなかぴんと来ないですよね。。。

 

それでは一緒に考えてみましょう。

 

私たち薬局を含めて保険医療に携わる業界は仕入れに対しては消費税を支払うものの、最終消費者である患者さんからは消費税を頂かないことになっています。

 

仮に薬価1,000円のものを1,000円で仕入れた場合、現在なら消費税が8%乗っかるので卸への支払いは1,080円となります。

これでは、いわゆる「損税」となってしまいます。

 

そこで、

 薬価=「実勢価格」x 1.08(消費税8%) +調整幅

として薬価を算定するというルールがあります。

(詳しくは日本医薬品卸売業連合会のサイト http://www.jpwa.or.jp/ が参考になります)

また普段は聞きなれない「薬価本体価格」という言葉もあります。

 薬価 ÷ 1.08(消費税8%) = 薬価本体価格

として、卸はこの「薬価本体価格」に対していくらで納入するかを医療機関・薬局と交渉するということになっています。

 

そして、今までは2年に1回(薬価改定の前年9月)に、「薬価調査」という実勢価格の調査を実施して、翌年4月の薬価改定に反映される仕組みです。

 

今後この2年に1回の改定作業が毎年実施される、という流れになるのです。

 

 

どんな薬価改定になるの?

 

消費税8%で薬価1,000円の薬剤の「薬価本体価格」は、

 1,000 ÷ 1.08 = 926円 です。

単純に、消費増税に対応するだけなら消費税分を上乗せするだけなので、

 926円 x 1.10 = 1018.5円 が新薬価となります。

 

支払い側が黙っていない

 

消費増税に伴って、1,000円のものが1018.5円に値上がりすることになります。

消費税とは、最終消費者が負担するもので、中間事業者は負担しないでいいのですが、保険診療では最終消費者=支払い者とは言い切れないところが難しいのです。

3割の窓口負担をするのは患者(医療の消費者)ですが、残り7割の支払いは保険者となります。支払いに充てるお金は、国民がそれぞれ給料から天引きされたりする「保険料」と行政からの「補助金」で賄われます。

 

さらに、「保険料」は私たち一人ひとりが払う分、会社が払う分があり、「補助金」とはすなわち税金であるということで、増税の負担が消費者(=患者)だけではなく、国全体で負担することになるという構図になってしまうのです。

 

こうなると支払い側が黙っていない、ということになります。

つまり、

薬価本体価格 x 1.10 ではなく、実勢価格に基づく引下げ x 1.10 という薬価算定を行う、というのが来年の薬価改定なんです。

 

今回の議論において、支払い側の中には、

2018年9月 薬価(実勢価格)調査・・・①

2019年4月 ①の実勢価格に応じた薬価引下げ改定実施・・・②

2019年9月 ②の改定後の実勢価格を調査・・・③

2019年10月 ②の薬価に対し、消費増税分だけ薬価引き上げ改定・・・④

2020年4月 ③を踏まえて薬価引下げの通常改定実施

を主張する中医協議員もいるようです。

 

さすがにこれでは、現場はたまったものじゃありません。

 

支払い側にも良識がある人も多く、「さすがに1年に2回の改定はよくない、19年10月の1回だけ実施する」ということで概ね決まっていくものと思われます。

但し、「薬価調査を通年通り9月に実施しても、10月改定後の実勢価格が分からない→20年4月の薬価改定で適切に薬価を引き下げることが困難になるのではないか?それでは困る。」ということで、落としどころを探っている、という状況のようです。

 

 

薬局はどうしたらいい?

 

19年10月の薬価改定では、単純に消費増税分の引き上げ(1.8%程度)となる薬剤から、実勢価格による引下げがめいっぱいされる薬剤まで、改定率のふり幅が例年よりも大きいかもしれません。

 

通常4月の改定では、新薬価は前月である3月5日前後に公示されますので、19年10月(とすると)薬価改定では、9月の初旬に公示されると思われます。

 

単純に言うと、薬価が上がるものは9月に買いだめ、下がるものは買い控えをするべし、となりますが、在庫管理コストなども含めて考えると、低薬価のもの、高薬価のもの、使用量の多少などで対応を変えるべきでしょう。

 

まずは、19年10月の薬価改定の意味と内容を把握しておきましょう。